研究成果の紹介

冬期路面改善シミュレータ(ウィリス)の開発


非常に滑りやすい雪氷路面



凍結防止剤の散布作業



ウィリスの入力/出力画面

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研究の背景

  冬期の気象や路面の状態は非常に複雑で、適切に道路管理を行うことは容易ではありません。例えば、気温-3℃で圧雪路面に凍結防止剤20g/㎡を散布した場合の効果の有無について、それが気温-8℃であった場合には効果はどれくらい低下するのか、あるいは散布量を30g/㎡に増やすとどれくらい効果が向上するのかなど、不明なことが多いのが実情です。

  凍結防止剤散布作業の問題点は、散布後の路面雪氷状態や路面すべり摩擦係数(μ)を推定する術がなく、事前に散布の効果を評価できないことです。そこで寒地交通チームでは、気象条件、交通条件、路面状態および舗装条件を考慮して凍結防止剤散布後のμを推定する手法(路面すべり推定法)を構築しました。


凍結防止剤散布効果をシミュレーション

  この路面すべり推定法を基本として、様々な道路状況、交通状況、気象条件および散布条件における凍結防止剤散布後のμを推定する冬期路面改善シミュレータ:ウィリス(Winter Road Surface Improvement Simulator: WIRIS)を開発しました。ウィリスはμ推定だけでなく、散布の良否、推奨される散布量、および散布が不適切な場合には代替策を提案します。実際の道路管理事業には様々な制約があり、ウィリスで導かれた方策のすべてを実際の作業に反映させることは困難ですが、それでも適切な方策を理解した上で実際に実施できる作業を行うことは重要です。今後、道路管理者に実際に使用してもらいながら、ウィリスの改良と、より有効な活用方法を検討していきます。


(問い合わせ先 : 寒地土木研究所 寒地交通チーム)

魅力的な歩行空間創出のための設計技術の開発

  図-1 印象評価実験の一例

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  図-2 分析結果の一例

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研究の背景と目的

  近年、観光振興、中心市街地活性化等、地域の魅力向上が課題となっていますが、街路等の土木施設の整備に際しての景観検討や景観配慮の実施に対する技術的支援は未だ十分ではありません。

  そこで本研究所では、そのような課題に寄与するべく、道路、広場等の歩行空間を対象に、その設計技術の向上に向けた研究に取り組みました。


研究の概要

  多数の被験者に歩行空間の写真を提示してその選好を聞けば、どのような歩行空間が好まれるのかを統計的に把握することが出来ます。その際、写真の一部のみを改変したフォトモンタージュを用いれば、それらの比較により、その改変した要素が歩行空間の魅力に与えた影響を把握することができます。さらに、被験者に単純な選好だけでなく、その歩行空間の印象もあわせて聞けば、統計手法[回帰分析やSD(Semantic Differential)法による因子分析等]を通じて、それらの選好に影響を及ぼした要因も明らかにできると考えられます。

  本研究では、このような考えのもと、様々な歩行空間の写真とそのフォトモンタージュを被験者に提示した印象評価実験を行い(図-1)、その結果から魅力的な歩行空間の要件を明らかにすべく分析を行いました(図-2)。

  その結果、歩行空間の魅力向上にあたっては、「自然的」で「つつまれた」かつ「開放的」な空間を目指すことが有効で、逆に言えば、「人工的」な印象、「さらされた」印象、「囲まれた」印象の軽減を図っていくことが有効であることが明らかになりました。

  これを踏まえると、例えば、「自然的」で「つつまれた」印象の林内の遊歩道のような空間であっても、下草や下枝の管理により見通しを確保し、「開放的な」印象の形成に努めていくことが有効であると示唆されます。また、中心市街地において電線地中化などにより景観阻害要素の整理を図った場合でも、これは「開放感」にしか寄与しないため、「人工的な」印象の軽減、「さらされた」印象の軽減もあわせて考慮しなければ、歩行空間の魅力向上は十分に達成されないことが示唆されます。

  これまで、歩行空間の評価構造については十分な分析がなされてこなかったこともあり、歩行空間の魅力を改善するためには、どのような歩行空間を目指させばよいのかが明らかにされていませんでした。

  本研究の成果を活用することにより、一例として前述したような歩行空間の魅力の改善手法の検討が可能となり、歩行空間の魅力向上を効率的に実現できるようになると期待されます。今後設計マニュアル等の公開を通じ、これらの成果の普及を図って参ります。


(問い合わせ先 : 寒地土木研究所 地域景観ユニット)