土木研究所 構造物メンテナンス研究センター

鋼床版デッキプレート進展亀裂の調査のための超音波技術

(1)鋼床版デッキプレート亀裂の超音波探傷法【技術A】

重交通の鋼床版橋において、目視困難な部位に疲労き裂の発生が確認されています。このき裂はデッキプレートを破断後も舗装下に隠れており、溶接線に沿って長く進展すると、舗装の損傷や路面陥没を引き起こし車両走行に支障を来すおそれがあります。このような事態を防ぐために、このき裂を早期に確実に見つけることが重要です。土木研究所CAESARでは、塗膜上から初期段階の小さなき裂(深さ3mm程度以上)を誤検出することなく検出でき、かつ塗膜上からの探傷結果の信頼性を向上させることを目的として、屈折角を90度に近づけた探触子を使用した超音波自動探傷法を開発しました。この調査技術は、検査技術者の技量差によるき裂の誤検出を極力排除することができます。また、自動探傷機能も備えていることから、探傷結果を位置情報とともに自動記録することが可能です。

(2)Uリブ内滞水調査技術【技術B】

もう1つの技術として、既にデッキプレートを貫通した亀裂が報告された鋼床版橋や同路線上の鋼床版橋での対策実施までの調査・監視をより簡便に実施するための手法であり、亀裂貫通に伴って生じるUリブ内の滞水の有無からデッキ貫通亀裂を間接的に検知する手法を開発しました。調査が簡単であるため、短時間で調査可能です。

技術Aイメージ
技術Bイメージ

■参考文献
1) 村越潤,木村嘉富,高橋実:鋼床版デッキプレート進展き裂の調査のための超音波探傷マニュアル(案),土木研究所資料,第4138号,平成21年3月(2009.3).
2) 独立行政法人土木研究所,菱電湘南エレクトロニクス株式会社,三菱電機株式会社情報技術総合研究所:鋼床版デッキプレート進展き裂の調査のための超音波探傷法に関する共同研究報告書,共同研究報告書,第452号,平成25年3月(2013年3月).
3) 村越潤,木村嘉富,高橋実,木ノ本剛:鋼床版の疲労損傷に対する非破壊調査技術の現場への適用,土木技術資料,第54巻,第5号,平成24年5月(2012年5月).
4) 村越潤,高橋実,木ノ本剛,澤田守:鋼橋における劣化損傷と研究開発,土木技術資料,第55巻,第10号,2013.
5) 高橋実,上仙靖,村越潤,入江健夫:鋼床版橋のデッキ進展亀裂に対する非破壊調査技術の適用事例, 第61巻,第9号,2019.