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道路斜面災害は、道路沿いののり面や自然斜面からだけでなく、道路区域外の上方斜面からも発生しています。したがって、道路防災の向上のためには、そのような道路区域外の災害要因まで含めて対応する必要があります。
土木研究所地質チームでは、そのような上方斜面まで含めた道路斜面全体に分布する災害要因を面的かつ的確に評価する技術に関し、道路斜面防災に長じた民間6社と共同研究を実施し、道路区域および周辺斜面の範囲における豪雨時等の異常気象時における道路斜面の災害に対する弱点と対応を示した「道路防災マップ」およびその作成手法について提案してきました(共同研究報告書第350号「道路防災マップ作成要領(案)」)。現在、この道路防災マップを事前通行規制区間の解除・緩和に向けた斜面全体の調査・評価に活用するための検討を行っています。 |
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道路防災マップは、現場における道路管理の効率化や重点化および想定外の災害防止に役立てることを目的とし、道路沿いで発生する災害等を対象に被災履歴や斜面災害の素因を記載し、災害の発生域と被災域を想定することで、道路への影響評価を面的に表示し、道路の弱点箇所と、その対応を一目でわかるように示しています。
道路防災マップの情報は、道路防災総点検結果、日常点検・定期点検結果(防災カルテ点検を含む)、道路管理情報等から構成されています。これらの情報を図-1に示すように、1/5,000程度の地形図に重ね合わせ、斜面ごとに総合評価区分に応じて色分けすることにより、災害のおそれがあり対策の必要な斜面を効果的に示しています。また、道路区域ののり面や斜面だけではなく、道路から分水嶺までを作成範囲とすることにより、上方斜面を含めた斜面全体を網羅しています。 |

図-1 道路防災マップの作成事例 |
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道路防災マップは道路斜面の災害に対する弱点と対応を上方斜面まで網羅して示していることから、道路管理に対して以下の効果が見込まれ、これにより災害の発生する可能性のある斜面を適切に評価できることが期待されます。
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- 道路の弱点箇所を一目で把握することができます。
- 道路斜面の災害要因を面的に網羅することができ、想定外の災害を最小限に防ぐことができます。
- 要注意箇所を地図上で示し、効率的に点検や対策を実施できます。
- 災害対応に必須の情報を付加することで、迅速な災害時対応が可能となります。
- 通行規制区間の解除・緩和を目的とした説得力のある基礎資料として役立ちます。
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