土木研究所 構造物メンテナンス研究センター

コンクリート橋桁端部の腐食環境改善

図-1 桁端部用排水装置の概念図 図-1 桁端部用排水装置の概念図
図-2 開発した桁端部用排水装置(試験施工の事例) 図-2 開発した桁端部用排水装置(試験施工の事例)
図-3 一般的なコンクリート道路橋桁端部の例 図-3 一般的なコンクリート道路橋桁端部の例
図-4 道路橋桁端部の漏水とその影響 図-4 道路橋桁端部の漏水とその影響

桁端部用排水装置は,既設コンクリート橋の側面から桁端部の隙間(遊間)にポリエチレン製またはゴム製の樋状の排水装置を挿入し,伸縮装置から漏水した路面水を橋の側面に排水するものです(図-1).桁端部の止水及び排水状態を改善することで,主桁や下部構造で発生する塩害等の損傷を未然に抑制します.また,橋本体に損傷を加えることなく,かつ橋の側方から設置できることから,交通規制なしに取り付けることが可能です.ただし,遊間は,幅が数センチで,奥行き10数mもありますので,施工可能な桁端部専用の排水装置を開発しました(図-2).また,遊間が発泡スチロール(横桁の型枠に使用)で塞がれていても施工できるように,専用の削孔技術も開発しました.

桁端部(図-3)の漏水による道路橋の劣化が多く報告されていますが,一般道でも凍結防止剤(塩化物)の散布量が増加して,漏水の影響がさらに顕著に厳しくなっています(図-4).このことから,約10万橋に及ぶコンクリート道路橋の漏水を,早期に改善する必要があります.路線単位で一気に漏水対策を普及するためには,交通規制が要らないなど,対策工法が容易である必要があります.

コンクリート橋桁端部用の排水装置の開発は,道路橋桁端部の腐食環境改善技術に関する共同研究(2011~2015年度)の公募を経て,東拓工業(株),(株)ビー・ビー・エムそれぞれとの間で実施しました.

■参考文献
1) 田中良樹,村越潤,飯塚拓英,吉田英二:コンクリート道路橋桁端部の腐食環境調査,第30回日本道路会議,2013.10.
2) 村越潤,田中良樹,藤田育男,坂根泰,田中健司,植田健介:既設コンクリート道路橋桁端部の腐食環境改善への取り組み,土木技術資料,55-11,pp.29-34,2013.11.
3) 植田健介,田中健司,松塚忠政,牧範行:既設PC 箱桁橋における桁端部の腐食環境改善対策,第69回土木学会年次学術講演会, pp.145-146, 2014.9.
4) 田中良樹,村越潤,石田雅博,吉田英二:道路橋桁端部の腐食環境調査~橋台,橋脚の調査事例~,土木技術資料,57-6,pp.36-41,2015.6.

コンテンツ作成:田中良樹
更新日:2021/11/25