研究の紹介

コンクリート構造物の非破壊・微破壊試験 〜鉄筋の位置とコンクリート強度を検査〜


鉄筋位置の測定イメージ図


レーダによる鉄筋位置の測定


小径コア

 コンクリート構造物にとって重要な検査は、コンクリートの中にある鉄筋の位置と、コンクリート強度です。鉄筋はコンクリートの表面からある程度の深さの位置にないと、塩害で錆びてしまいます。また、95年の阪神淡路大震災以降、構造物に鉄筋を増やす設計になったため、従前の大きな破壊検査では鉄筋を傷つけてしまいます。このため、構造物が完成すると、設計どおりに造られているかどうかや、強度を確認する「検査」を行います。
 検査する方法は、できるだけ構造物に傷をつけないように非破壊試験または微破壊試験が必要となりますが、一方で検査として用いる場合、一定の測定精度も要求されます。基礎材料チームでは、検査にあたっての構造物の損傷を最小限にとどめた上で、測定精度を高めることを目指した検査法の研究開発に取り組んでいます。 これらの非破壊・微破壊試験による検査方法の一例を紹介します。
 非破壊試験の一例として、レーダによって鉄筋の位置を調べる方法を紹介します。
 飛行機の位置を確認するためにレーダが使われていることをご存知の方も多いと思います。電磁波の反射を利用して位置を知る方法がレーダ法です。
 コンクリートの中にある鉄筋の位置を確認する方法も同じ方法を使っています。レーダ装置をコンクリート表面で走らせると、鉄筋で反射された電磁波が受信されます。この波の形からコンクリート中の異物(鉄筋)があることがわかります。また、電磁波を発射して鉄筋から反射して返ってくるまでの時間を測定することによって鉄筋の位置を知ることができます。ここで重要なのが、電磁波の速度です。飛行機は空気中を飛んでいるので、電磁波の速度は光と同じ300,000km/秒です。コンクリート中の電磁波の速度は、コンクリート中の水の量によって変化します。そのため、コンクリート中の電磁波の速度を求める方法を研究しました。
 次に微破壊試験の一例として小径コアを紹介します。コンクリート強度は、コアを切り取って、圧縮試験をして求めます。これまでは直径が100mm、長さ200mmのコアを採取していました。最近は、写真中央の直径25mm、長さ50mmの小径コアや、右の直径10mm、長さ20mmの超小径コアでも強度試験ができるようになりました。写真左は直径50mmのコアです。これまでは、この2倍のコアを採取していたので、(超)小径コアによっていかに傷つけるのが小さくできるかがよくわかると思います。
 なお、試験実施にあたっての留意事項や実施要領については、土木研究所のホームページにも掲載されておりますので、詳細はそちらもご参照ください*。
*  鉄筋位置に関しては、
http://www.pwri.go.jp/jpn/seika/conc-kaburi/conc-kaburi.html
  コンクリート強度に関しては、http://www.pwri.go.jp/jpn/seika/conc-kyoudo/conc-kyoudo.html

(問い合わせ先:基礎材料チーム)

コンブ藻場を保護する取り組み

     

写真-1(a) ウニを放置した場所(1998年6月)

写真-1(b) ウニを除去した場所(1998年6月)



写真-2 人工動揺基質へのコンブの繁茂状況
(2007年6月)

 北海道のコンブ藻場は、全国のコンブ供給量の8割以上(H18北海道農林水産統計年報)をもたらす貴重な漁場です。また、ウニやアワビ等の磯根生物の餌場となり、魚類の産卵場、甲殻類の蝟集や稚仔魚の隠れ家となる保護・育成機能を有しており、豊かな海の環境を創り出しています。ところが、北海道の特に南部日本海側の岩礁域では藻場が衰退して白くなる「磯焼け」と呼ばれる現象が進行し、深刻な問題となっています。こうなると、コンブが採れなくなるだけでなく、ウニの身入りもなく、産卵場も無くなって魚類資源も減少し、海の豊かな生物生産性が失われてしまいます。
 当地域の磯焼けの大きな原因の一つとして、キタムラサキウニの食害が考えられています。試しに、磯焼け地帯でウニを除去してみると、藻場が復活(写真-1(a)(b))することがわかります。コンブがある程度の大きさまで成長すると、ウニが食べてもそれ以上の速さで伸びるので問題はありませんが、ここでは冬〜春季に発芽したコンブの芽をウニが根こそぎ食べてしまうので、コンブが全く生えない状況になってしまうからです。そこで水産土木チームでは、海藻の幼芽をウニから保護し、藻場を形成する手法として人工動揺基質の研究を進めてきました。人工動揺基質(右図)とは、波によって動揺するポリエステル生地にウレタンコーティングを施した柔軟性のある素材のプレートであり、その動揺によってウニの侵入防止を期待するものです。ウニは動揺するプレート上に侵入できないため、プレートに着生・発芽した海藻の幼芽は摂餌されずに成長し、夏季には成長した海藻が自重で垂れ下がり、ウニが摂餌可能になることを期待するものです。
 日本海に面する北海道松前町の江良漁港に設置した人工動揺基質周辺(写真-2)において調査したところ、3月に海藻の幼体が確認され、6月には人工動揺基質に海藻が繁茂していました。このとき、対策をしていない周辺の天然岩礁や沿岸構造物は磯焼け状態であり、人工動揺基質の効果が確認されました。今後は、磯焼けに悩む他の地域にも応用できないか、いろいろ試してみる予定です。

(問い合わせ先:寒地土木研究所水産土木チーム)