研究の紹介

津波に強い橋を目指して


津波により上部構造が裏返しになり流出した橋



水路による津波実験全景
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津波実験拡大 ※高感度カメラで撮影
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 平成23年東北地方太平洋沖地震では、東北地方から関東地方にかけての太平洋沿岸部の広い範囲において大きな津波の影響を受けましたが、道路橋も津波により橋桁が流されるなどの被害が生じました。今回のような極めて大きな津波から橋桁が受ける力に対して、できる限り早期に橋梁の機能回復を図るという観点から、橋桁の設計をどう考えるかが重要な課題となっています。

 津波に対する橋桁の構造計画の考え方の例としては、防災という観点から、津波に関する地域の防災計画等を参考にしながら津波の高さに対して橋桁の下の空間を確保することを基本とします。これに加えて減災という観点から、津波の影響を受けにくいような構造的工夫を施すこと、仮に橋桁が流されたとしても復旧しやすいように橋脚の位置や構造形式に配慮をすること等の考え方も必要に応じて検討しておくことが重要になってくると考えられます。ここで、橋梁の構造を専門とするCAESARが果たすべき役割として、特に、津波の影響を受けにくくする橋桁の構造とはどのような構造とすればよいのか、既に造られている橋梁に対する減災対策としてはどのような方策があるのか等の喫緊の研究課題に取り組んでいるところです。

 今回の津波による被害を受けた橋梁に着目すると、流された橋梁がある一方、流されなかった橋梁もあります。さらに、流された橋梁の中には、橋桁が裏返しになった部分と裏返しにはならなかった部分が混在している橋梁もあります。このような被災状況の違いは、津波により橋桁に作用する力とそのメカニズムを解明し、対策を講じていく上で重要な着眼点になります。すなわち、橋桁が津波によって受ける影響は、津波自体の条件以外にも、橋桁の構造条件等によっても変わってくるものと考えられ、また、津波の影響に対する橋の抵抗力についても、橋桁を支える支承部周辺の構造条件だけでなく、橋桁の幅と桁の間隔、長さ等とも関係してくることも考えられます。

 橋桁が津波の影響を受ける時のメカニズムを踏まえ、今回の津波により流された橋梁と流されなかった橋梁の多数のデータから、その構造的特徴の違いを分析すること等を通じて、津波の影響を受けにくくするための合理的な橋梁の構造計画上の工夫の方法を見つけられないか、研究を進めていく予定です。

 CAESARでは、実験用水路に津波を生じさせ、道路橋をできるだけ正確に模した1/20スケールの模型に作用する力を検証しています。その結果と実際の被災状況との比較を通じながら、津波により橋桁に作用する力やそのメカニズムの検証を行っていきたいと考えています。




(問い合わせ先:CAESAR)

機能性SMA
〜多機能で、耐久性の高いアスファルト舗装の技術〜


図−1 機能性SMAの概念



写真−1 機能性SMAと標準的な舗装(密粒度)の比較



写真−2 凍結時の機能性SMA表面の状況


 道路の舗装は、走行する自動車の荷重を支え、平らで走りやすい路面を維持するために設けられる道路施設です。最近では、様々な機能を付加した舗装の開発が進んできています。そうした機能を付加した舗装の一つに排水性舗装があります。排水性舗装は、たくさんの空隙がある舗装で、雨水を舗装内部に素早く浸透させて水はねを防止する機能や、タイヤの走行音を小さくする低騒音機能を持っています。また、表面が粗いことから冬期間の路面のすべり防止の効果も期待できます。しかし、排水性舗装の空隙は強度の面では弱点となることから、積雪寒冷地では冬期間に使用されるタイヤチェーンなどのダメージに対してより強い舗装材料が求められています。

 一方、SMA(砕石マスチックアスファルト)舗装という、粗骨材と呼ばれる比較的大きな砕石が多く、そのかみ合わせ効果で耐久性を高めた舗装材料があります。寒地道路保全チームでは、排水性舗装の機能とSMA舗装の耐久性という互いの長所を合わせ持った機能性SMAという新しい舗装材料を民間との共同研究により開発しました(図−1)。

 機能性SMAは、上層は排水性舗装のように表面が粗く、下層はSMAのように密実で耐久性が高いという2つの性格を持つ舗装を一度の施工で構築できる舗装材料です。表面が粗いことから、写真−1のように標準的な舗装と比べて路面に水が溜まりにくく、雨天時の走行性に優れています。また、冬期間では、ブラックアイスバーン(氷が非常に薄く、路面が濡れているだけのように見える滑りやすい路面)のように路面が薄く凍った場合でも舗装の凸部が表面に残り、滑りにくいという効果もあります(写真−2)。

 寒地道路保全チームでは、こうした機能性SMAの特徴を活かして、従来、排水性舗装が使用されている高規格道路や騒音対策の必要な箇所、冬期のすべり対策の必要な道路や滑走路などへの適用を目指して、長期的な耐久性や機能の持続性、最適な配合などについて研究を続けています。




(問い合わせ先:寒地土木研究所 寒地道路保全チーム)