土木研究所 構造物メンテナンス研究センター

基礎的な情報が失われている老朽橋(RC橋)の健全性診断

健全性の診断において重要な設計や施工に関する多くの情報が失われている老朽橋の診断における留意点の一部を紹介します。

今回紹介する橋梁には、全橋に径間同士の遊間異常と高欄の傾斜やずれが見られました。しかし、出来形の記録がないため、橋台・橋脚位置や橋面の縦横断の測量により橋梁全体の変形状態を把握することとしました。その結果、全ての遊間が適正値に対して短縮しており、高欄は両側共に概ね外に倒れる傾向を示しつつ、各径間の中央付近で高くなっていることが確認されました。

また、ひび割れに傾向や規則性がないか確認した結果、全径間で主桁ウェブ1~2m間隔で発生している縦方向のひび割れは桁下面のひび割れと連続しているものが少ないことや、床版に近い上方向で下側よりもひび割れ幅が大きい場合が多いなどのよく見られるものとは異なる特徴が明らかになりました。これは荷重要因や出来形の傾向からは考えにくい変状です。

他にも桁や床版の各部から試料を採取して材料試験を行った結果、アルカリ骨材反応を発症しており、床版や桁の上面側で部材の膨張が進行しつつあること、床版下面では桁や床版上面から進展しているひび割れや部材変形の影響が複合している可能性が高いと考えられました。

以上のように、現時点の情報を様々なスケールで取得し、情報不足を補うことで老朽橋でも適切な診断に繋げられる可能性があります。

写真-1 橋梁全景 写真-1 橋梁全景
写真-2 高欄の傾斜 写真-2 高欄の傾斜
写真-3 主桁のひび割れ 写真-3 主桁のひび割れ

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基礎的な情報が失われている老朽橋(RC橋)の健全性診断、土木技術資料、Vol.58、No.10、pp.49-50、2016.