土研ニュース

平成28年度土木研究所講演会を開催


写真-1 魚本理事長による開会挨拶など


写真-2 村井先生による特別講演


写真-3 太田技術開発調整監による講演


写真-4 金澤橋梁構造研究グループ長による講演


写真-5 竹内寒地農業基盤研究グループ長による講演


写真-6 藤沢土砂管理研究グループ長による講演



写真-7 野口理事による閉会挨拶

  平成28年10月6日(木)に東京都千代田区の一橋講堂において、平成28年度土木研究所講演会を開催致しました。

  本講演会は、土木研究所の研究者による講演を通じ、当研究所が実施している調査研究の成果や研究状況を、それらの分野の動向と絡めて幅広く一般に紹介するものです。また、当研究所の情報発信の重要な場であるとともに新たな連携の発展につなげる場の一つです。

  今回の講演会では、平成27年度で終了した第3期中長期目標で示された4つの目標を達成するために、第3期中長期計画の重点的研究開発課題として取り組んだプロジェクト研究で得られた主な成果の中から、現場で活用できる技術を中心にご紹介致しました。


  まず、魚本理事長の開会挨拶において、平成28年4月1日からスタートした6年間の第4期中長期目標及び第4期中長期計画の概要や、4月の熊本地震、9月の台風10号等による北海道・東北地方の災害現場における土木研究所の技術支援活動などをご紹介致しました(写真-1)。


  特別講演では、東京大学名誉教授で株式会社地震科学探査機構顧問の村井俊治先生に「測位衛星を用いた新しい地震予測の展望」と題したご講演を頂き、平成28年4月16日に本震があった熊本地震の予測と検証を交えながら、先端技術の空間情報を駆使した新しい地震予測への取り組みなどをご紹介頂きました(写真-2)。


  プロジェクト研究成果報告では、「グリーンインフラ」、「ストックマネジメント」、「防災」、「自然共生」の4つの分野において実施した、16のプロジェクト研究の研究成果について報告を行いました。また、併せて熊本地震に関する調査報告も行っております。

  グリーンインフラ分野では、バイオマスを効率的に利用する技術の概要や温室効果ガス排出量の削減効果(写真-3)、低炭素に資する建設材料とその効果や耐久性等の評価など、2件の研究成果をご紹介致しました。

  ストックマネジメント分野では、センサ技術などを活用した従来では検知できなかった変状を把握する技術の開発状況や民間と共同開発した道路橋桁端部用排水装置(写真-4)、道路橋床版、舗装、コンクリート開水路等の機能維持を図る技術開発及び新形式道路構造を対象とした耐震性能評価手法、冬期道路管理の効率性向上技術など、4件の研究成果をご紹介致しました。

  防災分野では、大規模土砂災害に備えるための危険箇所の予測及び対策技術、耐震性能を基盤とした耐震設計法・耐震補強法に関する技術成果、地球温暖化が洪水流出特性に及ぼす影響の評価や短時間急激増水に対応できる洪水予測、吹雪による視程障害の予測及び危険度評価等の対策技術、人工衛星から氾濫水理量を推定する技術を開発しジャムナ・メコン川に適用した事例例など、5件の研究成果をご紹介致しました。

  自然共生分野では、高水敷の環境評価の方法と、この結果に基づく河道掘削時の環境保全アプローチ、河川での土砂移動予測や環境影響評価技術、閉鎖性水域における底層環境の改善による水質改善効果、山地から河口部沿岸域までを一連の流砂系とした浮遊土砂の動態を明らかにした際の各評価結果、北海道の農作物生産に重要な融雪水の流出予測手法及び水産物の生産力向上を図る漁場整備の効果(写真-5)など、5件の研究成果をご紹介致しました。

  熊本地震調査報告(午後)では今年の4月に発生した熊本地震における災害の特徴や土木研究所の対応などについてご紹介させて頂きました(写真-6)。


  講演会当日は、さまざまな分野の方々にご来場頂きました。定員523名の会場に対し、ほぼ満席となる時間帯もあり、盛況のうちに閉会することができました。ご来場者からのアンケートでは、「時宜にかなった問題解決のための技術開発にとり組まれていることに頭が下がります。」、「土木技術の中核的機関としての活動に期待します。」などのご感想を頂くとともに、今後講演会を開催するにあたり、大変貴重となるご意見やご要望も数多く頂きました。

  近年進行する地球温暖化や頻発する自然災害、急速に増加する老朽化ストックなど、土木研究所が国内外において果たさねばならない役割は今後益々大きくなるものと考えております。


  平成28年4月1日から6年間の第4期中長期目標期間がスタートしました。この中長期目標の中では、「安全・安心な社会の実現」、「社会資本の戦略的な維持管理・更新」、「持続可能で活力ある社会の実現」に貢献するための研究開発等に重点的・集中的に取り組むこととしています。これらの「研究開発成果の最大化」に向け、今後とも土木技術の研究開発を推進するとともに、土木技術に関する世界的な中核機関として、国際貢献活動にも取り組んでまいります。

  本講演会の講演内容をまとめた講演集と講演者の発表資料は、こちらから入手可能です。


(問い合わせ先:研究企画課)