研究成果の紹介

2Dレーザースキャナを用いた冬期道路有効幅員の効率的な計測技術

写真-1 路肩の堆雪と道路有効幅員
写真-1 路肩の堆雪と道路有効幅員


図-1 計測イメージ
図-1 計測イメージ


図-2 計測車両と解析画面
図-2 計測車両と解析画面


1.開発の目的

  冬期の道路有効幅員は、路肩堆雪の成長により減少し、交通渋滞を引き起こすなど冬期交通(旅行速度)に大きく影響する要因の一つです(写真-1)。この道路有効幅員と旅行速度の関係を把握することで、渋滞が発生する前に排雪を実施して必要な幅員を確保するなど冬期道路の効率的な維持管理が可能になります。しかし、現状の道路有効幅員の確認は、パトロール等による目視が主で、定量的な把握はほとんど行われていません。そこで、冬期道路の効率的な維持管理に役立てるため、道路有効幅員を効率的かつ安全に計測する技術を開発しました。


2.計測システムの概要

  計測技術は、定量的な計測ができるほか、経済性、効率性及び安全性についても考慮し開発しました。計測機器には、比較的安価でシンプルなシステム構成が可能で、測定対象物にレーザーを照射して距離を測定できる「2Dレーザースキャナ」を採用しました。このレーザースキャナを車両に搭載し道路横断方向の路面や堆雪などの形状を連続計測します(図-1)。また、「GPSセンサー」により計測位置、時間及び走行速度のデータを取得し、同時に「USBカメラ」により、計測箇所の道路状況を撮影します。計測は、走行しながらの行うため、作業員による車道上での計測はなく安全性にも配慮しています。

  道路有効幅員は、専用ソフトウェアにより解析された道路横断面形状から、路面と堆雪や道路構造物との境界を自動で判別し算出します(図-2)。


3.路上測定試験

  同一路線に都市部・郊外部・山間部を有する札幌市内の一般国道において通常走行速度で計測を行い、性能を検証しました。その結果、都市部・郊外部・山間部のいずれも計測データのばらつきは少なく、USBカメラ画像と解析された道路横断面形状(堆雪、歩道等)がほぼ一致していることから、実道における通常走行でも十分に計測できることを確認しました。また、計測誤差についても、最大でも35mm(構内試験)であり、十分な精度を有していることを確認しました。



(問い合わせ先 : 寒地土木研究所 寒地機械技術チーム)

北海道胆振東部地震における地盤災害

写真-1 里塚地区での被災状況
写真-1 里塚地区での被災状況

写真-2 助言に基づき設置された大型土のう
写真-2 助言に基づき設置された大型土のう

北海道胆振東部地震

  2018年9月6日午前3時7分に北海道胆振地方中東部を震源とする地震が発生し、震源地近くの厚真町で震度7が観測されたほか、近傍の安平町、むかわ町で震度6強が、札幌市東区などで震度6弱が観測されました。気象庁によって「平成30年北海道胆振東部地震」と定められたこの地震では、消防庁の発表によると42名の方が亡くなられ、762名の方が負傷されました。また、北海道全域の電力供給がストップする「ブラックアウト」が起き、数日にわたって停電する大災害となったのは記憶に新しいところです。

  寒地地盤チームでは、地震直後から本原稿でご紹介する地盤災害に関する現地調査を開始するとともに、国土技術総合政策研究所やつくば中央研究所と連携し、北海道開発局や札幌市などからの要請に応じて調査や技術指導を行いました。詳しくは、寒地土木研究所月報(平成31年3月)の胆振東部地震特集号をご覧下さい。


札幌市での液状化被害

  この地震では、震源から約50km離れた札幌市でも豊平区や清田区において多くの戸建て住宅に傾斜や沈下、北区や東区において道路の陥没や亀裂などの被害がありました。寒地地盤チームでは、地震当日から調査を行い、札幌市からの要請にも対応しました。写真-1は、大規模な住宅地被害のあった清田区里塚地区の被災状況です。里塚地区の住宅地は、水田として利用されていた狭い谷底部を周辺丘陵地から切土した火山灰で盛土して造成されたものです。調査の結果、この盛土が地震動によって液状化したことを明らかにしました。液状化した土が、その上の地面に噴き出るのではなく、地山の傾斜に沿って横に移動してから、覆った土の厚さが薄い箇所から噴出するという、珍しい液状化現象だったと言えます。


安平町での法面災害

  北海道開発局を通じて安平町役場からの支援要請があり、寒地地盤チームでは、防災地質チームと合同で安平町の宅地地盤、自然斜面、盛土の被災状況調査と応急復旧に関する技術的助言を行いました。安平町周辺は、表層が主に火山灰の丘陵地で、調査の結果、そこでの盛土や自然斜面に表層崩壊が発生したことがわかりました。また、崩壊した法面に住宅が近接している箇所もあることから、雨水が入らないように亀裂をブルーシートで覆ったり、大型土のうによる土砂待ち受け(写真-2)などの応急対策が必要なことも助言したところです。

(問い合わせ先:寒地土木研究所 寒地地盤チーム)