土研ニュース

タイ運輸通信省道路局と研究協力協定を締結しました


協定締結の様子
(左:坂本理事長、右:Pichit道路局長代理)

研究協力するセメント改良土のイメージ図

 土木研究所は、タイ運輸通信省道路局道路研究開発部と平成17年3月4日に交わした研究協力協定に引き続き、今後5年間、道路建設のための土砂を扱う土木工事についてお互いに協力して研究を行うことを基本とした国際研究協力協定を平成22年2月10日に交わしました。
 タイ運輸通信省道路局道路研究開発部とは、旧建設省土木研究所時代の共同研究(平成10〜14年)時より長い期間に渡り、お互いに情報交換と共同研究を実施してきた経緯があります。前回の協定の下では、タイの軟弱な地盤上に水害対策のための堤防を築くために、気泡を混ぜて軽い土を創る気泡混合土工法の試験施工や、短期・低コストで軟弱な地盤を補強できるALiCC工法のタイ語版マニュアル作成に協力するなどの実績があります。
 今回の協定では、前回の気泡混合土工法よりも低コストな技術導入を目指し、施工技術チームの研究テーマ(軟弱な地盤の改良に関する研究や、柔い土にセメントを混ぜて改良したセメント改良土に関する研究、盛土の締固めに関する研究)と連携して、セメント改良土や盛土の挙動等、土砂を扱う土木工事全般に関する研究協力を実施する予定です。これにより、日タイ両国の研究交流がますます盛んになり、双方の施工技術向上が図れることを期待しています。



(問い合わせ先:施工技術チーム)

平成22年度独立行政法人土木研究所の業務運営に関する計画を公表しました


年度計画策定のイメージ図

ICHARMによる国際貢献の例
アジア開発銀行(ADB)との協定締結

 独立行政法人土木研究所(以下、「土木研究所」という)の業務運営は、国土交通省により、5年毎に達成すべき計画を定められています(以下、「中期計画」という)。これは、独立行政法人通則法に基づいており、独立行政法人はこの通則法に基づき、3〜5年の期間において定められた業務運営に関する計画を達成する必要があります。そのため、土木研究所では、この中期計画を達成するため、年度末に次年度の業務運営に関する計画(以下、「年度計画」という。)を毎年定めています。さらに、この年度計画を主務大臣(国土交通大臣、農林水産大臣)に届け出るとともに、公表しています。この度、土木研究所の平成22年度の年度計画が主務大臣より承認を受けましたのでホームページに掲載いたしました。
 主な公表内容は、質の高い研究開発業務の遂行、成果の社会への還元(国民に対して提供するサービスその他の業務の質の向上に関する目標を達成するためとるべき措置)、業務運営の効率化に関する目標を達成するためとるべき措置、等です。
 平成22年度は、土木研究所の中期目標期間(H18〜22)の最終年度にあたることから、これまでの取組みをさらに推進するとともに、中期計画達成を念頭に置いて良質な社会資本の効率的な整備及び北海道の開発の推進に資するよう活動を実施予定です。内容については、例えばICHARMによる水関連災害の防止・軽減を目指す国際貢献も年度計画に盛り込まれております。今回のWebマガジンで紹介した「インドネシアでのADBとの連携協定に伴うIFASトレーニングワークショップ」は、ADBと連携した活動の一環であり、年度計画の中では、「ADB等と連携しつつ、アジア・太平洋地域内の対象国流域において洪水災害管理推進のための取り組みを継続する」との記載があります。
 また、次期中期計画の作成を見据えた調査を始動する予定です。



(問い合わせ先:研究企画課)

   

インドネシアでADBとの連携協定に伴うIFASトレーニングワークショップを開催しました


ソロ川流域図

ソロ川中流部

トレーニングワークショップ開催状況

 水災害・リスクマネジメント国際センター(ICHARM)では、アジア開発銀行(ADB)と共同でアジアの水災害軽減に関する地域技術協力連携プロジェクト「地域技術支援7276:水災害管理における投資の支援」を実施しています。この中で水文チームでは、これまでに開発を行ってきた人工衛星によって観測された雨量情報を用いた総合洪水解析システム(IFAS)をインドネシア国ソロ川流域に導入するプロジェクトを実施しています。プロジェクトの具体的な内容としては、雨量データ等の収集、IFASを使ったソロ川流域における洪水予測システムの作成と現地への配備、河川事務所の技術者への研修等を予定しています。
 この研修活動の一環として3月2日から4日にかけて、現地においてトレーニングワークショップを開催しました。プロジェクト期間中に数回のワークショップを予定しており、今回は1回目ということで、インドネシアの参加者からソロ川の災害発生状況や河川管理・水文観測状況に関する講演や、ICHARMからは人工衛星観測雨量について観測方法やその特徴・精度に関する講義が行われました。また、参加者は実際に現地で観測された地上観測雨量と人工衛星観測雨量の比較図を作成すること等により、人工衛星観測雨量に関する理解を深めました。

 参加者の多くは、人工衛星観測雨量やそれを洪水予測に利用するという方法をはじめて耳にするような状況でしたが、実際にデータを使った図化作業等により理解が深まったものと期待されます。今後は、プロジェクト期間内(H21〜23)に洪水予測システムの導入とあわせて、現地技術者がそれを使った洪水予測を自ら実施できるように、実際にIFASの操作方法に関するワークショップを開催する予定です。



(問い合わせ先:ICHARM 水文チーム)

      

寒地土木研究所 第6回技術者交流フォーラムin帯広を開催しました


基調講演を行う土谷富士夫教授

プログラム

 寒地土木研究所は、現場密着型の技術開発、技術普及および地域における技術の向上等のため、道央、道南、道北、道東に支所を設置しています。各支所では研究開発の現地調査・試験の拡充とともに、地域におけるニーズの把握や研究成果の普及、技術指導を実施しています。
 「技術者交流フォーラム」は、これらの活動の一環として、地域において求められる技術開発に関する情報交換、産学官の技術者交流および連携等を図る目的で、開催しています。
 今回は、「十勝における地域資源活用の現状と展望」をテーマに、平成22年1月26日(火)ホテル日航ノースランド帯広で開催し、産学官から約200名の参加を得ました。
 帯広畜産大学地域環境学研究部門長 土谷富士夫教授から「寒地技術−冬の寒さ利用の展望」と題して基調講演を行っていただきました。教授は、「寒冷地の冬の寒さは降雪や凍結を引き起こし、除雪や融雪、道路の凍上害など人々の社会活動に影響を与えてきた。しかし、近年のエネルギー問題・環境問題を背景に雪氷が見直され、地域密着型のエネルギーとして注目を浴びている」と述べられました。ヒートパイプと呼ばれる熱を伝える素子と冬期の寒気を利用して、貯蔵庫周囲に人工的に凍土をつくり、庫内を低温に維持する仕組みを紹介されました。「自然エネルギーを利用したこの新しい貯蔵システムは、農産物の貯蔵に適した低温と高湿の環境を実現し、環境性、経済性、安全性に優れ、地域ブランドの創出にも繋がる」とし寒さ利用の展望を示しました。一般講演として4名からそれぞれ講演いただき、パネルディスカッションへと進みました。
 パネルディスカッションは、土谷富士夫教授をコーディネーターに「十勝地方の地域資源利用を考える」というテーマで進められました。パネルディスカッションでは会場からの質問を交え、各講演者が活発に議論を交わし、最後にコーディネーターである土谷教授が「水が蒸発するエネルギーを利用することで産業革命が起きました。水が氷になるときのエネルギーも利用できることを若い世代に教えていきましょう」とまとめ、フォーラムを終了しました。
 寒地土木研究所各支所では今後とも、各地域における産学官交流の場として技術者交流フォーラムを行っていく予定です。(講演概要はこちら



(問い合わせ先:寒地土木研究所 道東支所)

   

第51回科学技術週間 〜施設の一般公開を実施しました〜


試験走路での高速走行体験

非破壊・微破壊試験の説明
(後ろのコンクリートの穴はコアを抜き取った跡)

橋梁撤去部材を説明する研究者と
メモを取る高校生

舗装走行実験場の見学
(涼しい舗装を実際に触れる)

 「科学技術週間」は、科学技術について広く一般の方々に理解と関心を深めて、日本の科学技術の振興を図ることを目的として昭和35年2月に制定されました。全国の各機関では、主にこの期間に各種科学技術に関するイベントなどを実施しております。今年の科学技術週間は、4月12日〜18日に、『発見したいな まだ誰も見つけてないこと』をテーマに、全国的な規模で実施され、つくば市では、44の研究機関等で一般公開等が実施されました。
 土木研究所は、国土技術政策総合研究所と共同で4月16日(金)に研究施設の一般公開を実施し、最高気温8℃という寒い中、257名の方々が見学に訪れました。今年は、試験走路、構造物実験施設、橋梁撤去部材の展示及び舗装走行実験場の合計4施設を一般公開しました。
 試験走路では、実物大のトンネル実験施設、舗装の実験に使う荷重車等の説明をした後、高速走行体験を行いました。
 次に、構造物実験施設において、コンクリート構造物の強度や鉄筋の位置を壊さずに検査できる試験方法等(非破壊・微破壊試験)をお医者さんの診察や人間ドックに例えて説明し、簡単な実演を行いました。
 また、橋梁の撤去部材の展示場では、日本各地から老朽化して撤去された橋梁の一部分を切り取って運んできて展示しています。これから日本が迎える社会資本の老朽化対策の必要性や火災によって損傷した橋の部材について説明しました。
 最後の舗装走行実験場では、舗装の耐久性の検査に使う無人荷重車を展示しました。これは、GPS衛星を使って運転手がいなくても自動で動くトラックであり、この他、多孔質弾性舗装やヒートアイランド対策の「涼しい舗装」を紹介しました。
 さらに今年は、茨城県の茗渓学園から高校1年生の2クラスが見学に訪れ、熱心に研究者に質問したりメモを取っていました。将来の日本を担う青少年に科学への興味を持つ手伝いが出来たことは、日本の科学技術の振興を図る科学技術週間の本来の目的を果たすことにつながったと思います。



(問い合わせ先:総務課)