土研ニュース

マレーシア公共事業省ズィン大臣来訪


質疑応答(中央)ズィン大臣

理事長とズィン大臣の握手

 平成20年6月4日に、マレーシア公共事業省のズィン大臣、在日マレーシア大使館のラジィ特命全権大使他、総勢16名の一行が土木研究所を訪問し、意見交換を行いました。マレーシアは、面積約33万平方キロメートル(日本の約0.9倍)、人口2,664万人の、製造業(電気機器)、農林業(天然ゴム、パーム油、木材)及び鉱業(錫、原油、LNG)を主要産業とする国です。
 今回の訪問は、在日マレーシア大使館を通じて、マレーシアでの土木技術に関する研究機関を設立する構想の実現に向け、大臣自らが土木研究所を視察して勉強したいとの申し入れがあったことから、実現したものです。
 意見交換では、土木研究所の政府との関係、人事交流、研究テーマの選定、研究資金などについて活発な質疑応答が行われました。研究テーマについては、マレーシア側からは、環境、交通問題、ITS、構造物等、幅広い分野に関心を持っており、新設する研究所では公共事業に関わる高い視点からの調査研究を実施したいと考えているとの話がありました。
 また、マレーシアでの研究機関の設立に向けて協力の申し入れがあり、土木研究所からは情報提供等、今後必要な協力を行っていくことを伝えました。
 最後にズィン大臣と坂本理事長が固い握手を交わして、和やかなムードの中、意見交換は終了しました。


(問い合わせ先 : 研究企画課)

ユネスコIHP政府間理事会に出席

     

会議の様子(ユネスコ本部会議室)

協力協定調印後握手するIHE(オランダ)のメガンク学長(右)とICHARMの竹内センター長。後はユネスコのソロシナジー水科学部長

 6月9日から13日にかけて、ユネスコIHP(International Hydrological Programme:国際水文計画)の第18回政府間理事会がユネスコ本部で開催され、日本を含む理事国36カ国、非理事国41カ国及び国際機関等23からの参加がありました。ICHARMからは、日本ユネスコ国内委員会委員の竹内センター長と寺川水災害研究グループ長が日本代表団の一員として出席しました。
 IHPは、水循環の科学的研究、水資源の持続可能な管理に関する研究・提言及び途上国における人材育成の推進を目的としたさまざまなプロジェクトを参加各国政府の協力のもとで実施する枠組みであり、ユネスコ水科学部が事務局を担当しています(IHPのホームページ:http://typo38.unesco.org/index.php?id=240)。政府間理事会は2年に1回開催され、IHPの活動状況、今後の方針及び他の国際機関や非政府機関との連携・協力等について、報告、討議を行うことを目的としています。
 会議では、主要な議事のひとつとして、2008年から2013年を計画期間とするIHP第7期計画について議論され、(1)河川流域や地下水システムの変化への適応 (2)持続可能な水管理のためのガバナンス強化 (3)持続可能な流域管理のための生態水文学 (4)生活を支える水管理 (5)持続可能な開発のための水教育 を柱とする計画の実施が承認されました。ICHARMを含むユネスコ水センターはこの計画の実施にあたって中核的な役割を担うことになっています。
 新たなユネスコ水センターの設立については、トルコ、ブラジル、カザフスタン、ドミニカ、アメリカ、ドイツ及びポルトガルの7カ国から提案があり、参加各国の支持を得て、今後ユネスコ総会での承認に向けた準備手続きを進めることになりました。特にアメリカ政府から提案のあった「統合水資源管理のための国際センター」(米国陸軍工兵隊水資源研究所内に設置予定)と、ドイツ政府から提案のあった「水資源と地球規模変動に関する国際センター」(ドイツ連邦水文研究所内に設置予定)は、ICHARMが担当する水災害リスク管理にも密接に関連することから、今後の連携推進が望まれます。ちなみに米国陸軍工兵隊水資源研究所とICHARMは、2006年6月に包括的な協力協定を締結しています。
 また、初日の午前議事終了直後、昼休み時間帯を利用して、参加各国が見守る中で、ICHARMとオランダのデルフトにあるIHE(水教育研究所)及びイランのテヘランにあるRCUWM(都市の水管理に関する地域センター)との包括的な協力協定の調印式が行われました。今後、本協定に基づいて、研修講師の相互派遣や共同研究の企画・実施等、順次進めていくこととしています。

(問い合わせ先 :ICHARM)

   

北海道洞爺湖サミット記念 環境総合展2008(その1)〜洪水を予測するシステムを展示〜


札幌ドーム

説明の様子
熊本市の技術者との情報交換
IFASシステム説明図

 6月19日(木)から21日(土)にかけて北海道札幌市の札幌ドームにて「北海道洞爺湖サミット記念環境総合展2008」が開催され、最先端の環境技術や製品など環境問題に対する取組の展示、体験イベントなどが行われました。土木研究所ICHARMでは、国土交通省河川局、(社)国際建設技術協会と共同で出展を行い、ICHARMの研究活動などについてPRを行いました。
 近年、世界の水関連災害が増加しており、その犠牲者はアジアが全体の83%を占め、重大な人的損失は発展途上国に集中しています。また、地球温暖化が引き起こす気候変動や海面上昇により、暴風雨の規模や発生頻度が増加することも予測され、水災害リスクはよりいっそう高まると思われます。河川整備が十分でない諸国においては、災害時における住民避難等が確実に行われることが重要です。このためには、ハザードマップ等による危険性の周知や、洪水予警報の発令による避難の有無の判断が必要となります。しかし、費用的な問題や降雨情報の不足等の理由により、洪水予警報システムの整備が十分に進んでいない状況にあります。
 このような背景の中で、世界の水災害を防止するためにICHARMが実施している研究開発や、人材育成のための研修などについて概要説明を行いました。また、水文チームの主な研究として人工衛星降雨データを用いた洪水予警報や、発展途上国の洪水災害軽減を支援するための総合洪水解析システム(IFAS)についてのデモンストレーションを行いました。総合洪水解析システム(IFAS)は、人工衛星による雨量データを利用することができ、標高データや土地利用データを用いて流出解析モデルを自動作成する機能を有していることから、水文データなどが乏しい地域においても洪水予警報の発令に必要な流出計算が可能になると思われます。
 環境総合展では、開催期間の3日間で8万人をこえる方々が来場され、多くの方々にICHARMの活動内容についてPRをすることができました。



(問い合わせ先:ICHARM水文チーム)

   

北海道洞爺湖サミット記念環境総合展2008(その2)〜河川環境、水産資源、バイオマス〜


蛇行河川模型の展示

バイオガス室内発酵試験装置の展示


別海バイオガスプラントでの循環利用

 この環境総合展は、地球環境というグローバルな課題をテーマに、道内外の333の企業や行政、研究機関等が最先端の環境問題への取り組みを展示するものです。展示ゾーンは「環境啓発・エコライフゾーン」「バイオマス&新エネルギー・省エネルギーゾーン」「環境技術・コンサルティングゾーン」「廃棄物処理・リサイクルゾーン」の4つに分けられ、地球温暖化対策をはじめとする最先端の環境技術・製品・サービスが紹介されました。
 寒地土木研究所は北海道開発局と連携して「環境イニシアティブ」のコンセプトの基、環境問題に積極的に取り組んでいる寒地河川チーム、水環境保全チーム、水産土木チーム、資源保全チームが参加しました。
 寒地河川チームと水環境保全チームは「蛇行復元等による多様性に富んだ河川環境の創出と維持の手法の開発」をテーマに模型やパネル展示を行いました。「自然復元型川づくり」が一目で分かる蛇行河川模型は大盛況であり、研究員は次々に訪れる来場者への説明に追われていました。
 水産土木チームでは「寒冷地港内水域の水産生物生息場機能向上と水環境保全技術の開発」をテーマにヤリイカ産卵礁機能付被覆ブロック模型とパネル展示を行いました。
 資源保全チームでは「バイオマスの肥料化・エネルギー化技術の開発と効率的搬送手法の解明」をテーマに室内発酵試験装置やパネル展示等を行いました。近年関心が高まっているバイオガスだけに、「バイオガスプラントって何?」「この機械は何をするものなの?」といった質問が一般来場者から数多く寄せられ、世間の関心の高さを知ることができました。


(問い合わせ先 : 寒地土木研究所企画室)  

   

つくばちびっ子博士 〜高速走行体験と建設ロボットのデモンストレーション〜

  

バンクの傾斜を体験

重力と遠心力が赤い矢印でつり合う


建設ロボットと掘削状況を間近で見る

 毎年開催している「つくばちびっ子博士」を7月25日に、つくば市及び国土技術政策総合研究所と合同で実施しましたので紹介します。
 6回の見学バスの運行で、全部で大人・子供合わせて348名(昨年296名)の皆さんに見学して頂き、過去最高を記録しました。見学バスは、国土技術政策総合研究所本館前から試験走路に入り、舗装走行実験場に駐車した赤い無人荷重車を見ながら南ループへと向かいました。
 南ループのバンクの傾斜に実際に登って子供たちに急な角度を体験してもらいました。大人にしてみれば何とも思わない傾斜でも、子供たちは何度も上下に往復して走り回り、バンクは子供にとって楽しい遊び場となったようです。この傾斜は27°で半径223mのカーブのため、曲がる時に時速120kmで走行すると遠心力と重力がつり合います。このことを実際にバスの高速走行で体験してもらうと車内から歓声が沸き起こりました。
 その後、建設機械屋外実験場に向かい建設ロボットのパワーショベルについて先端技術チームによる説明とデモンストレーションを見てもらいました。
 このロボットはWebマガジン第4号の土研ニュースでも紹介しましたが、今年6月に発生した岩手・宮城内陸地震後の復旧作業でも活躍している遠隔操縦による建設機械の次世代型として研究が進められているものです。自動で施工する技術の研究として、パワーショベルの掘削・積み込み作業の自動化を目指したロボット建設機械によるIT施工システムの基盤技術の構築を目的としたものです。現在までに、IT施工システムのプロトタイプの製作、検証実験を実施しています。
 パワーショベルでの掘削は人間が操作しても素人では難しく、プログラムされたとおり掘削をロボットが自ら動作状況を確認しながら丁寧に掘削していくデモを子供たちに見てもらい、その後、掘削結果やショベルを間近で見てもらいました。
 30℃以上の暑さで子供たちもバテ気味でしたが、子供たちから「こういうロボットなら作ってもいいと思った。」「無人で動くのは凄いと思った。」等の感想がありました。このロボットパワーショベルのデモや説明する模様は、NHKからも取材され、水戸放送局の地上波デジタル限定のニュース番組「首都圏ネットワーク」で放送されました。

(問い合わせ先:総務課)


   

元土木研究所研究員、李参熙(イー・サンミ)氏が韓国国民褒章を受章


受章したイー・サンミ氏(右はキム夫人)

再生前の状態(良才川 ソウル区間)


再生後の現在状態(良才川 ソウル区間)

 6月5日、元土木研究所特別研究員(現韓国建設技術研究院責任研究員)李参熙(イー・サンミ)博士(47)が、韓国における河川再生の先駆者としての数々の功労が認められ、李明博(イー・ミョンバク)大統領により国民褒章を受章しました。同章は韓国の憲法に基づく名誉あるもので、河川技術者が栄誉を勝ち得たことになります。土木研究所で学んだ河川自然再生の理論と実践技術を韓国に初めて適用し、その有効性を実証した成果が高く評価されました。
 イー・サンミ氏は1995年に韓国の都市河川再生の嚆矢(こうし)となる良才川(ヤンジェ・チョン)の復元計画を立案し、その後の多くの河川再生事業において計画、研究の両面からこの分野を牽引してきました。以前の典型的都市河川の直線流路と比較して、景観的にかなり改善されて観察される魚類も増え、またサイズも大きくなっているそうです。一連の氏の活躍は韓国の河川行政に大きな影響を与え、河川環境に対する市民の意識を大きく高めるものとなりました。名実ともに韓国の「自然親和的河川技術」(日本の河川再生、多自然川づくりに相当)の第一人者です。有名なソウル市の清渓川(チョンゲ・チョン)の河川再生もこれらの動きを受けて実施され、氏も計画段階において重要な役割を果たしました。これらの業績により今回の受章となりました。
 また、同氏と土木研究所(現国総研を含む)との関わりは深いものがあります。氏は1992年にJICAの研修生として土木研究所に滞在し、多自然型川づくりについて多くを学びました。その後、さらに日本において河川環境技術を学ぶために筑波大学との連携大学院制度を利用して、1995年に再来日しました。土木研究所の河川研究室および河川環境研究室において、多摩川の河川環境について研究を実施し、1999年に博士号を取得しました。「日本で学んだ技術・考え方が今回の受章につながった。土木研究所をはじめ、日本の皆さんには本当に感謝している」と氏は語っています。



(問い合わせ先:総務課)

   

平成20年(2008年)岩手・宮城内陸地震における対応について


道路の被害実態調査

ダムの安全性確認(石淵ダム)


宮城県栗原市荒砥沢地区における土砂災害の
状況

 平成20年6月14日、岩手県内陸南部を震源とする、マグニチュード7.2の地震が発生し、岩手県奥州市、宮城県栗原市では、最大震度6強の揺れが観測されました。この地震により、道路や橋梁の損傷、斜面崩壊、河道閉塞等の被害が多数発生しました。これらの被害に対し、土木研究所では、国土交通省や地方自治体からの要請を受け、地震発生直後より職員を派遣し、被害実態の現地調査や復旧方策等の技術的な支援を行っています。
(1)道路
 道路関係の施設については、6月15日から25日までの間に延べ34名の職員を派遣し、国道342号祭畤大橋、国道342号や国道397号周辺の道路土工・道路斜面、国道397号胆沢トンネル、県道42号新玉山トンネル、県道49号周辺の地震断層等の現地調査を行いました。
(2)ダム
 ダムについては、6月15日、16日、28日に延べ5名の職員を派遣し、石淵ダム、皆瀬ダム、上大沢ダム、小田ダム、荒砥沢ダムの調査を行い、ダムの安全性の判断や対応方策立案に向けての対応方針等に関する技術的な支援を行いました。
(3)砂防
 砂防分野については、6月15日から7月16日までの間に延べ60名以上の職員を派遣し、土砂災害危険箇所の緊急点検、行方不明者の捜索活動の支援、多発した河道閉塞箇所の監視体制等に関する技術的な指導・支援を行いました。



(問い合わせ先:研究企画課)

   

平成20年度の土木研究所の研究評価について

      

研究評価フロー

研究期間5年の事例

外部評価委員会審議の様子

 研究所の研究活動を効率的・効果的に実施し、研究成果を社会に還元させるため、透明性の高い評価の仕組みを構築し、評価結果をその後の研究開発に積極的に反映させることが必要です。このため、土木研究所では、独立行政法人が真に担うべき研究に取り組むとの観点から、研究開発の要否、実施状況・進捗状況、成果の質・反映状況、研究体制等について、事前、中間、事後の各段階で研究開発内容の評価を行っています。
 評価は、研究所内での内部評価、大学、民間の研究者など専門性の高い学識経験者による外部評価に分類して行われ、内部評価委員会、外部評価委員会の各分科会、外部評価委員会の流れで審議の積み上げが行われます。内部評価委員会は年2回、外部評価委員会及び各分科会は年1回の開催を基本としており、今年度は内部評価委員会を4〜5月に渡り延べ6日間、外部評価委員会の分科会を同じく4〜5月に渡り延べ8日間、そして外部評価委員会を6月24日に実施しました。
 平成20年度は5カ年ある中期計画期間の3年目で中間年にあたるため、研究の中間評価を受けるほか、事前評価、事後評価および、変更に伴う中間評価を実施しました。
 外部評価委員会では、各分科会での評価結果報告とそれに対する審議が行われましたが、評価委員からは、研究の方向性や研究成果の活用、人材育成などについて多岐にわたる様々な意見、コメントがだされました。最後に、土木研究所研究評価委員長である京都大学田村武教授より「研究については順調に進捗しており、本委員会、分科会の評価議論を踏まえ進めて欲しい。全体として土木研究所のアクティビティは非常に向上している。」との講評を頂きました。



(問い合わせ先:評価・調整室)

   

寒地土木研究所一般公開を開催しました


液状化模型実験実演  毎年人気の蛇行復元模型

(左)ランブルストリップス体験コーナー
(右)土の水はけ・水もち実験



大好評だったクイズラリー


寒地機械技術チーム       地震動体験  

 毎年恒例の寒地土木研究所一般公開を7月4日(金)、5日(土)に開催しました。「のぞいてみよう!暮らしを守る北の知恵」をテーマに14の研究チームと1ユニットが趣向を凝らした公開を行い、約1,600名の来場がありました。
  《体験・実演プログラム》
 今年も各チームで体験・実演プログラムを行い、多くの来場者に参加をしていただきました。「液状化模型」では土で出来た模型をゆらすことで、地震時に土が液状となる様子を再現しました。「蛇行復元模型」では、なぜ蛇行した川をわざわざ直線化する必要があったのかという素朴な疑問に答えました。正面衝突事故対策として普及が進んでいる「ランブルストリップス」の体験コーナーでは、実際に乗用車で走行し、その効果を実感してもらいました。「土の水はけ・水もちを確かめてみよう」では、ペットボトルを2本用意して1つには粘土を、1つには砂を入れて水を流し込むことにより、農業に適している土壌について説明しました。
 それ以外にも多くの体験・実演プログラムを実施し、来場者から好評を博しました。
  《クイズラリー》
 14の研究チームと1ユニットで、それぞれの研究内容に関係するクイズを用意し、クイズラリーを実施しました。クイズには難しいものもありましたが、チーム等の公開施設や公開パネルの中にヒントが隠されており、500名近くの方が全問正解されました。全問正解された参加者には、「寒地土木博士」の認定証が授与されました。
  《その他》
 上記以外にも除雪機械や観測車の展示や、パソコンを使ったデモンストレーション、パネル展示、ビデオ上映などを行い、研究内容について理解を深めてもらいました。

 団体見学として、土木系高等学校、専門学校のほか小・中学校、幼稚園からも来ていただきました。また、近接の一般住民も方々も多数来場され、たくさんの方々に当研究所について知っていただくことが出来ました。

(問い合わせ先:寒地土木研究所 企画室)