研究成果の紹介

短繊維を混入したコンクリートおよび吹付けコンクリート


写真−1  ビニロン短繊維
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写真−2  剥落抑制効果の実験例
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写真−3  耐力向上効果の実験例
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  コンクリートは、石や砂にセメントと水を混ぜ、化学反応で固めた材料です。押し潰す力(圧縮力)に対して強く、引っ張る力に対して弱いという特徴があります。一般には、引っ張りに対して強い鉄筋と併せて使うことで弱点を補い、鉄筋コンクリートとして土木構造物や建築物に広く使われています。しかし、積雪寒冷地に建設された鉄筋コンクリートの構造物は、使用している間の外気温の変化によって、コンクリートに浸入した水が凍ったり解けたりを繰り返して、コンクリート自体が痛み、さらに海風や凍結防止剤などの塩分がコンクリートに蓄積され、内部の鉄筋が錆びるなどの現象により、次第に劣化していきます。特に地震や事故の衝撃などが加わると、コンクリートのかけらが剥がれて落下しやすくなる可能性もあります。この対策として、コンクリートの中に短く細い繊維(短繊維)を混ぜることによって、コンクリートのかけらが剥がれ落ちにくくするよう性能を改善する方法があります。従来、この短繊維は鋼製の材料が多く用いられてきていますが、海風や凍結防止剤散布などにより、表面が錆びやすいという課題がありました。そこで、錆びることが無く、かつコンクリートとの付着が良いビニロン短繊維(ビニロン: poly-vinyl alcohol:PVA)に着目して、共同研究を、室蘭工業大学、北海道大学、三井住友建設株式会社、ドーピー建設工業株式会社と行ってきました。

  研究では、ビニロン短繊維を混入したスマートコンクリートについて、剥がれ落ちを抑制する効果(剥落抑制効果)や、より大きな力に耐えられるようにする効果(耐力向上効果)を実験で確認しました。なお、短繊維の影響でコンクリートを送る管が詰まりやすいという課題がありましたが、使用する材料やその比率を工夫することで、ポンプ圧送や吹付けによる施工ができることも確認しました。また、連続繊維メッシュと呼ばれる格子状のプラスチックの補強材を併用して吹き付けるスマートショット工法は、劣化した鉄筋コンクリートの補修工法として大きな力に耐えることが可能です。

  耐寒材料チームでは、このようなビニロン短繊維を混入したコンクリートの適用範囲や補強効果の計算方法など設計・施工の留意事項をとりまとめており、今後、試行工事等を通じて普及を図りたいと考えています。



(問い合わせ先:寒地土木研究所  耐寒材料チーム)