SIPにおけるダムの堆砂対策技術の開発
ダムには上流から絶えず土砂が流入することから,堆砂は避けることが不可避な事象となります。ダムでは100年間この堆砂が蓄積しても機能を確保できるよう,設計において必要容量を確保しています。
しかし,昨今は気候変動による河川流量の増加や極端事象の頻発化により堆積の進行が設計速度を超過し,それに伴う貯水容量の減少や放流・取水設備への影響等の課題が顕在化しています。
そこで土木研究所では他7機関とともにSIP(戦略的イノベーション創造プログラム)において、ダムの堆砂対策に取り組んでいます。
(参考:https://sip-icas-project.org/)
本プログラムでは,堆砂対策に関して,平時からの継続的・経年的な作業が求められる、堆砂対策の必要性判断に必要な「①堆砂測量」,判断に基づき堆砂対策の実施が必要な場合に生じる2つの作業として、洪水調節容量を確保するため高標高部で実施する「②陸上掘削」と,利水・放流設備の機能維持のための「③水中浚渫」の計3分野に着目して開発を実施しています。
このうち、土木研究所は堆砂対策として実施する2つの分野に参加しており,②については,これまで一般的なダムの堆砂輸送手段として用いられてきたダンプトラックやベルトコンベアに代わり,継続的かつ多量に発生する土砂を「効率的に輸送する新たな手法の費用などを含めた適用性」,③については,堆砂が放流設備ゲートに接近し閉塞リスクが高まっている場合の「ゲート付近の堆砂形状を安定的に形成・維持させる目的の補助構造物」について,それぞれ実ダムを対象にし,水理模型実験や数値計算を用いながら検討しています。
今後も令和9年度末のプログラム終了までの間,各機関と連携しつつ,より効率的なダム堆砂対策の実現に向けた取組を進めてまいります。
(問い合わせ先 : 土木研究所 水工チーム)
実物大・実速度の100回繰り返し実験によるゴム支承の耐震性の確認
1.はじめに
近年の大地震では、本震だけでなく、本震相当の強い揺れが何度も繰り返し発生することが指摘されています。そのため、道路橋は繰り返し発生する地震動に対しても機能が損なわれないことが重要となっています。
中でも支承部は、橋の上部構造と下部構造を接続する役割があるため、地震で壊れると落橋につながり得る重要な部分です。(図-1)
そこで最近30年で普及した積層ゴム支承(ゴムを鋼板で補強した支承)の実物大模型に最新鋭の試験機を用いて、実際の地震動相当の力や変形を作用させ、どの程度耐えられるか調べることとしました。
2.この実験実施により期待されること
今回の実験を行うことで、今の設計上のルールで作られた実大のゴム支承が、繰り返される地震動に耐えられるかを確認できます。地震動は何回来るか分からないので余裕を持って本震相当の振幅で100回の加振を行いました。
これにより、橋梁の耐震設計等の改善に役立つデータが得られ、地震後に橋を安全に使い続けられるか判断する材料となります。また、今後設計する橋で安全性を高める指針づくりにつながります。特に強い揺れが連続するケースを想定した実物大実験は世界初だと自負しています。
3.実験概要・結果
実験ではE-Isolationという試験機(写真-1)を用い、小規模橋梁に用いる実大寸法(420mm×420mm×127mm)のゴム支承に対し、地震時の最大変形を想定した揺れを周期2秒で合計100回与えました。
その結果、支承の剛性や減衰などは一定の性能を保持するとともに、100回加振後の表面にはひび割れや膨らみなどの損傷は見られませんでした。(写真-2)つまり、強い揺れが繰り返されても、ゴム支承は機能を保つことが実証されました。
(問い合わせ先 : 土木研究所 構造物メンテナンス研究センター 橋梁構造研究グループ)
大規模地震後の道路橋脚の異常を検出する簡便な手法の確立を目指した研究開発
大規模地震が発生した後、道路橋の供用安全性の判断は、早期に実施することが望ましいです。しかし、損傷が生じる可能性が高い橋脚基部は土中部や水中部にあり、目視による迅速な点検は困難な状況にあります。
そこで、すでに標識柱1)やPC桁2)に対する損傷検知の検討実績のある確率論的なアプローチとして、構造物の振動時の卓越振動、振動モード、減衰をパラメータとした特徴量より、状態変化を検知するベイズ異常検知手法に着目しました。
令和6年度に行ったRC橋脚への適用可能性に関する基礎検討において、(図-2)に示すように基部損傷の進展とともに特徴量の推移が検出されました。
現在、RC橋脚に対する状態異常を検知する手法を令和9年度末までに確立することを目標に、(写真-1)に示すような模型を用いた検討を進めています。さらに、国土交通省北海道開発局の協力の下、実構造物での振動励起手法の検討と振動の計測を実施しています(写真-2)。
図-1
損傷が生じる可能性が高い橋脚基部の位置
図-2
模型橋脚の基部損傷進展に伴う特徴量の変化
写真-1
損傷進展に応じた特徴量を抽出するための試験検討の様子
(左;打撃による振動計測、右;大きな基部損傷が生じた状態の模型橋脚)
写真-2
実橋脚に対する振動の計測
1)市川凌大,五井良直,河邊大剛,高瀬和男,足立幸朗,杉浦邦征:実物大標識柱室内実験における振動データを用いた
疲労き裂検知の検討,構造工学論文集,Vol.69A,pp.467-474,2023.
2)河邊大剛,五井良直,金哲佑:供用下のPC橋梁におけるベイズ異常検知法の適用,コンクリート工学年次論文集,
Vol.43,No.2,pp.583-588,2021.
(問い合わせ先 : 寒地土木研究所 寒地構造チーム)






