研究成果の紹介

排水ポンプ設置支援装置の開発


自走式排水ポンプの利用イメージ図

排水ポンプ車による排水作業
(左:排水ポンプ、右:照明車)

試作機性能試験状況(走行試験)


試作機排水試験状況(排水試験)

 近年、北海道では冬期間にも降雨があり、積雪を融かしてしまうため、雨量以上の洪水被害が発生する可能性があります。
 特に低温積雪条件下では、凍結等により排水機場などの施設が使用出来ない場合があり、排水ポンプ車での対応に頼らざるを得ませんが、冬期間は除雪の必要性や現場状況の悪化等、作業を遅延する要因が増えてしまいます。
 多様化する災害現場の状況を踏まえて、既存の排水ポンプを利用し、積雪や悪路などの悪条件下においても確実に排水ポンプの設置を支援する装置を開発することで、柔軟な現場対応と共に、安全且つ効率的な設置・回収を図ることを目的としました。
 排水ポンプ車の過去の災害出動実績、作業員への聞き取り調査等を行った結果、冬期間、除雪をしていない現場などの悪条件下でも排水ポンプを排水箇所まで搬送し、設置する有効な手段として、自走式の設置支援装置を選定しました。
 そして、設置支援装置に必要な基本性能、仕様を検討して試作機を製作しました。
 また、防災訓練施設において冬期、夏期の走行試験、排水試験等を実施し、試作機の性能についての検証、改良項目の調査などを行いました。
 走行試験は、平地、登坂を基本とし、アスファルト、泥、砂利、草地、雪面などの各種路面状況にて実施。排水試験は、排水時に発生するエアの吸い込みの有無、排水性能の低下の有無等を調査しました。
 冬期、夏期に実施した性能試験の結果では、走行試験、排水試験とも大きな問題はなく概ね良好な結果でした。
 登坂走行時に多少の不安定さがありましたが重量バランス等の見直しにより、改善が可能であると判断しました。
 総合的な評価としては、機動性、作業性も良く十分な性能を有していると言えます。走行及び排水性能に関しては性能試験を通して実用に耐えうるものと判断したので、今後は防災訓練等の実際の現場で試験を行い、現場適合性についての検証を続けていく予定です。



(問い合わせ先:寒地土木研究所 寒地機械技術チーム)

建設工事の厄介者
 
〜泥炭性軟弱地盤の対策マニュアルをWebで公開〜


泥炭性軟弱地盤とは?

泥炭性軟弱地盤における道路の沈下

深層混合処理工法
(機械で改良材を混ぜる工事の例)

 北海道には、泥炭性軟弱地盤と呼ばれる非常に軟弱な地盤が広く存在します。泥炭は、枯死した植物が腐りきらないまま、徐々に堆積してできたもので、北海道のような寒冷地に特有な地盤です。泥炭性軟弱地盤は構造物の重みを支える強度が極端に低く、例えば道路や河川堤防を盛り土する場合、どのくらいの高さまで安全に造ることができるかが問題となります。またわずかの荷重で沈下しやすく、しかも長期間にわたって沈下がなかなか収束しないことが知られています。さらに周辺地盤の盛り上がりや沈下など周りの工事に影響が及びこともあり、土木技術者は、古くからこの地盤に悩まされ続けてきました。
 寒地土木研究所では、泥炭地盤上であっても安全な土木施設(道路・河川堤防など)を経済的に建造できる技術開発を目指して研究を進めています。その結果、長年の研究において得られた多くの経験と調査・研究成果をもとに、泥炭の特異性を考慮に入れた強度評価式および沈下予測式、各種対策工法の泥炭地盤への適用性、対策工法選定フローチャート等を「泥炭性軟弱地盤対策工マニュアル」として取りまとめました。
 次にマニュアルに掲載された対策工を一つ紹介します。例えば、深層混合処理工法とは、軟弱な地盤に石灰やセメントなどを地面に混ぜて、土を化学的に固くする工法であり、振動や騒音が比較的小さい利点があります。
 「泥炭性軟弱地盤対策工マニュアル」は平成14年3月に発刊されましたが(発刊当時は北海道開発土木研究所)、現在は絶版となっており、全国の技術者から入手を希望する声が寒地土木研究所に多く寄せられていたので、平成22年3月1日より、下記の通り寒地土木研究所のWebサイトからPDF版を無償でダウンロードできるシステムを整え、利用者の要望にお応えすることになりました。
*ダウンロードはこちら(http://jiban.ceri.go.jp/pm/)



(問い合わせ先:寒地土木研究所 寒地地盤チーム)