土木研究所 構造物メンテナンス研究センター

腐食欠損の生じた鋼トラス橋部材の残存耐荷力評価に関する研究

高度経済成長期に建設された道路橋ストックの高齢化が進む中、これまでに鋼トラス橋において劣化損傷に伴う重大な損傷事例が報告されています。2007年に、国内の2橋の鋼トラス橋(木曽川大橋、本荘大橋)において、著しい腐食欠損に起因する部材の破断事例が発生し、崩落には至らなかったものの、通行規制が必要となるなど社会的にも多大な損失を与えました。また、海外では、同年に米国ミネソタ州の鋼トラス橋(I-35W橋)が供用中に突然崩壊する事故が発生しました。鋼橋のうちトラス橋、アーチ橋、吊構造形式橋梁といった橋梁形式の主部材は、一部の部材の損傷が橋全体の構造安全性に与える影響が大きく、腐食損傷の程度に応じて適切に耐荷力を評価するための技術が求められています。

本研究では、腐食劣化の生じた鋼トラス橋の耐荷性能評価手法の開発を目的とし、約50年間供用され、著しい腐食損傷により架け替えに至った鋼トラス橋を試験フィールドとして活用し、検討を行いました。撤去前に、荷重車を用いた現地載荷試験を行い橋の全体挙動の把握をするとともに、載荷試験の計測データとの比較等により橋全体系の耐荷性能評価のための構造解析モデル等の検討を行いました。また、撤去部材から切り出したトラス格点部に対して静的載荷試験および弾塑性有限変位解析を行うなどの検討を踏まえ、腐食部材の残存耐荷性能評価手法を提案しました。

検討概要 検討概要
検討対象とした鋼トラス橋 検討対象とした鋼トラス橋
現地載荷試験と構造解析 現地載荷試験と構造解析
腐食したトラス格点部の載荷試験 腐食したトラス格点部の載荷試験
載荷試験結果と解析結果の比較 載荷試験結果と解析結果の比較

■参考文献
1) 腐食劣化の生じた橋梁部材の耐荷性能評価手法に関する共同研究報告書-腐食劣化の生じた鋼トラス橋を活用した臨床研究報告書-
2) 土木研究所資料 第4298号 腐食劣化の生じた鋼トラス橋の現地載荷試験