研究の紹介

鉄筋コンクリート床版の高機能防水システムの開発
〜道路橋の長寿命化に向けた研究〜




道路橋床版の損傷事例



凍害用ランダム走行試験装置



高機能防水工(複合防水)のイメージ


       

 近年、大型車交通量の多い路線における道路橋や旧基準で設計・建設された道路橋では、鉄筋コンクリート(RC)床版の劣化損傷が顕在化しており、アスファルト舗装にクラックが生じたり、床版が抜け落ちるといった事象が発生しています。これらの事象は、車両の走行安全性に関わることであるのみならず、跨線橋や跨道橋においては第三者被害を招く可能性があるなど、道路管理上の大きな問題になっています。
また、北海道のような積雪寒冷環境下における道路橋床版には、更に凍害や凍結防止剤等による塩害の影響が加わり、劣化損傷の進行が加速されることも確認されています。
このような事象に対し、その主要因の一つとして水の影響が認識されてきており、その影響を排除するため、新設のRC床版上には防水工が全面的に施工されています。
しかしながら、膨大な数の既設橋のRC床版には防水工が施されていない状況にあります。また、アスファルト舗装の打ち換え等に伴う床版防水工の再施工箇所や比較的新しく床版防水工が施工された箇所においても、不具合の生じている事例が確認されています。現在の防水工に関する規定には、積雪寒冷条件が十分に配慮されていないことなども踏まえると、RC床版の損傷事例がますます増加していくことが予想されます。今後、道路橋のRC床版の適切な維持管理を進めていくため、予防保全的な対策工、対策技術の確立が求められています。
そこで本研究では、積雪寒冷環境等の厳しい条件にも対応したRC床版の高機能防水システムの開発を目標としています。
具体的には、既設橋梁のRC床版及び防水工の劣化損傷状況、環境条件等に関する分析により、防水工に必要とされる機能について整理するとともに、付着性能や耐凍害性等の検証のための各種の要素実験や凍害用ランダム走行試験装置等を用いた構造体実験(アスファルト舗装、防水工、RC床版の三位一体)を実施し、複合防水工等の高機能床版防水工の性能評価手法と、防水工施工時におけるRC床版上面の処理方法や排水構造までを含めた高機能防水システムについて検討を進めています。


(問い合わせ先:寒地土木研究所 寒地構造チーム)