土研ニュース

創立90周年記念 土木研究所講演会を10月1日に開催します

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  デザインを考案した石山憲明さん


 土木研究所は、大正11年(1922年)9月30日に創立された内務省土木試験所を前身とし、本年をもって90周年を迎えることとなりました。

 90周年という節目の年にあたり、今回の講演会は、外部の専門家の方や学識経験者の方々をお招きし、教育機関との連携協定や民間企業との共同研究等の産学連携による成果、地震による地すべり等の災害への技術支援、海外での災害に対する関係者への情報提供や職員派遣等による国際貢献など、土木研究所のこれまでの活動を振り返るとともに、これからの土木研究所のあり方についてご意見を伺います。

 特別講演では、「東日本大震災の教訓と今後の地震・津波防災対策」と題し、濱田政則氏(早稲田大学理工学部 社会環境工学科 教授)をお招きし、ご講演をいただきます。

 なお、講演会終了後は、土木技術に関する意見交換のため、技術交流会を開催(有料)いたします。講演会と合わせてお申し込みください。

 皆様の多数のご参加をお待ちしております。


 ■日時:平成24年10月1日(月) 10時00分〜(受付開始 9時30分)


 ■場所:砂防会館(東京都千代田区平河町2-7-5)

    http://www.sabo.or.jp/map.htm


 ■申込み方法:

    下記、土木研究所ホームページの登録フォームよりお申し込みください。

    http://www.pwri.go.jp/jpn/news/2012/1001/kouen.html



 また、今回の講演会のポスターは、90周年を記念すべく、6月〜7月にかけてデザインの一般公募を行い、応募された作品の中から、厳正なる選考の結果、石山憲明さん(山形県在住)の作品に決定しました。

 多数のご応募ありがとうございました。


作品について

 90年の歴史とこれからの未来主題に道路からイメージした。

 デザイン形状は日本列島の形状を南から北を見たように構成し昨年の東日本大震災からの復興の意を込めて、あえて、東北地方をイメージした図形にもなっている。




(問い合わせ先:研究企画課)

「土研式水位観測ブイ(投下型)」が第14回国土技術開発賞を受賞

 (独)土木研究所と(株)拓和が河道閉塞(天然ダム)の水位監視専用の機器として共同開発した「土研式水位観測ブイ(投下型)」が、(財)国土技術研究センター及び(一財)沿岸技術研究センター主催による第14回国土技術開発賞表彰において、選考委員会委員長表彰を受けました。本表彰制度は、建設分野における技術開発者に対する研究開発意欲の高揚と建設技術水準の向上を図ることを目的として、建設分野における優れた新技術及びその開発に貢献した技術開発者を対象に表彰する事業であり、今回開発した技術は、昨年9月に台風12号によって紀伊山地に多数発生した河道閉塞(天然ダム)災害の際に活用され、国土交通省の緊急調査、対応に貢献したことが高く評価されての受賞となりました。土木研究所としては3年ぶり6件目の受賞です。

 平成24年7月6日、(財)国土技術研究センター及び(一財)沿岸技術研究センターによる表彰式が、奥田建国土交通副大臣ご臨席のもと盛大に取り行われました(写真)。

 地球温暖化の影響等もあり、土砂災害の激甚化が懸念されています。豪雨や地震によって大規模な河道閉塞(天然ダム)が発生する等、大規模な土砂災害への対応がますます求められています。(独)土木研究所火山・土石流チームでは、今回の受賞を励みとして、本装置の改良と一層の普及を図るとともに、今後発生する大規模土砂災害に対応するための実用的な技術の開発に努めていきたいと考えています。



 第14回国土技術開発賞受賞技術紹介ページ

 http://www.jice.or.jp/kaihatsusho/201207060.html



  写真 受賞後の記念撮影の様子
(左から 山越隆雄火山・土石流チーム主任研究員、中村英夫第14回国土技術開発賞選考委員会委員長、
奥田建国土交通副大臣、高橋建彦(株)拓和営業統括副本部長)




(問い合わせ先:火山・土石流チーム)

東日本大震災関係功労者への感謝状が授与されました

  国土交通大臣からの感謝状




 平成24年7月27日、国土交通省において、東日本大震災関係功労者に対する国土交通大臣感謝状の授与式があり、種々の困難を克服して、被災地域の復旧、被災住民の救助活動等を行い、地域住民の生活と社会基盤の安定に功績のあった307者に対し、感謝状が授与されました。

 土木研究所は東日本大震災の発生に際し、諸施設の応急復旧活動等に尽力し、被災地域の社会基盤の安定等のために顕著な成果を挙げたとして、感謝状を頂きました。

 なお、東日本大震災の被害に対し、土木研究所は国や地方自治体からの要請を受け、発生直後から被災調査や復旧のための技術支援等のため延べ188人の専門家を派遣しました。また、短期間の技術指導のみではなく、東日本大震災に係る各種委員会等にも積極的に参画し、復旧支援や長期的な被災地の復興支援も実施しています。



(問い合わせ先:総務課)

「気液溶解装置」の現場見学会を開催しました

  システムの概要
(クリックすると拡大します)


  現地(島地川ダム)見学の状況


  模型によるデモンストレーションの状況




 土木研究所が民間企業と共同開発した「気液溶解装置」について、7月20日(金)に島地川ダム(山口県周南市)で現場見学会を開催しました。

 「気液溶解装置」は、水中で吸入した水に酸素を溶かし込んで高濃度の酸素水を生成し、酸素を供給したい水深に直接吐き出すことができる装置です。

 装置を水中に設置させることから、水圧を活用して効率的に酸素を水に溶解させることができます。また、装置内は水圧と等しいことから、吐き出すときに泡が発生せず、周辺の水を乱すことなく遠くまで高濃度の酸素水を供給することができます。さらに、装置を上下方向に自由に移動させることができることから、任意の水深で酸素濃度を高めることが可能です。

 ダム湖等の水の出入りが少ない水域では、夏場を中心に下層の水の溶存酸素が少ない貧酸素状態になりますが、この酸素不足は、湖底の泥からの窒素やリン等の富栄養化につながる栄養塩や、鉄、マンガン、ヒ素等の金属成分の溶出を引き起こします。これらの溶出は水域の環境悪化や利水障害につながるものです。島地川ダムでは、特にダム湖底の泥からの金属類の溶出対策として本装置が導入されましたが、導入の結果、ダム湖下層の溶存酸素が回復し、溶出が抑えられることで、水環境の改善に貢献することができました。

 当日は行政機関や建設コンサルタントの技術者など43名の参加があり、周南市内で技術概要等の説明を行った後、実際に装置が設置されている国土交通省山口河川国道事務所の島地川ダムにおいて、模型によるデモンストレーションや、空気から酸素を取り出す地上装置等の見学を行い新技術の理解促進に努めました。現在、当現場や灰塚ダム(広島県三次市)など国内で5箇所の導入実績があり、今後さらなる普及が期待されるものです。



(問い合わせ先:技術推進本部)

「世界防災閣僚会議in東北」サイドイベントに出展しました

 野田総理の開会式挨拶



 玄葉外務大臣のご来場に緊張!?の様子



 山根外務副大臣にブイの説明をする職員



 海外からの参加者にタイの洪水氾濫
シミュレーション計算について説明する職員




 2012年7月3〜4日に仙台国際センターで開催された「世界防災閣僚会議in東北」のサイドイベントに、火山・土石流チームとICHARMが防災技術に関する出展をしました。

 「世界防災閣僚会議in東北」は、外務省や国土交通省等の関係省庁・国際機関・被災した自治体等の主催・共催で、全体会合とサイドイベント(於:仙台国際センター)および3つの分科会(於:岩手県一関市、宮城県石巻市、福島県福島市)で構成され、本会合には63ヶ国の高官と14国際機関の代表等が出席されました。開会式には野田総理もご出席して冒頭のご挨拶をなされ、玄葉外務大臣や平野復興大臣はサイドイベント会場にも足を運ばれて土木研究所のブースもご覧になられました。

 火山・土石流チームは、ポスター、映像及び実物展示によって、土研で開発した河道閉塞(天然ダム)対応技術と昨年9月の台風12号災害時に紀伊山地に発生した大規模な河道閉塞(天然ダム)への活用事例を紹介しました。特に、河道閉塞(天然ダム)形成時に素早くその水位を監視するために開発された「土研式水位観測ブイ(投下型)」(Webマガジン第26号へリンクします)は、その外観が一見ロボットのようでもあり、多くの方の目を惹き付けていました。

 またICHARMは、2011年10月に発生したタイ国チャオプラヤ川の洪水において実施した洪水氾濫予測に関して、アニメーション映像とポスターを用いて説明を行いました。昨年実施した洪水予測は、衛星による地形や降雨情報を応用しながら、チャオプラヤ川全流域を対象に、河川流量から洪水氾濫までを一体的に解析(Webマガジン第26号へリンクします)するという試みでした。洪水がピークを迎える10月中旬に発表した予測は、アユタヤ周辺で広域氾濫が長期化するという結果であり、その後の現地調査等によって予測の妥当性を概ね確認しました。低平地における大規模な洪水氾濫は日本人にとって馴染みのない現象ですが、アニメーション映像によって直感的にその挙動を理解いただけたと思っています。

 東日本大震災が契機となり、災害に備える意識は世界的に高まりつつあります。今後もこのような機会を捉えて、土木研究所の防災技術を国内外にアピールしていきたいと思います。



(問い合わせ先:研究企画課、火山・土石流チーム、ICHARM)

寒地土木研究所一般公開 〜75年の歴史と未来への可能性〜


  セメントで遊ぼう…うまく形になるかな?



  防雪対策の効果を模型で再現


















 今年も寒地土木研究所では「歩みを重ねて75年 未来へつなぐ北の土木の可能性」をキャッチフレーズに、14のチームと1つのユニット、そしてつくば中央研究所がそれぞれ趣向を凝らした公開を行いました。開催日である7月20日(金)、21日(土)は両日とも晴天に恵まれ、昨年を上回る1,387名の来場者がありました。


<75年の歩み、研究成果をパネルで>

 今年は、寒地土木研究所が75周年を迎えるということで、その歩みや研究内容をパネルにして正面玄関から講堂にかけて時代別に展示を行いました。また、講堂ではビデオ上映や技術相談窓口の開設、職員が種を採取して育てた千島桜の苗木を、75周年にちなんで先着75本ではありますが希望者に配付しました。


<触って発見、遊んで実験>

 寒地地盤チームでは、子ども達に自分でコップの中の土を揺らして液状化現象を再現してもらいました。寒地構造チームが設けた、コンクリートの補修材料でオリジナルのマグネットを作るコーナーは、防災地質チームでの石のお絵かきコーナー、耐寒材料チームの「セメントで遊ぼう」などと共に子ども達に大人気でした。水産土木チームのコーナーでは、多くの子ども達がナマコやアワビなどに直接触れてその感触や特徴などを学んでいました。寒地河川チームと水環境保全チームは、合同で各種模型を展示し実際に水を流して実験を行いました。子ども達は、水の流れを見ながら、真剣な眼差しで研究員の説明に聞き入っていました。雪氷チームでは、吹雪模型実験などを行いました。寒地交通チームでは、ランブルストリップス体験やワイヤーロープ式防護柵の実物展示を行いました。資源保全チームでは、自分で土の水ハケ時間を測定する実験や、普段あまり見ることのない土壌調査器具を使用することのできる体験コーナーが人気でした。寒地機械技術チームでは、大型の除雪車等を展示し実際に子ども達が運転席に乗ることができるとあって人気を得ていました。地域景観ユニットでは、視線追跡装置(アイトラッカー)体験やパネルによる研究成果の説明のコーナーを設けました。また、今回初めてつくば中央研究所が寒地土木研究所の一般公開に参加し、アーチ橋のペーパークラフト作成コーナーを設けました。ペーパークラフトは特に子ども達に人気がありました。

 今年も多くの方々に見て、体験して、楽しんでいただいた一般公開でした。今後もアンケートで寄せられたご意見・ご要望を参考にし、より皆様の役に立ち、そして親しみやすい研究所を目指して参ります。来年もまた、多くの皆様にご来場いただけるよう工夫し、職員一同心よりお待ちしております。



(問い合わせ先:寒地土木研究所 寒地技術推進室)

平成24年度「つくばちびっ子博士」一般公開を開催しました


「残響室」で和太鼓を叩いて、音の響きの
大きさを体感しました



研究員が見守る中、大型油圧ショベルを
無線操作しました



南ループでの傾斜を体験する子どもたち

 7月27日(金)、恒例となる「つくばちびっ子博士」一般公開を国土技術政策総合研究所(国総研)と合同で行い、夏休みの子どもたちを中心に393名が来場しました。当日は快晴で気温が35度を超える猛暑の中、約40名ずつ2台のバスに分乗し、大型油圧ショベルの無線操作、道路の騒音対策を研究している実験施設での音の響きの違いを確かめる体験、そして毎年大好評、試験走路での高速走行、これらを約1時間かけて体験してもらいました。

 大型油圧ショベルの無線操作体験では、ショベルを前に多くの子どもたちが目を輝かせている中、説明する研究員から「操作したい人、手挙げて〜」と声がかかった瞬間、あちこちから「はい!」と大きな返事があり、予想以上の人気に研究員も圧倒されていました。この体験では、地面に置いた大きな風船をショベル操作で割るという、子どもにはやや難しいものでしたが、研究員の手助けを得ながら、皆真剣になってショベルを動かし、無線操作の目的とその役割などを学びました。

 無響室(音が響かない)、残響室(通常より音がよく響く)での体験では、まず最初に国総研の研究員から道路の騒音対策としてどのような実験をしたのか、また音の伝わり方がなぜ2つの部屋で違うのかなどについて説明をしました。その後、実際に部屋へ入った子どもたちは、置かれた和太鼓を叩き、部屋の構造や材質などによって音の響き方に大きな違いがあることを、小さな身体全体で実感していました。

 バスツアー最後の体験となる試験走路では、走路内及び周辺の研究施設の説明や南ループで降車しての傾斜体験の後、最高時速120kmでバンクを駆け抜け、その度に子どもたちから大きな歓声が上がりました(中には怖くてお母さんの手をがっちり握っていた子もいましたが。)。

 限られた時間の中ではありましたが、土木技術に関するこのような体験をしたことは、きっと大人になっても記憶に残っていくことでしょう。土木研究所では、これからも「ちびっ子博士」やその他の一般公開などを通じて、未来を担う子どもたちを応援していきたいと思います。



(問い合わせ先:総務課)