研究の紹介

高規格道路の舗装の耐久性を向上させる!  ~北海道型SMAの開発~


図-1  北海道型SMAの断面


写真-1  北海道型SMAの表面


写真-2  北海道型SMAの試験施工の一例

1. 積雪寒冷地における高規格幹線道路用表層混合物の開発

  北海道開発局が管理する高規格幹線道路では、高速走行時の安全性を考慮し、排水性舗装が用いられてきました。しかし、長く供用された排水性舗装の区間の多くで、破損が多数発生し、走行性が悪くなったり、その補修のための費用が大きくなるなどの問題が起こってきました。

  そこで、高規格幹線道路に必要な高速走行時の安全性能を確保しながら、壊れにくい耐久性の高い舗装材料である北海道型SMA(砕石マスチックアスファルト)の開発を行ないました。

  図-1に開発した北海道型SMAの断面を示します。上部は粗骨材のかみ合わせによるきめ深さ(凹凸)を有し、排水性舗装に似ています。内部は骨材間隙にフイラ一(石灰岩の粉末)やアスファルトモルタルが満たされた密実な構造を有しており、表面機能と耐久性を併せ持った混合物です(写真-1)。


2. 北海道型SMAの手引き(案)と試験施工

  北海道型SMAの施工の手引き(案)(以下、「手引き(案)」)は、北海道型SMAの普及を図るためにとりまとめられたものです。「手引き(案)」には配合設計の留意事項や必要な試験項目、舗装表面のきめ深さを確保するための施工方法の例示、きめ深さの規格値などが記載されています。「手引き(案)」は寒地土木研究所のホームページからダウンロードが可能となっており、ダウンロード件数は1,800件を越えています (平成28年9月末現在)。

  試験施工(写真-2)で実施された北海道型SMAの3年後の供用性状は、施工時のきめ深さの規格値である0.9mm以上を確保し、骨材の飛散も見られず良好な路面状態を保持しています。


  今後は、試験施工箇所の継続調査による長期耐久性等について検討していく予定です。


(問い合わせ先 : 寒地土木研究所 寒地道路保全チーム)

高頻度河口地形測量による土砂移動メカニズム解明への取り組み(WebマガジンVol.36の続報)

  外洋に面した河口域では洪水による砂州のフラッシュや河口沖への土砂の移動、さらに波浪の作用による砂州の回復と周辺海岸への土砂の輸送によって地形が大きく変動します。このような河口地形の大幅な変動は河口周辺の漂砂環境や生態環境に影響を与えます。地形変動に伴う漂砂環境や生態環境への影響を評価するためには、地形観測を行うことにより、地形変動の特性を十分に理解しておくことが重要です。観測頻度が高いほど地形の変動特性を正確に把握することができますが、河口域の地形観測は通常、公共測量として年1、2回の頻度、もしくはより低頻度で行われているため、河口地形の変動特性については十分に理解が進んでいないのが現状です。

  寒冷沿岸域チームでは、北海道南部の鵡川河口域を対象として、2013年4月から2014年9月までに月に1、2回程度の頻度で河口域の地形観測を行うことにより、河口地形の変動特性を明らかにしました。

  鵡川河口域では、水深0~5m程度の比較的浅い領域において、東側から西側へ土砂が活発に移動する様子が確認されました。全測量期間における東西両領域(水深0~5m)の地形変化量を求めると、東側領域の侵食量は約25.0万m3、西側領域の堆積量は約29.4万m3になります(図-1)。


図-1  1回目の測量結果を基準とした地形変化量(赤:堆積、青:侵食、矢印:河口の中心)


  各測量期間の地形変化量と波浪エネルギーとの関係を評価した結果、東側から西側への土砂の移動は、波向きSE-SSW、波高1.5m以下の波浪が最も強く影響していることが明らかとなりました。鵡川河口域では、波向きSE-SSW、波高1.5m以下の波浪は夏季に多く観測されていることから、夏季の太平洋沿岸に特有なうねりを伴った波浪が地形変化に強く影響した可能性があります(図-2)。


図-2  波向きSE-SSW、波高1.5m以下の波浪のエネルギーと地形変化量との関係


  各測量期間の地形変化量と河川流量(日最大流量の最大値)との関係を評価した結果、流量の増加に伴い、河口幅と西側領域の堆積量が増加することが明らかとなりました(図-3)。


図-3  各測量期間の最大流量と河口幅、西側領域の地形変化量との関係


  今回の観測結果からは河川から海域へ流出する土砂の量を明らかにするまでには至りませんでしたが、今後、河道を含むより広範囲の地形観測を高頻度・高解像度で行うことにより、河川から海域へ流出する土砂の量を明らかにする予定です。


(問い合わせ先 : 寒地土木研究所 寒冷沿岸域チーム)