研究成果の紹介

「道路トンネル維持管理便覧【付属施設編】」が刊行されました

1.はじめに

  道路トンネルの維持管理に関しては、平成5年に「道路トンネル維持管理便覧」が発刊され、実務的な一助として活用されてきました。その後、平成24年に発生した笹子トンネル天井板崩落事故を契機に、平成26年6月に道路トンネル定期点検要領1), 2)が発出され、平成27年6月に「道路トンネル維持管理便覧【本体工編】」3)が発刊されました。【付属施設編】4)(以下、本便覧)は、【本体工編】に引き続き、道路トンネルに設置される付属施設を対象とした維持管理に関する最新の知見をもとに記載内容の充実を図り、平成28年11月に発刊されました。本便覧はトンネル付属施設の維持管理に関する内容が網羅的に把握できるものとなっています。ここでは主な改訂内容について紹介します。


2.点検手法の詳説

  トンネル付属施設は安全、快適かつ円滑な交通を確保するために設置されています。本便覧では、とくに付属施設の機能や利用者への影響を及ぼす取付状態等の異常に対して、点検により把握し、適切な措置を講ずることを支援する内容について記述しました。中でも、付属施設の故障の発生原因として、設備や部品の疲労、外部からの要因等による異常の状況等については写真等を記載し、その内容が理解しやすくなるように詳述しました。また、道路関係の機械設備や電気通信設備等に関する最新の要領類を紹介し、本便覧で示す点検の種類との関連についても記述し、点検内容の全体が把握しやすくなるように配慮しました。


目 次

第1編 共通
 第1章 総則
第2編 トンネル付属施設
 第1章 概説
 第2章 点検
 第3章 診断
 第4章 措置
 第5章 記録
 第6章 換気施設
 第7章 照明施設
 第8章 非常用施設
 第9章 受配電・予備発電等施設
 第10章 遠方監視制御施設
 第11章 その他の施設
 第12章 清掃
付属資料
1.付属施設点検チェック表の例
2.道路トンネルの維持管理に関する法令・基準類
本便覧の目次

道路トンネル維持管理便覧【付属施設編】
道路トンネル維持管理便覧【付属施設編】
(公益社団法人 日本道路協会、平成28年11月)

3.点検時の留意事項の詳述

  道路トンネルに設置される付属施設を「施設」、「設備」、「装置」、「機器」、「部品」と区分し、装置や設備等について写真とともにその概要を記述し、日常の維持管理に加えて、点検時の理解がより促進されるように配慮しました。また、それぞれの施設は目的や機能・特殊性が異なることから、点検時に留意しなければならない事項ついてもそれぞれ詳述しました。


4.おわりに

  上記以外にも、点検結果の記録に関して点検の判定方法や判定基準を例示した点検チェック表、措置のひとつとして位置づけられている監視に関する考え方、整備に関する最新技術についても、本便覧に記載しました。

  本便覧が今後の道路トンネルの維持管理と安全の確保に役立つことを期待します。


参考文献

1) 国土交通省道路局:道路トンネル定期点検要領,2014.6.

2) 国土交通省道路局国道・防災課:道路トンネル定期点検要領,2014.6.

3) (公社)日本道路協会:道路トンネル維持管理便覧【本体工編】,2015.6.

4) (公社)日本道路協会:道路トンネル維持管理便覧【付属施設編】,2016.11.


(問い合わせ先 : 道路技術研究グループ トンネルチーム)

歩道用雪氷路面処理装置の開発


写真-1 歩道に形成された雪氷路面

写真-1 歩道に形成された雪氷路面


写真-2 開発装置を装着した小型除雪車

写真-2 開発装置を装着した小型除雪車


写真-3 施工前(左)と施工後(右)

写真-3 施工前(左)と施工後(右)

図-1 静摩擦係数値(American Slip Meter計測)

図-1 静摩擦係数値(American Slip Meter計測)

1.開発の目的

  北海道のように冬の寒さが非常に厳しい地域の冬期歩道では、歩行者による積雪の踏み固めや温度変化による融解、凍結の繰り返しにより、凸凹のある硬く滑りやすい雪氷路面がたびたび形成されます(写真-1)。このため、歩行者の転倒事故が多発しており、細かな砕石を防滑材として散布する対策が主に行われています。しかし、その効果は、気象変化によって短時間で消失してしまうことも少なくありません。また、春先には清掃作業が必要です。

  そこで防滑材散布に代わる対策技術として、歩道用の雪氷路面処理装置を開発しました。


2.開発装置の概要

  開発装置は、歩道除雪に使用されている小形除雪車に装着して雪氷路面処理を行うように製作しました(写真-2)。

  丸鋼の先端を斜めに切断した破砕刃を装着した回転体を装置本体の自重のみで路面に押し付け、小形除雪車の推進力で自然回転させることで雪氷を連続的に破砕します。この破砕により、長さ5cm程度以下の雪氷片が多数発生するため、装置後部のブレードで、この雪氷片を歩行帯の左右に排除します。

  装置の駆動に特別な動力を要しないことが、この装置の大きな特徴です。

  雪氷厚さ2cm以下の路面での施工では、舗装路面を傷つけることがあるため、破砕深さを調整出来る機能も装備しています。


3.開発装置による施工効果

  開発装置による試験施工結果を写真-3、図-1に示します。施工により静摩擦係数値が大幅に向上しました。また、凸凹路面での施工では、凸部分をより多く破砕するため、平坦で通行しやすい路面になることも確認しました。

  滑りやすい雪氷路面を破砕するので、多少の気象変化があっても、効果の持続が期待出来ます。


(問い合わせ先 : 寒地土木研究所 寒地機械技術チーム)