土木研究所 構造物メンテナンス研究センター

耐候性鋼

耐候性鋼は、鋼材に適量の元素(Cu,Cr,Ni)を添加させることで、鋼材表面に緻密なさび層(保護性さび)を形成させ、さびによって鋼材表面を保護することでさびの進展を抑制し、鋼材の腐食による板厚減少を抑制します(写真-1)。
耐候性鋼橋の点検について、橋梁定期点検要領1)はさびの大きさを目安とする手法、鋼道路橋防食便覧2)はさび外観評点とさびの状態による評価手法が規定されています。外観評点は5段階の評価であり、図-1に示す写真等を参考に、点検員が評価します。この外観評点法は定性的評価手法であるため、点検員の経験等で評価が異なる場合があることが課題3)として挙げられています。土木研究所ではこの課題を解決するため、定量的評価方法に関する研究を進めています。

土木研究所では、耐候性鋼橋の定量的な評価手法について、下記研究を行っています。
①標準計測方法の検討
土木研究所は、定量的評価手法かつ実橋で調査が容易な手法として、さび厚(写真-2)、電位(写真-3)、イオン透過抵抗(写真-4)に着目し、室内要素試験や現地調査を行い、標準計測手法を検討しています。
②さび状態の評価
図-2に示すさび厚とイオン透過抵抗値の関係3)に着目し、さび状態の評価を定量的に可能か検証しています。また、この手法を活用し、将来、保護性さびに進展するのか、異常さびに進展するか、その予測も研究課題として取り組んでいます。

耐候性鋼橋の事例 写真-1 耐候性鋼橋の事例
外観評点法(JSSCテクニカルレポート) 図-1 外観評点法(JSSCテクニカルレポート)
さび厚の測定 写真-2 さび厚の測定
電位の測定 写真-3 電位の測定
イオン透過抵抗の測定 写真-4 イオン透過抵抗の測定
さび厚とイオン透過抵抗値グラフ 判定区分 図-2 さび厚とイオン透過抵抗値の関係(西川の評価区分)

参考文献
1) 国土交通省道路局国道・技術課:橋梁定期点検要領,2019.3
2) 社団法人日本道路協会: 鋼道路橋防食便覧, 2014.
3) 西川ら:イオン透過抵抗法による耐候性鋼橋梁の異常さびの早期検出~定期点検における健全度判定の心理性向上を目指して~,土木技術資料59-4(2017)