土研ニュース

平成25年度土木研究所講演会を開催しました

 写真-1 魚本理事長による挨拶


 写真-2 講演の様子


 写真-3 樋口教授による特別講演




  2013(平成25)年11月5日(火)に東京都千代田区の一橋講堂において「平成25年度土木研究所講演会」を開催いたしました(写真-1、2)。講演会当日は、民間の方をはじめ、さまざまな分野から約330名の方々が参加されました。

  本講演会は、土木研究所の研究者による講演・報告を通じ、当研究所が実施している調査研究の成果や研究状況を、それらの分野の動向と絡めて幅広く一般に紹介するものであり、当研究所の情報発信の重要な場の一つです。

  今回は、土木における各分野の動向として、道路橋の維持管理やダム再開発の状況を紹介しました。また、最近の調査研究の成果として、吹雪による災害を減らすための取り組み、水災害を防止及び軽減のためのハード面及びソフト面での対策、インドネシア共和国アンボン島で発生した天然ダムと現地に適用した土研式投下型水位観測ブイの観測結果について報告しました。また、土木研究所の研究状況の事例について、環境に優しい舗装技術、化学物質が水生生物に与える影響を評価する試験方法、日本国内外での軟弱地盤対策について発表しました。あわせて、本講演会の3週間前に発生した伊豆大島の土石流災害についての報告(速報)も行いました。

  特別講演者として、今年は警察大学校警察政策研究センターの樋口晴彦教授をお招きし、「事例に学ぶ専門技術者の陥穽(かんせい)」と題して、過去の不祥事の事例をご紹介頂いた上で、不祥事への対応策を講じる際に実務的な視点を忘れないことの重要性等について述べられました(写真-3)。

  来場者からは、非常に有意義であったとのご感想をいただきました。また、来場者からのアンケートにおいては、「日本における土木技術の伝承について聴きたい」、「土研での調査や研究が現場でどの様に活用されているのか知りたい」、「防災、減災への取り組みについて講演を希望する」、「震災の復旧に関して教えて欲しい」等、今後講演会を開催するにあたり大変貴重となるご意見やご要望も数多く頂戴いたしました。

  土木研究所では、来年度以降も講演会で研究結果などを紹介することとしております。



(問い合わせ先:研究企画課)

土木を身近に!「土木の日」2013一般公開を開催しました

 写真-1 どこに埋めているかわかるかな?
(橋梁撤去部材展示)


 写真-2 今年の景品「折り紙の建設機械」


 写真-3 岩の強さを測れる機械って何だろう?
(土木地質調査を体験してみよう!)


 写真-4 「スイスイ君」(左)と「ぞうさん」(右)




  十一月十八日(11月18日)の土木の日にちなみ、土木研究所及び国土技術政策総合研究所の一般公開を11月16日(土)に行いました。当日は快晴に恵まれ、970名の皆様にご来場いただきました。

  今年は、舗装走行実験場、走行時非接触給電システム、水理実験施設、海洋沿岸実験施設、橋梁撤去部材展示、土石流発生装置、試験走路の実験施設等を公開しました。例えば橋梁撤去部材展示では、探査機を使って実際にコンクリートの内部に埋めた様々な物体がどこにあるのかを当てる体験(写真-1)が大人から子供まで大好評だった他、海洋沿岸実験施設では、島ができる過程を再現する実験が行われ、島が出来あがる様子に来場者から驚きの声があがりました。その他、毎年大人気の試験走路の高速走行体験では、日頃できない体験ができ面白かったという感想を様々な方から頂きました。

  一般公開では、各実験施設を巡ってスタンプを集める「スタンプラリー」を実施しました。今年はスタンプを集めた方(4箇所以上の方)やアンケートにご回答いただいた来場者に対し、職員手作りの折り紙の建設機械(写真-2)をプレゼントしました。

  【折り紙の折り方は、土木研究所ホームページ 「ぼくたち土木探検隊」に掲載しています。】

  折り紙の建設機械は全部で30色以上あったため、どれにしようか迷ってしまう様子が印象的でした。

  これらの公開のほか、来場者自らが土木技術を体験できる「土木体験教室」では、今年も子供たちを中心に多くの方々が参加されました。例えば「土木地質調査を体験してみよう!」(写真-3)では、様々な岩石がどれくらいの力で割れるのかが具体的な数字でわかり、面白かったという感想が寄せられました。

  会場ではこれ以外にも、国土交通省関東地方整備局のご協力による「働く自動車」の展示や体験乗車、土木研究所のマスコット「ぞうさん」と、公益社団法人日本下水道協会からゲストとして参加した「スイスイ君」との記念撮影(写真-4)、つくば市内の小学校5年生の力作がそろった「ボール紙でつくる橋コンテスト」、つくば市立吾妻小学校及び吾妻中学校による吹奏楽の演奏、職員有志による和太鼓やバイオリン、バンド演奏等が、会場をさらに盛り上げました。

  日ごろあたりまえに存在する土木技術を、よりわかりやすく、そして楽しみながら学べる「土木の日」一般公開。次回もご期待ください。



(問い合わせ先:研究企画課、総務課)

理化学研究所と土木研究所が連携協力協定を締結しました


  独立行政法人理化学研究所(以下、理研)の光量子工学研究領域(以下、RAP)と独立行政法人土木研究所(以下、土研)構造物メンテナンス研究センター(以下、CAESAR)は2013(平成25)年9月13日に「土木研究所構造物メンテナンス研究センターと理化学研究所光量子工学研究領域との光量子技術研究開発に関する連携協力協定」を締結しました。


 調印式の様子
(左)吉岡 淳 土木研究所構造物メンテナンス研究センター長  (右)緑川 克美 理化学研究所光量子工学研究領域長



 連携協力協定の概要
(クリックすると拡大します)



  土研CAESARは理研の社会知創成事業イノベーション推進センター(RInC)と平成22年度に小型中性子イメージングで連携協力を締結し、研究を進めてきました。平成25年度の理研における組織改編を機に、中性子のみでなくテラヘルツ光、レーザー光なども視野に入れ、光量子を利用した非破壊検査内部健全性診断システムの研究・開発をスタートさせます。

  CAESARは、橋梁など構造物の安全管理を目的とし、維持管理や検査や評価・予測、補修・補強などの技術について研究開発を積極的に行っています。重要な社会インフラである道路や橋などで、近年、老朽化などを原因とする損傷が顕在化しています。構造物内部の損傷状況を把握するために非破壊検査が行われていますが、現在の検査技術では取得できる情報に限界があるため、革新的な検査技術の開発が世界中で求められています。

  理研のRAPは、光量子ビーム技術とボリュームCAD(VCAD)システムを活用して、「見えないモノを見る Making the invisible visible」を目標に、非破壊検査技術や計測データを使ったシミュレーションによる予測診断技術の開発を行っています。透過性に優れる中性子光やテラヘルツ光、レーザー光などの光量子を利用したイメージング技術を応用すると、コンクリートや鉄骨・鋼板で構成された大型構造物についても、非破壊でその内部構造のデータを取得することが可能です。

  この連携協力協定は、光量子を用いた新たな非破壊検査システムを開発することで、橋梁などの内部の検査・健全性診断を可能とし、社会インフラの安全性確保と長寿命化を図ることを目標としています。

  この協定をもとに、今後、RAPとCAESARは連携して、可搬型中性子イメージング装置の開発やテラヘルツ光を用いた鋼材の腐食の可視化などに取り組んでいきます。



(問い合わせ先:CAESAR)

第6回CAESAR講演会開催報告

 写真-1 第6回CAESAR講演会




 表-1 プログラム(クリックすると拡大します)



1.はじめに

  2013(平成25)年9月11日に、都内の一橋講堂において「第6回CAESAR講演会」を、構造物メンテナンス研究センター(CAESAR)の主催により開催しました(写真-1)。プログラムを表-1に示します。CAESAR講演会は、道路橋の維持管理に関する情報提供を行うこと、また技術者の交流の場を提供することを目的として、2008(平成20)年のCAESAR設立以降、毎年開催しています。


2.基調講演

  基調講演「人口減少社会と次世代インフラの課題」では、日本学術会議の大西隆会長より、野田前首相の下でのフロンティア分科会での取り組みと、それを基盤に再構築した内閣府の総合科学技術会議(総合的・基本的な科学技術・イノベーション政策の企画立案及び総合調整を行うことを目的とした重要政策に関する会議の一つ)で提案されている次世代インフラの考えについての御講演を頂きました。


3.CAESAR報告

  CAESAR設立後の5年間の活動と今後の取り組みについて、松浦橋梁構造研究グループ長とCAESARの5上席研究員が報告しました。

  松浦橋梁構造研究グループ長は、CAESARの担う役割と最近の社会資本メンテナンスの動向との関わりを紹介しました。

  石田上席研究員は、CAESARの役割として位置付ける「現場への支援」とメンテナンス技術に関する「交流の場」の提供について紹介しました。

  村越上席研究員は、鋼橋の主たる劣化損傷である腐食や疲労に伴う重大損傷事例と各事例に関わる課題を述べるとともに、これまでの臨床研究等による主な研究成果の概要を紹介しました。

  木村上席研究員は、「臨床研究」として行ってきたコンクリート橋上部工の維持管理技術の開発のうち、撤去桁を用いた耐荷性能の評価技術や、塩害の予測手法の高度化への取り組みについて紹介しました。

  星隈上席研究員は、震災経験や実験等に基づいた道路橋の耐震性能の評価の向上に関する様々な研究や、津波が作用することにより橋が受ける影響に関する研究への取り組みを紹介しました。

  七澤上席研究員は、道路橋基礎に関して、地震による被災、軟弱地盤での不具合、材料劣化など、基礎の不具合への対応として取り組んできた研究開発等について紹介しました。


4.おわりに

  講演会には、橋梁の設計・施工・維持管理に携わる道路管理者や民間の方など、さまざまな分野から約490名の方々にお越しいただきました。CAESAR上席研究員の話は多岐にわたり、もっと時間を割いてほしかった等のご意見もありましたが、多くのご好評もいただくことができました。

  最後に、お忙しい中、貴重なご講演をいただいた大西隆氏ならびに終始熱心に聴講していただいた参加者の方々にお礼申し上げます。


注) 講演資料はホームページに公開しています。

   http://www.pwri.go.jp/caesar/lecture/lecture06.html



(問い合わせ先:CAESAR)

「つくばサイエンスコラボ2013 科学と環境のフェスティバル」に出展しました

 写真-1 フェスティバルの様子


 写真-2 ペーパークラフトでアーチ橋を作る来場者



  2013(平成25)年11月9日(土)、10日(日)に、つくば市のつくばカピオ・大清水公園において「つくばサイエンスコラボ2013 科学と環境のフェスティバル」が開催されました(写真-1)。本フェスティバルは、つくば市・つくば市教育委員会・筑波研究学園都市交流協議会つくば3Eフォーラム委員会が主催となり、研究者や学校教職員と子どもたちによる科学実験をはじめ、観察、工作、「児童・生徒の科学作品展」など様々なコーナーが設けられた科学を楽しむための体験型イベントです。つくば市によると、市内の小中学校・高校・大学、研究機関など合計60の団体が出展し、約16,500人の来場者があったとのことです。

  土木研究所は9日(土)に「ペーパークラフトを作って橋のしくみを学ぼう!」と題したイベントを出展しました。このイベントは、来場者にペーパークラフトでアーチ橋を作成頂いたうえで、完成したアーチ橋の上に重りをのせてアーチ橋の原理や仕組みを体験していただくものです。ペーパークラフトを正しく作れば、2リットルのペットボトルをアーチ橋に載せても壊れません。参加した子供たちから「紙で作った橋なのにすごい!」等感嘆の声があがりました。

  他にも土木に携わった偉人のアニメーションの放映や、橋梁のパネル展示等も行うとともに、11月16日(土)に開催する土木の日一般公開の周知も行いました。

  短い時間ではありましたが、当日の出展は、なかなかの好感触であったと思います。もし今後もこの様な場があるならば、土木研究所のアピールに努めて参りたい次第です。



(問い合わせ先:研究企画課、総務課)

「ユネスコ 水の安全と協力に関する戦略的ハイレベル会合」において特別セッション「将来の水科学・教育・統治」を開催しました

 写真-1 竹内センター長による基調講演




 写真-2 会合参加者との集合写真



  2013年はユネスコが設定する「国際水協力年」にあたり、これを機に2013年9月11日から13日にかけて、ケニア・ナイロビにおいてユネスコIHP(国際水文計画)が主催して標記会議とIHP次期戦略に関する会議が行われました。ICHARMからは竹内センター長他4名の研究員が参加しました。3日間で以下の3つの内容が行われました。


  (1) 会議初日はアフリカにおける水協力と保障に関するハイレベル会議が行われ、表流水に関する国同士の協力やその手順などに焦点があてられました。ICHARMはその中の一つのセッション「将来の水科学・教育・統治」を主催し、ポスト2015を睨んだ水に関する現状について議論を行いました。竹内センター長は基調講演を行い、ポスト2015に向けての水コミュニティからの新たなコンセンサスの話題を提供し、IHP第8期計画の重要性を強調しました。(写真-1)


  (2) 二日目は、2014年から2021年を履行期間とするIHP第8期計画について議論されました。IHP8期計画のタスクフォースメンバーから戦略計画についての紹介があり、それに対してフロアの参加者からいくつかの意見がありました。その後、全ての参加者はIHP8期計画の6つのテーマのうち、どのテーマで貢献するか特定することを求められました。ICHARMは「水関連災害と水文」のテーマに参加し、ICHARMが提案する「IFIフラッグシッププロジェクト」をテーマの履行リスト内に含めることにしました。


  (3) 最終日はIHP8期計画をいかにしてユネスコ関連機関と共同しながら進めるかについて議論が行われました。参加者は現在の課題や戦略、あるいは教育プログラム、協力手順などについて意見を述べました。


  また、この会議の2日目には、ICHARMは同じユネスコカテゴリー2センターの15名の代表者をランチミーティングに招待し、竹内センター長は各センター間の積極的な共同を主張するとともに、IFIとその最初のフラッグシッププロジェクトを紹介しました。

  



(問い合わせ先:ICHARM)

フィリピン・パンパンガ川流域にて現地調査を行いました

 図-1 パンパンガ川流域の位置


 写真-1 カンダバスワンプ内の水文観測所


 写真-2 地元メディアの取材を受ける佐山主任研究員




  文部科学省の気候変動リスク情報創生プロジェクトの活動として、対象流域の1つであるフィリピン・パンパンガ川流域(図-1)(その他にインダス川、メコン川、チャオプラヤ川、ソロ川が対象)において洪水および渇水に関する現地調査を実施しました。調査期間は2013年6月16日から22日までの7日間で岡積上席研究員と他6名の研究員が過去の洪水氾濫現象の理解を目的とした調査、洪水および渇水に関する被害状況の分析に必要となる情報の政府機関および自治体からの収集を行いました。途上国では研究を進める上で必要なデータを収集するのに苦労することが多いのですが、窓口になって頂いた大気地球物理天文局(PAGASA)パンパンガサブセンター所長の協力で、現地観測地点(写真-1)や河川堤防、パンタバンガンダム等の河川構造物に加え、公共事業道路省(DPWH)、国家防災協議会(NDRRMC)、国家かんがい局(NIA)などの政府機関やブラカン州の各事務所で研究に必要な情報を効率的に収集できました。その結果、洪水時の氾濫水の挙動や広大な湿地帯であるカンダバスワンプとサンアントニオスワンプの貯留・遊水効果(水を一時的にため込む効果)とその役割、また現行の洪水被害額の算定手法、パンタバンガンダムの灌漑への運用方法等に関して情報収集することができました。なお、ブラカン州の事務所では、本調査に関して地元メディアから取材を受け、調査の目的と期待される成果等に関して紹介することができました(写真-2)。さらに、上流域での調査時に車が農道でスタックした際には水牛に救出してもらうなど、現場ならではの貴重な経験もすることができました。

  本調査で得られた情報とそれを基に行われた洪水解析の結果は、9月3日にリモート・センシング技術センターで行われた気候変動に関する合同ワークショップ「RECCA−S8−創生D 研究交流会」において宮本専門研究員により発表されました。今後、収集した情報をもとに洪水と渇水のリスク評価モデルの開発を進めていく予定です。



(問い合わせ先:ICHARM)