土木研究所 構造物メンテナンス研究センター

鋼部材の疲労亀裂について 鋼製橋脚隅角部編

鋼製橋脚隅角部は、複雑に組み合わされる鋼板の溶接線が輻輳し溶接施工時の姿勢にも制約が生じやすいなどから良好な溶接品質の確保が難しく、また、その形状的特徴から溶接線の応力状態が複雑となるだけでなく、位置によっては大きな応力集中を生じやすいなど疲労環境は一般に厳しくなります。隅角部に特殊な構造が使われていることも寄与して発生した亀裂に対して、措置方法等について技術支援を行いました。

亀裂発見後は梁部崩壊の危険性を完全には否定できないことから、緊急措置として直ちに仮支柱を設置して安全を確保する一方、他橋脚も含め緊急調査が実施されました。

詳細調査では、図面や外観確認だけでなく、仮支柱で梁を完全に支持できることを確認したうえで小径のコア抜きを行って構造の確認が行われました。その結果、柱と梁の接合部に疲労耐久性が著しく劣ると考えられる特殊構造が使用されていることがわかりました(図-1)。

対策は、荷重車走行試験で橋脚の応力特性を確認したうえで、その結果を踏まえFEM解析モデルを構築して設計や種々の試算を実施し、梁全体を補強ブラケットで下から受ける構造としました(図-2)。また、対策後は、計測により効果を確認したうえで、経過観察により未除去の亀裂の進展や新たな亀裂の発生等に注意を払っています。

鋼製橋脚隅角部は、外観だけから接合構造の詳細を推定することは困難であり、疲労亀裂に対する緊急性の判断や補修・補強工法の検討にあたっては、十分な調査で接合部の詳細を明らかにすることが不可欠です。また、点検や調査においては、接合部の詳細からどのような位置に亀裂が生じやすいかを考慮して行うことが重要となります。

図-1 特殊構造が採用された柱-梁接合部詳細図 図-1 特殊構造が採用された柱-梁接合部詳細図
図-2 ブラケット補強(左:補強前 右:補強後) 図-2 ブラケット補強(左:補強前 右:補強後)

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鋼部材の疲労き裂について(その2)-鋼製橋脚隅角部-、土木技術資料、Vol.51、No.12、pp.41-42、2009.