研究成果の紹介

十勝川千代田実験水路における実物スケール河川堤防を用いた破堤抑制工実験


  写真-1 実験状況(クリックすると拡大します)



  写真-2 ブロックによる破堤進行の抑制
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  写真-3 ブロック撤去後の再通水状況
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  近年、台風や集中豪雨などを原因とする豪雨災害が多く発生しており、河川の氾濫による大規模な水害の発生が懸念されています。河川の整備が進んだ今日でもなお、越水等による河川堤防の決壊事例が多数発生している状況であり、河川堤防の決壊は人口や資産が集中している市街地などに、甚大な被害が生じることが想定されます。

  これまで、河川堤防の破堤現象に関して、寒地土木研究所と国土交通省北海道開発局では、北海道開発局が実河川スケールで様々な実験・研究を行うために一級河川十勝川に設置した、国内最大規模の実物大河川実験水路(延長1300m、幅30m)である十勝川千代田実験水路(北海道幕別町)を用いて、破堤メカニズムの解明に関する研究を行いました。このほか、実物大模型を用いた堤防の強化対策や樹林帯などによる氾濫流の抑制対策に関する研究が行われてきていますが、これら対策に関する技術はいまだ充分確立されていません。したがって、これまでの河川堤防整備などの予防対策に加え、万が一、河川堤防の決壊が発生した場合でも、その被害を最小限にとどめるための減災対策の強化が必要です。

  寒地土木研究所と北海道開発局では、越水等による河川堤防の決壊による水害の軽減を目的として、十勝川千代田実験水路において、実物スケールの河川堤防による破堤進行を抑制する工法に関する実験を実施しました。

  破堤抑制工実験は、写真-1に示すように破堤箇所の下流側20mの堤防上(一部堤内地)に、あらかじめ群体としてブロックを設置しておき、上流からの通水を行いました。通水後、根固めブロック(破堤抑制工)の位置まで破堤進行した際、堤防の崩壊とともに根固めブロックを自然落下させます。破堤進行の抑制効果は、自然落下した根固めブロックによって河川からの氾濫流が弱められることにより、破堤の進行が抑制されることを期待するものであり、その効果等について検証を行いました。

  実験結果は、越水開始から約180分後に根固めブロック設置地点に破堤が達しました。その後、写真-2のように破堤延長約30mまで拡大しましたが、それ以上は拡大せず破堤進行の停止を確認しました。次に、根固めブロックによる破堤抑制効果を検証するため、破堤箇所に設置した根固めブロックの撤去を行い、再通水実験を実施しました。再通水の結果、写真-3のように破堤拡大が再度進行し、破堤延長約50mまで達したことから、根固めブロックによる破堤抑制効果を確認することができました。

  今後は、本実験結果の詳細な分析を進め、より確実な破堤抑制工の技術確立を図っていく予定です。



(問い合わせ先:寒地土木研究所  寒地河川チーム)