土研ニュース

平成27年度土木研究所講演会を開催

写真-1 魚本理事長による開会挨拶など

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写真-2 依田氏による特別講演

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写真-3 油田氏による特別講演

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写真-4 田邊氏による特別講演

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写真-5 小池ICHARMセンター長による講演

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写真-6 野口理事による閉会挨拶

  平成27年10月15日(木)に東京都千代田区の一橋講堂において、平成27年度土木研究所講演会が開催されました。

  本講演会は、土木研究所の研究者による講演・報告を通じ、当研究所が実施しているこの1年の調査研究の成果や研究状況を、それらの分野の動向と絡めて幅広く一般に紹介するものです。また、当研究所の情報発信の重要な場であるとともに新たな連携の発展につなげる場の一つです。

  まず、魚本理事長より開会挨拶の中で9月10日の台風18号等による「平成27年9月関東・東北豪雨」において発生した茨城県、栃木県の各災害現場における土木研究所の技術支援活動についてご報告させて頂くとともに戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)の概要をご紹介させて頂きました(写真-1)。

  特別講演の午前の部では、土木研究所が参画している技術研究組合の理事長である2名をお招きし、ご講演を頂きました。技術研究組合は、産業活動において利用される技術に関して、組合員が自らのために共同研究を行う相互扶助組織(非営利共益法人)です。

  モニタリングシステム技術研究組合理事長の依田照彦氏に、モニタリングシステムの要求性能の検証、室内実験及び現地での検証を通じて、基準化・標準化に向けた研究を推進するため設立したモニタリングシステム技術研究組合(RAIMS)の概要をご紹介して頂きました(写真-2)。続きまして、次世代無人化施工技術研究組合理事長の油田信一氏に、我が国が有するユニークなロボット技術の一つである、無人化施工の技術を維持し、さらに発展させるため設立した次世代無人化施工技術研究組合(UC-Tec)の概要をご紹介して頂きました(写真-3)。

  特別講演の午後の部では、国立極地研究所助教の田邊優貴子氏をお招きし、人為的活動の影響が地球上で最も少ない地域である南極大陸上に多数点在する湖沼の生態系の説明を頂くとともに、その南極湖沼をモデルとした、環境変動が生態系に与える影響、物質循環プロセス、生態系の発達と遷移など、最近のいくつかの研究を紹介して頂きました(写真-4)。

  土木分野のイノベーションに向けての第1部(午前)では、土木研究所が参画している戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)5課題の概要、進捗状況などをご紹介させて頂きました。

  土木分野のイノベーションに向けての第2部(午後)では、解散した財団法人道路保全技術センターより、「我が国の道路保全技術の向上の資する調査研究活動に対する支援」として、ご寄付を頂いた研究費での研究成果の一部である、舗装の欠陥を走行しながら評価できる非破壊測定装置の開発とその評価診断手法、舗装や道路盛土の内部物性構造を可視化する技術開発に関する研究成果2件をご紹介させて頂きました。

  第3部の土木研究所の活動(午後)では、この1年の土木研究所のトピックスとして、土木研究所ならではの実大実験である十勝川千代田実験水路における破堤実験の概要、イノベーションに向けた組織再編で今年4月に発足した「先端材料資源研究センター(iMaRRC)」の研究の方向性、国際貢献の主な活動として、今年3月に開催され、土木研究所も参画した第3回国連防災世界会議の報告(写真-5)、今年4月にネパール国で発生した大地震において、土木研究所が現地で実施した技術支援活動をご紹介させて頂きました。

  講演会当日は、さまざまな分野の方々にご来場頂きました。定員523名の会場に対し、ほぼ満席となる時間帯もあり、盛況のうちに閉会することができました。ご来場者からのアンケートでは、「現組織・体制になって以降、社会や世界に向って開かれた土木研究所のイメージが定着した。今後もそのスタンスを維持し、世のため、人のため、尽力していただきたい。」などのご感想を頂くとともに、今後講演会を開催するにあたり、大変貴重となるご意見やご要望も数多く頂きました。

  近年進行する地球温暖化や頻発する自然災害、急速に増加する老朽化ストックなど、緊急に対応すべき課題が山積する中で、最近ではネパール国で発生した大地震、鹿児島県口永良部島新岳の噴火、茨城県、栃木県で発生した「平成27年9月関東・東北豪雨」による水害、土砂災害における現地での技術支援等を行っており、土木研究所が国の内外に於いて果たさねばならない役割は今後ますます大きくなるものと思います。また、土木研究所は、改正独立行政法人通則法の施行により、平成27年4月1日をもちまして、研究開発成果の最大化を目指す「国立研究開発法人」となったところです。これらを踏まえ、土木技術に関する調査研究、技術指導、成果の普及など、これまで以上に積極的に取り組んで行きます。

  本講演会の講演内容をまとめた講演集は、本ホームページの以下のURLより入手可能です。


 http://www.pwri.go.jp/jpn/about/pr/event/2015/1015/index.html


(問い合わせ先:研究企画課)

「土木の日」2015一般公開を開催

写真-1 土石流発生装置の実演


写真-2 水理実験施設の実演


写真-3 橋の撤去部材の説明


写真-4 油圧ショベルの遠隔操作体験


写真-5 防雪林・防雪柵の模型実験


写真-6 働く自動車

  土木の「土」と「木」を分解するとそれぞれ漢数字の「十一」と「十八」となることから、十一月十八日(11月18日)は「土木の日」に制定されています。この土木の日にちなみ、毎年恒例のイベント「土木の日2015一般公開」を11月14日(土)、土木研究所と国土技術政策総合研究所の共催で開催しました。

  この一般公開は、両研究所で「どのような研究を行っているのか」、また「土木とは何か」など、広く一般の方々に土木に関する理解を深めて頂くことを目的として行っています。

  あいにくの雨の中にもかかわらず、947名もの方にご来場頂きました。

  今年の実験施設の公開は、試験走路、舗装走行実験場、波浪実験水路、土石流発生装置(写真-1)、水理実験施設(写真-2)、橋の撤去部材展示(写真-3)、油圧ショベルの遠隔操作体験(写真-4)を行いました。このうち、土石流発生装置の見学者からは「土石流発生のメカニズムを知ることができた」との感想を頂いたほか、水理実験施設の見学者からは「ダムの砂を取り除く力がすごかった」との感想を頂き、油圧ショベルの遠隔操作体験者からは「ショベルカーを僕が動かした!!」といった喜びの感想を頂くなど、各公開施設とも大変好評でした。

  土木に関する様々な体験ができる土木体験教室にも、多くのご参加を頂きました。今年も、北海道の寒地土木研究所から防雪林・防雪柵の模型実験(写真-5)を出展し、見学者からは「防雪林・防雪柵が、どのように道路を守っていたか理解できた」との感想を頂くなど、寒冷地での研究についても興味をもって頂くことができました。

  また、子どもたちにものづくりの楽しさを体験してもらうため、つくば市の小学五年生を対象とした「ボール紙でつくる橋コンテスト」を毎年行っており、今回は29校から340作品の応募がありました。当日はその作品の展示と優秀作品等の表彰式を行いました。これ以外にも、国土交通省関東地方整備局にご協力頂いた「働く自動車」の展示(写真-6)や体験乗車、土木研究所のマスコット「ぞうさん」とのふれあいや、つくば市立吾妻小学校及び吾妻中学校による吹奏楽の演奏、職員有志による和太鼓やバイオリン、バンド演奏など、幅広い年齢層に楽しんでもらえるイベントも開催しました。

  一般公開全体では、来場者から、「わかりやすく説明してくれて、子供も理解することができました」、「雨にもかかわらず、施設の皆様がとても親切で、また来たいと思えるイベントでした」などの意見いただき好評のうちに終える事ができました。

  ご来場頂いた皆さんに土木をより身近に感じ、理解を深めていただける良い機会になったのではないかと思います。

  土木の日一般公開は、研究所にとってその活動内容や土木事業の重要性をアピールする数少ない機会の一つですので、次回もよりよいイベントにしていきたいと考えています。ぜひご期待ください。


(問い合わせ先:研究企画課、総務課)

土木研究所が共同研究で開発した下水汚泥焼却炉が2つの賞を受賞しました

写真-1 国土技術開発賞の表彰の様子


図-1 過給式流動燃焼システムの構成

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図-2 過給機の構成と排ガスや空気の流れ

1.受賞について

  土木研究所が共同研究により開発した下水汚泥焼却炉「過給式流動燃焼システム」が第17回国土技術開発賞の最優秀賞と第41回優秀環境装置表彰の経済産業大臣賞の2つの賞を受賞しました。

  国土技術開発賞は、国土交通省の後援を受けて、(一財)国土技術研究センターと(一財)沿岸技術研究センターが主催し、住宅・社会資本整備もしくは国土管理に係わる新技術を対象として表彰するものです。また、優秀環境装置表彰は、経済産業省の後援を受けて、(一社)日本産業機械工業会が主催し、地球環境保全に資する環境装置を対象として表彰するものです。国土技術開発賞の表彰式では、土木研究所の野口理事が太田国土交通大臣(当時)から表彰状を受け取りました(写真-1)。

  本システムの開発は、国立研究開発法人土木研究所、国立研究開発法人産業技術総合研究所、月島機械株式会社、三機工業株式会社の共同研究により行いました。


2. 過給式流動燃焼システムの概要

  下水道は、都市の健全な発達、公衆衛生の向上、公共用水域の水質の保全に資することを目的に整備されてきており、下水道の普及とともに、下水処理過程で発生する下水汚泥の量は増加しています。発生した下水汚泥の減量化のために、焼却炉が使われており、焼却には大量の燃料や電力が消費されています。

  過給式流動燃焼システムは、流動床炉に過給機(ターボチャージャー)を組み合わせた下水汚泥焼却システムです(図-1)。過給機とは、自動車や船舶等のエンジンに使われる技術で、排ガスの圧力で、過給機内のタービンが回転し、同軸上のコンプレッサで、空気を吸って、圧縮空気を発生させるものです(図-2)。

  本システムでは、過給機を導入して下水汚泥を大気圧よりも約1.3気圧高い圧力下で燃焼させるとともに、従来使われていなかった排ガスのエネルギーを焼却炉への送風に利用しています。そのため、従来のシステムに必要であった送風機と排風機が不要となり、消費電力の大幅な削減を実現しました(図-3)。

  また、本システムでは、加圧燃焼により焼却炉の下部で高温領域が自然に形成されるため、温室効果の高い一酸化二窒素の分解が促進され、従来のシステムより排出量を削減することができるようになりました。

  さらに、加圧燃焼により焼却炉を同処理量の従来焼却炉に比べて小さくできるため、放熱量の減少により、補助燃料使用量を10%以上削減するとともに、設備の設置スペースも縮小することができるようになりました。

  本システムは、平成24年度に初号機として東京都において稼働を開始し、平成27年4月時点で日本各地で4基が稼働しており、さらに、3基が建設中です。

図-3 従来システムと本システムの違い

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(問い合わせ先:iMaRRC)