研究成果の紹介

強酸性土壌が露出した法面の緑化工法





北海道内の酸性硫酸塩土壌の出現地点位置図


 空気や水に触れて酸化すると硫酸を生成し、pH3.5以下の強い酸性となる土壌があります。硫酸の元となる硫化鉄や二硫化鉄(黄鉄鉱)などのイオウ化合物を多量に含んでいる土壌で、暗オリーブ色〜青灰色の特徴的な色をしています。このような土壌を酸性硫酸塩土壌と総称します。
 道路や河川の造成・改修工事などで、酸性硫酸塩土壌が露出した場合、法面(切取り又は盛土によってつくられた人工的傾斜面のこと)を保護する植生が定着しません。そのため、酸性硫酸塩土壌を普通の土壌で厚く覆い隠すなどの対策工事を施工してきていましたが、工事現場の状況によっては、そのような工事が難しい場合もあります。また、工事の費用も高額となります。そこで、酸性を中和するアルカリ性物質の炭酸カルシウム(通称:炭カル)を主体とした資材で酸性硫酸塩土壌の表面に約1.3cmの厚さで薄い膜を作り、植生基盤となる資材を吹き付ける工法(中和緑化工法)と酸性硫酸塩土壌の酸化を抑制して、植物の根を保護するために、水を遮る樹脂製のシートを使用した工法(遮水シート工法)を試験しました。
 中和緑化工法では工事直後から、植生が正常に繁茂し、工事後16年を経過しても安定した植生が維持保全されていました。遮水シート工法では植生は繁茂定着しませんでした。以上のことから、中和緑化工法は低コストで酸性硫酸塩土壌が露出した法面の緑化工法の一つとして利用できることが確認できました。
 北海道内で確認されている酸性硫酸塩土壌は、大昔に浅い湾で、現在は陸地化している所から多数発見されています。また、イオウ温泉に長い年月にわたって浸かっていた岩石や土が酸性硫酸塩土壌に変質している場合もあります。そのような場所で、大規模な掘削を行う土木工事や建設工事を行う場合や農地への客土用土の選定などには、充分に注意し、適正に対処する必要があるため、資源保全チームでは、酸性硫酸塩土壌が発見された場所の情報を整理保存しています。今後も、新たな場所から酸性硫酸塩土壌が発見されると考えられますので、発見場所情報の充実が必要です。
 酸性硫酸塩土壌であるか否かを判定するためには、色や臭いだけではなく、強制的に酸化させたpHの測定やイオウ化合物の含有量の分析が必要です。具体的な判定手法などの技術的助言が必要な場合は、寒地土木研究所の技術相談窓口も活用してください。


(問い合わせ先:寒地土木研究所 資源保全チーム)