ナマコ漁業の未来を支える-小型・軽量・低コスト育成礁のご紹介
1.ナマコ資源の現状と課題
ナマコは日本各地で漁獲されており、その多くが香港・中国・台湾へ輸出されています。2023年の輸出量は344トン、輸出額は169億円(農林水産省「農林水産物輸出入情報」)にのぼり、ナマコは日本を代表する輸出水産物の一つとなっています。
特に漁獲量が全国トップの北海道では、ナマコの輸出額はホタテに次いで2番目に大きく、年間68億円(財務省「令和5年貿易統計」、函館税関「令和5年北海道貿易概況」)であり、地域経済を支える重要な存在になっています。
しかし近年、ナマコの資源量は減少し続けており、北海道の漁獲量も2007年をピークに下がり続けています。資源回復に向けて、各地で人工種苗放流(陸上で人工的にふ化させたナマコをある程度の大きさまで育てて海に放流する取組)が行われていますが、期待された効果は得られていません。
これは、これまで自然の中でのナマコの生態や分布などについての知見が少なく、どのような環境に放流すれば生き残りやすいのかという最適な方法が分かっていなかったためです。
そこで水産土木チームは、海洋建設株式会社と共同で、2016年から6年間にわたり北海道内の漁港で現地調査や実証試験を実施しました。そして、得られた結果をもとに、静穏な漁港水域を活用した、放流種苗の高い生残率を維持しつつ短期間での高成長を実現する中間育成礁「ナマコのゆりかご」を開発・製品化しました。
また、調査の中で、オオヨツハモガニ(カニ類)とケブヤヒメヨコバサミ(ヤドカリ類)がナマコにとって特に危険な食害生物であることを、世界で初めて明らかにしました。
2.ナマコのゆりかご」の特長
開発した「ナマコのゆりかご」には、次のような特徴があります。
(1)生存率の大幅向上
何も対策をせずに1~2cmのナマコ種苗を漁港内に設置した基質に放流すると、半年から1年後の生残率は10%を下回る場合もありますが、防護ネットで外敵(特にカニ・ヤドカリ類)から守られることで、70~100%まで生残率を高めることができます。
(2) 成長しやすい環境づくり
内部にはナマコが付着・生息するための基質としてホタテ貝殻を使用しており、餌となる微生物や有機物がつきやすく、成長を助けます。
(3)さまざまな場所に設置可能
構造を工夫しており、土砂が流れ込みやすい場所や柔らかい海底でも設置できます。
(4)外敵は防ぎつつ、目詰まりしにくい設計
防護ネットの目合いを調整することで、外敵の侵入やナマコの流出を防ぐ一方、浮泥や付着生物などで目詰まりしにくくしています。
(5)小型・軽量で扱いやすい
本育成礁は小さく軽いため、大型クレーンなどの重機を使わず、漁業者自身で設置できます。
3.導入効果と今後
「ナマコのゆりかご」を利用することで、放流後の生残率と成長を大幅に向上させることができ、漁獲量の増大が期待されます。
「ナマコのゆりかご」は北海道・福島町など道内を中心に各地で導入が進んでいます。
https://www.ceri.go.jp/data/files/20251125.pdf
(問い合わせ先 : 寒地土木研究所 水産土木チーム)



