研究成果の紹介

水制工による砂防えん堤魚道の閉塞防止技術


写真−1 魚道流入口が土砂により閉塞



写真−2 魚道流入口に水制工を設置した事例



写真−3 模型実験水路



図−1 模型実験水路に通水後の河床変動量
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1.技術開発の背景

 近年、河川環境に対する関心の高まりから、魚がのぼりやすい川づくりが進められ、えん堤や頭首工など、魚の遡上に影響を与える数多くの施設に魚道が設置されています。

 北海道内の魚道の総数は2,300基以上あり、その内4割以上が、砂防えん堤などの砂防・治山施設にあります。

 このため、河川の上流を産卵場所とするサクラマスなど、河川の下流から上流まで、広い範囲を回遊する魚類の生息環境を確保するためには、河川上流にある砂防えん堤などでも、魚が遡上できることが重要となります。

 しかし、砂防えん堤は土砂流出を止めるための施設であり、施設の性格上、洪水時の土砂流入量が非常に多く、魚道流入口が閉塞してしまうことがあります(写真−1)。

 魚道流入口の土砂堆積の対応として、洪水で閉塞するたびに土砂を撤去することが考えられますが、近年の公共事業費削減から、閉塞防止対策も持続的に費用のかからない方法が求められています。

 このような背景から、砂防えん堤に貯まっている巨礫を利用して工事費を削減し、さらに維持管理費の低減が見込まれる水制工による土砂の堆積抑制技術を開発しました(写真−2)。

 なお、水制工とは、構造物を河岸から張り出すことにより、水の流れる方向を変えたり、水の勢いを弱くすることを目的する施設です。

 

2.開発技術の概要

 「砂防えん堤の魚道流入口」や「水制工」を配置した模型実験水路により、魚道流入口に土砂が堆積しにくい水制工の形状や設置位置を検討しました(写真−3、図−1)。

 この実験成果により設計した水制工を、過去の出水で魚道が閉塞した実際の砂防えん堤に設置しました(写真−2)。

 水制工設置後、何度か出水がありましたが、魚道流入口には以前のような大規模な土砂堆積は生じておらず、かけた費用の割には大きな効果があったものと考えられます。

 

3.成果の普及

 本研究成果については、既に、論文やマニュアルの形で成果の普及を図っていますが、具体的な技術的助言が必要な場合は、寒地土木研究所の水環境保全チームへご連絡下さい。



(問い合わせ先:寒地土木研究所 水環境保全チーム)