土木研究所 構造物メンテナンス研究センター

「災害脆弱国家・日本」としないための研究

~ 大地震に対する総合対策技術を開発・結集します ~

1995年の兵庫県南部地震において社会基盤施設が甚大な被害を受けて以降、橋の耐震技術に関する進められ,我が国の橋の耐震性も向上してきました。しかし,近年、2004年新潟県中越地震、2008年岩手・宮城内陸地震をはじめとする内陸直下を震源とする大規模な地震や、2011年の東北地方太平洋沖におけるマグニチュード9の巨大地震により,まだ多くの検討課題があることも明らかになってきています。また,首都直下地震、東南海地震等の大地震発生の切迫性が指摘されているなか,このような大規模な地震に対しても安全安心な社会を実現するためには,限られた財政の中で効率的に耐震対策を行っていくための技術が必要となります。そこで、構造物の地震時挙動及び地震時における構造物の抵抗特性・脆弱性をより精緻に評価する技術,これを適切に補強あるいは損傷が生じた場合に迅速に機能を回復するための技術を大きな柱として研究を行っています。

耐震性の高度診断・評価技術

現況の材料劣化や経年損傷状況を適切に評価するとともに、動的挙動、地盤の液状化や流動化が橋としての耐震性に与える影響等、橋全体系の耐震性の高度診断・評価技術のための研究に取り組んでいます。

補強対策技術

限られた資源と時間の制約の下で、最適、かつ、必要最小限で最大効果が発揮可能な、構造物の弱点部のグレードアップを行う技術に関する研究に取り組んでいます。

震災経験のフィードバック~耐震性の高い橋への誘導

震災経験の蓄積に基づくとともに、高度性能評価技術、グレードアップ技術に関する研究成果については、基準化・標準化を図り、新設構造物の合理的な設計にも反映します。

地震後の早期点検・機能回復技術

災害直後の被災地では、地域住民の避難、救援物資の輸送等のために交通機能の確保は不可欠です。地震後に最短時間で被災構造物の機能回復を図るための点検、診断、復旧技術の研究に取り組んでいます。夜間や目視不可能な状況でも被害の有無を発見するための支援システムの研究に取り組んでいます。

東北地方太平洋沖地震における津波による橋の被害を受け、流出した橋及び流出しなかった橋それぞれの挙動メカニズムを水路実験や数値解析等を通じて解明するとともに、支承部の抵抗特性の評価法や津波による影響を軽減させる対策技術の研究に取り組んでいます。

<大規模地震発生後の技術支援>

大規模な地震等により被災した橋梁の調査と復旧を支援することは、CAESARの重要な役割のひとつです。たとえば、2008年6月に起きた岩手・宮城内陸地震の際には、余震の中、橋梁の被災調査を実施しています。また,2011年3月の東北地方太平洋沖地震では,同年8月までに180橋を超える橋をのべ150人以上により調査を行い,津波で被災した橋の復旧方法,津波の影響を受けたが流出しなかった橋の供用可能性の評価,地震動により損傷した橋の耐震安全性の評価及び復旧対策等について技術支援を行いました。