近年、施工機械・施工機材の能力向上や山岳部での施工事例の増加等により、岩盤を支持層とする杭の設計・施工事例が増加してきています。岩盤を杭基礎の支持層とする場合には、一般に強固で良好な支持層とみなされ、杭の沈下等の不具合が生じることはないと考えられてきましたが、亀裂や風化等の影響などにより沈下等の不具合を起こす事例が散見されています。
また、岩盤を支持層とする杭基礎の支持力機構に関する研究は、載荷試験に多くの費用と時間がかかることや、岩種や風化等によって物性値や支持力が異なることなどから、これまで体系的な研究が実施されておらず、道路橋示方書・同解説 Ⅳ下部構造編においても、杭先端の極限支持力度の特性値の推定式が明確に示されていません。
そして、設計で期待する先端支持力を確実に発揮するためには、岩盤を支持層とする杭基礎において適切な施工法や施工管理を行うことが必要ですが、十分に確立しているとは言えません。
そこで、岩盤の力学特性や杭工法等の条件の違いを考慮し、それぞれの条件において岩盤を支持層とする杭基礎の地盤調査法、設計法及び施工法を明らかにすることを目的とした共同研究を実施しました。研究成果の一部は、R2年度に改訂された杭基礎設計便覧・杭基礎施工便覧((公社)日本道路協会)に反映されました。
■参考文献
1) 今広人,七澤利明,河野哲也:岩盤を支持層とする杭基礎に対する急速載荷試験の適用性の検討,土木技術資料Vol.60 No.10,pp.36-39,2018.
2) 吉田英二,今広人,七澤利明:岩盤を支持層とする杭基礎における急速載荷試験の適用性の検討,基礎工,2019.8.
3) 吉田英二,今広人,谷本俊輔,柳浦良行,浅井健一:岩盤を支持層とする杭基礎の地盤調査法に関する共同研究結果の紹介,基礎工,2019.7.
4) 飯島翔一,吉田英二,谷本俊輔,浅井健一,桐山孝晴:杭先端を支持する岩盤の条件と不陸・傾斜に対する調査法,土木技術資料Vol62 No.5,pp.30-33,2020.