土研ニュース

第15回国土技術開発賞の優秀賞を受賞

 優秀賞の表彰
   左:佐山敬洋主任研究員
   中央:太田昭宏国土交通大臣
右:竹内邦良センター長


 入賞の表彰
   左:小橋秀俊前上席研究員
   中央:中村英夫東京都市大学学長
右:宮武裕昭上席研究員


 国土交通大臣からの賞盾




  第15回国土技術開発賞(主催:一般財団法人国土技術研究センター、一般財団法人沿岸技術研究センター、後援:国土交通省)において、水災害・リスクマネジメント国際センター(ICHARM)水災害研究グループが開発した「降雨流出氾濫モデル(RRIモデル)」が優秀賞を受賞し、さらに地質・地盤研究グループ施工技術チームが開発した「ALiCC工法」も入賞し、2013年(平成25年)7月5日に東京国際フォーラムで表彰式が行われました。

  この賞は、住宅・社会資本の整備や国土管理に係わる、計画・設計手法、施工方法、維持管理手法、材料・製品、機械、電気・通信、伝統技術の応用などの分野で、概ね過去5年以内に技術開発され、かつ過去3年間以内に実用化された新技術を対象に表彰するもので、技術開発者の研究開発意欲を高め、技術水準の向上を図ることを目的としています。

  「降雨流出氾濫モデル(RRIモデル)」(代表技術開発者:佐山敬洋主任研究員)は、世界各地で発生する大規模洪水を対象に、降雨から洪水氾濫までの現象を流域一体で解析する予測モデルです。従来の予測モデルは、山地域からの降雨流出現象と平野部の洪水氾濫現象を個別に解析しており、両者が複雑に関連する降雨氾濫現象の迅速かつ的確な予測には必ずしも適さないことがありました。RRIモデルは、広範囲にわたり河川が氾濫する現象の予測に適しており、2011年に発生したタイ国チャオプラヤ川流域の洪水の氾濫予測に活用されました。

  「ALiCC工法」(代表技術開発者:小橋秀俊前上席研究員)は、軟弱地盤上に盛土を行う場合に、盛土を支えるために造るセメントの杭にかかる荷重を合理的に算出し、杭をより大きな間隔で配置できる設計法です。従来の設計法に比べて、杭の本数を減らすことができるため、コストの縮減が可能です。また、盛土の下の地盤に全面的に杭を配置するため、盛土の安定や沈下の抑制に加え、盛土の変形に伴う周辺地盤の変形も抑制することができます。これまでに、福岡県の有明海沿岸道路や滋賀県の国道8号米原バイパスをはじめとする30件の活用実績があります。

  今後、これらの技術がさらに活用され、社会資本の整備や管理を通じて広く社会に貢献することが期待されます。



(問い合わせ先:技術推進本部)

独立行政法人物質・材料研究機構と連携・協力に関する協定を締結
〜社会インフラの強靱化・効率化に資する研究開発を強力に推進〜

  平成25年7月23日、独立行政法人物質・材料研究機構(理事長:潮田資勝、以下「物材機構」という。)と独立行政法人土木研究所(理事長:魚本健人、以下「土木研」という。)は、連携・協力に関する協定を締結しました。


 魚本理事長(左)と潮田物質・材料研究機構理事長(右)


  この協定は、物材機構と土木研とが、相互の保有技術、研究能力、人材等を活かし、緊密な連携・協力のもと、社会問題として顕在化しつつある社会インフラの強靭化・効率化に資する研究開発を強力に推進することにより、相互の発展のみならず社会へ貢献することを目的としています。

  両者はこれまで、物材機構が有する構造材料の基盤技術と土木研が有する社会インフラの維持管理・更新技術を融合させ、土木研が有する実際の橋梁や市場から回収した撤去部材を用いた研究協力を促進することにより、我が国が抱える社会インフラの課題解決を目指すべく、相互のポテンシャルやシーズのマッチングを共有するための交流等を重ねてきました。

  この連携協定は、物材機構と土木研の保有技術、研究能力、人材等を活かし、社会問題として顕在化しつつある社会インフラの強靭化・効率化に資する研究開発を緊密な連携・協力のもと、強力に推進することにより、相互の発展のみならず社会への貢献を目的とするものです。

  連携・協力の実施事項は次のとおりです。

     (1)  相互に関連する分野における研究開発の推進

     (2)  研究施設、設備等の相互利用

     (3)  研究者の研究交流を含む相互交流

     (4)  情報発信の相互支援及び共同実施

     (5)  その他本協定の目的遂行上必要な事項


  物材機構は、開発した鉄鋼材料、構造物の評価技術、補修技術を有しています。一方、土木研は、実際に使用されていた構造物や実環境下での試験が可能なフィールド等を有しています。

  今回の協定締結により、物材機構においては、実構造物の解析や実環境下での評価を行うことで、実用化を見据えた研究開発を加速することが可能となり、土木研においては、最先端の材料技術をいち早く適用することで、社会インフラの長寿命化や安全性の確保を早期に実現できることが期待されます。



(問い合わせ先:研究企画課)

ミャンマー国における道路技術に関するセミナーについて

 図-1 ミャンマー国エーヤワディ・デルタ地域
(クリックすると拡大します)


 写真-1 エーヤワディ・デルタ地域の道路の様子


 写真-2 船で運ばれてくる砕石



  2013年(平成25年)6月13〜14日にミャンマー国ヤンゴン市内においてJICA主催の道路技術に関するセミナーが開催され、土木研究所からは施工技術チームから宮武上席研究員が、舗装チームからは久保上席研究員が出席しました。本セミナーはJICAが実施している「災害多発地域における道路技術改善プロジェクト」の一環として開催されました。このプロジェクトでは以下の二つを目的としており、本セミナーでは@に関連して現地視察を行い、また、Aに関連した発表や議論を行ってきました。

    @エーヤワディ・デルタ地域におけるパイロット事業等を通した道路技術者の実用的なスキル・知識の向上

    A道路設計および建設工事に関する技術基準・マニュアルの改善


  エーヤワディ・デルタ地域はヤンゴンの南西に位置する沿岸地域で、広く軟弱地盤に覆われ、サイクロンや大雨などの災害による被害が深刻な地域です(図-1)。特に2008年(平成20年)に発生したサイクロン・ナルギスでは深刻な洪水被害が発生しています。写真-1にエーヤワディ・デルタ地域の道路の様子を示します。視察したのが雨季であったため、簡易な砂利道はぬかるみ、時速10km程度での移動がやっと、という状況でした。現地技術者は路盤・路床のセメント安定処理など、固化することで何とか対処できないかと考えているようでしたが、現地の状況を見る限り、路床はおろか路盤面を越える水位となっており、路盤や路床を多少強化しても十分な支持力の確保が期待できないことから、もっと本格的な対応(例えば河川改修など)の必要性が感じられました。現地では、実務的な取り組みとして現地の住民に雨季の間、道路管理を委託するという手法が取られており、川を使って船で運ばれてきた砕石をさらに砕いて路面を応急補修していました(写真-2)。

  現地視察後、ヤンゴン市内で開催されたセミナーでは、日本の技術に対する期待の高さが参加者から伝わってきましたが、日本の技術を直接輸入すれば問題は解決するという安易な発想も散見され、現場で何が起こっているのかを把握することが大事であることを何度も説明する必要がありました。

  本プロジェクトは、2015年(平成27年)6月まで継続される予定であり、今後、両国の道路技術者がさらに交流して、上記@Aの目的の達成が求められます。土木研究所としても、本プロジェクトの趣旨を理解した上で、引き続き現地調査等を含め、協力していく予定です。



(問い合わせ先:舗装チーム)

東日本大震災津波被災下水処理場における復旧対策支援

 津波により被災した下水処理場


 図-1 次亜塩素酸ナトリウムの添加濃度と
大腸菌群数の関係


 図-2 次亜塩素酸ナトリウムの添加濃度と
大腸菌群数の関係




  2011年(平成23年)3月、東日本大震災の津波により、沿岸部に位置する下水道施設が被災して水処理機能が停止し、完全な復旧には長時間を要しています。被災地域の水道が復旧するにつれ、家庭などから排出される下水が継続して下水道に流入することとなります。被災した下水処理場では、水処理機能を復旧させるための大規模な修復を行いながら、継続して流入する下水を浄化して河川や海域の水質保全に努めなければならず、下水処理場からの放流水の影響を極力最小眼に抑えるため、段階的な応急復旧を行っていく必要が生じました。

  応急復旧の第1段階として、簡易沈殿処理と塩素消毒による水処理を行いました。しかし、この方法では衛生学的な安全性を確保するために必要な水質基準値である放流水1mL中の大腸菌群数3,000個以下がクリアーすることは困難を極め、下水処理場を管理する自治体から要請を受けた土木研究所では放流水の大腸菌群数の低減を目的に、現地調査や実験から消毒効果を向上させるための検討を行いました。

  検討の結果の1例を図-1に示しますが、被災直後から長期間にわたり簡易沈殿処理を行っていた水処理系列と通水間もない短期間の系列では、明らかに大腸菌群の消毒効果に違いのあることが明らかとなりました。この原因としては、時間が経つにつれ沈殿池に堆積した汚泥量の違いであることが考えられたため、堆積した汚泥を沈殿池から早急に排出させる必要性が明らかとなりました。

  その次の段階には簡易曝気と水質浄化に関与する微生物(活性汚泥)による生物処理を開始したことで、現在では、放流水の水質も大きく改善され、消毒のための次亜塩素酸ナトリウムの添加濃度を減少させても大腸菌群数の十分な低減効果が得られています(図-2)。

  今回の被災処理場への技術支援より、水処理機能が停止した際の水質悪化は消毒効果への影響が大きいことが明らかになりました。今後、効率的な消毒が行える応急対策手法の研究を行い、また、管理方法の改善など段階的復旧において生じた課題を明確にして解決策を提示することが重要であると考えられます。



(問い合わせ先:リサイクルチーム)

平成25年度「つくばちびっ子博士」一般公開を開催しました

 津波が河川を遡上する実験を体験


 走行路での傾斜を体験


 土砂災害の発生及び対策についての模型を
使っての説明




  毎年恒例となる「つくばちびっ子博士」一般公開を、7月26日(金)、8月2日(金)、9日(金)の3日間、国土技術政策総合研究所と合同で行いました。猛暑にもかかわらず、3日間で夏休み中の子供たちとその保護者ら708名が来場しました。


  7月26日は、川をさかのぼる津波を発生させる施設の公開や、コンクリート構造物の「健康診断」ということでコンクリート構造物の鉄筋の配筋状況の検査を非破壊で行う検査体験、試験走路での高速走行や走行路の傾斜体験を行いました。

  8月2日は、道路騒音対策研究をしている実験施設で音が響く部屋と音が吸収される部屋とを使って音の響きの違いを確かめる体験、暮らしと水について、水がきれいになる状況や病気にならないために注意が必要な水に関するスライド上映、水質の研究施設の公開、試験走路での高速走行を行いました。

  8月9日には、走行中の電気自動車に充電する未来の給電システムの公開や、土砂災害の発生及び対策についての模型を使った説明、試験走路での高速走行を行いました。


  限られた時間の中ではありましたけれども、土木技術に関する様々な経験をした子供たちにとって、理解が深まってもらえればこの上ありません。

  土木研究所では、これからも「ちびっ子博士」やその他の一般公開を通し、皆様に土木について興味を持っていただきたいと思っております。



(問い合わせ先:総務課)