土木研究所 構造物メンテナンス研究センター

SFRC

鋼道路橋は大型車交通量の多い路線を中心に図-1に示す疲労亀裂の事例が報告1)されています。鋼床版橋の疲労耐久性の向上を目的に、既設アスファルト舗装を剛性が高い鋼繊維補強コンクリート(Steel Fiber Reinforced Concrete)(SFRC)舗装(図-2)に置換する対策が行われています。平成21年に、土木研究所は「SFRC舗装設計・施工マニュアル(案)」2)を制定し、その対策法の一般化を進めました。SFRC舗装は、既往検討3,4,5)で、対策直後の時期及び対策から一定期間経過した時期に、鋼床版部の応力低減効果が確認されています。
一方で、SFRC舗装は中間支点や主桁の負曲げによるひび割れ(橋軸方向、橋軸直角方向)や乾燥収縮によるひび割れ(橋軸直角方向)が発生する可能性が有ります。そのひび割れから水が浸入し、車両が繰り返し走行することで、SFRC舗装の損傷やSFRC舗装と鋼床版を一体化する接着剤の劣化が進行する耐久性能に係る懸念が課題として挙げられています。

土木研究所では、SFRC舗装の耐久性能について、下記研究を行っています。
①SFRC舗装の耐久性能
SFRC舗装の施工から約15年が経過した実橋にて、SFRC舗装と鋼床版を一体化させる接着剤を対象に、引張接着強度試験を実施し、接着剤の耐久性を確認します(写真-1,2)。
②SFRC舗装の損傷メカニズム
研究所が保有する試験機により、負曲げ疲労試験を行い、SFRC舗装の損傷メカニズムを把握します(図-3)。

鋼床版の疲労損傷事例 図-1 鋼床版の疲労損傷事例
鋼床版の耐久性向上対策(SFRC舗装) 図-2 鋼床版の耐久性向上対策(SFRC舗装)
引張接着強度試験の様子 写真-1 引張接着強度試験の様子
試験後のSFRC舗装断面 写真-2 試験後のSFRC舗装断面
負曲げ疲労試験のイメージ(SFRC舗装) 図-3 負曲げ疲労試験のイメージ(SFRC舗装)

参考文献
1) (社)土木学会:鋼構造シリーズ19鋼床版の疲労,pp.63-75,2010.12
2) (独)土木研究所ほか:鋼床版橋梁の疲労耐久性向上技術に関する共同研究(その2・3・4)報告書―SFRC舗装による既設鋼床版の補強に関する設計・施工マニュアル(案)―,土木研究所共同研究報告書 No.95,2009.10.
3) 山田博道:横浜ベイブリッジにおけるSFRC舗装による鋼床版の疲労低減効果,舗装,pp.10-12,2009.2
4) 児玉孝喜,緑川和由,玉越隆史, 村越潤, 山本洋司,一瀬八洋,大田孝二:大平高架橋の鋼床版におけるSFRC舗装によるひずみ低減効果, 第6回道路橋床版シンポジウム論文報告集, pp.111-120, 2008.6.
5) 山根立行,羽根航,蛭川満,谷村豊:鋼床版上のSFRC舗装による補強効果の持続性確認調査,土木学会第71回年次学術講演会(平成28年9月),Ⅵ-533-534