研究の紹介

遠心力を用いた岩盤斜面の崩落実験


左:第2白糸トンネル崩落
右:えりも町斜面崩落(北海道開発局提供)

遠心力載荷装置

本実験は、所定の位置に設定した切欠きを有する模型供試体について、模型の重さや水圧の影響により破壊に至らせるもので、これにより危険な岩盤斜面の評価法を提案しています。

 北海道では、1996年の豊浜トンネル崩落、1997年の第2白糸トンネル崩落や2004年のえりも町の岩盤斜面崩壊など岩盤崩壊が相次いで起こっており、国民の生命・財産を脅かし、道路の通行止め等で国民の生活に不便を強いています。寒地土木研究所では、このような岩盤斜面災害を少しでも軽減するため、遠心力載荷装置を用いた模型実験による岩盤斜面の研究を進めています。遠心力載荷装置とは、模型を設置させて回転することにより模型内に遠心力を発生させる装置です。
 さて、わざわざ遠心力載荷装置を使って実験を行うのはなぜでしょうか?実は、実斜面と同じ材料で模型を作っても、模型斜面にかかる荷重ははるかに小さいため実斜面と同じ危険度にはならず、実際の現象を再現できません。実斜面と同じ危険度の模型斜面を作るには、強度はそのままではるかに重い材料で模型斜面を作るか、実斜面と同じ大きさの模型を作る必要があります。しかし、実物大の模型を作るのは現実的ではありません。
 模型斜面に遠心力を加えると、模型斜面の重さが大きくなります。すなわち、遠心力載荷装置により、模型斜面に重力の代わりに遠心力を作用させることで実斜面と同じ状態を再現することが可能となるのです。この原理を利用したのが遠心力模型実験です。
 この実験では、小さな模型斜面を遠心力載荷装置に設置して、実物と重さが等しくなるように遠心加速度を与えます。本装置では、重力の最大100倍の遠心力を与えることが可能です。そのときの回転数は1分間に169回転(有効回転半径3.5m)です。本研究では、この実験装置を用いて岩盤崩落に関する様々な条件での実験を行い、現象を解析しています。現在、遠心力模型実験を用いた岩盤斜面の安全率評価法を構築し、危険斜面の判別とその対策法に貢献しようとしています。



問い合わせ先:寒地土木研究所 防災地質チーム

積雪量を量る!
 〜 積雪寒冷地域における融雪流出特性に関する研究 〜


積雪重量計設置状況(1m×2mステンレス製)

積雪・融雪計測システム

積雪密度の連続的な計測

 我が国で代表的な積雪寒冷地域である北海道では、年間降水量のおよそ半分を降雪が占めており、貴重な水資源となっています。一方で、近年の温暖化による融雪時期の早まりや春先の大雨等にみられる気候の変化により、今後の水不足や洪水被害などの影響も心配されております。
 これらのことから、今後の気候変動を考慮した融雪出水の安全な利用、および管理に関する評価手法の開発が必要とされております。
 寒地土木研究所では、融雪に関する基礎的な情報を得るために、単位面積当たりの雪の重さを直接計測できる積雪重量計を使って、対象とする流域内の積雪量の調査を行い、積雪・融雪の基礎的なメカニズムを解析しています。
 これまで、積雪量を把握するための調査は厳冬期である2月から3月にかけて行われていました。また、人が直接現地に出向くため多大な労力を必要とすることや、安全面から得られる情報は限られておりました。そこで積雪重量計を用いて安全で効率的な調査ができないかを検討しています。これまで2005年12月から2008年5月の積雪期間に積雪重量と積雪深の計測を行っており、これにより積雪密度と積雪深の変化を捉えることが出来ました。

・積雪初期には降雪による堆積と圧密が繰り返され、徐々に積雪量が増加していく特徴(過程T)、
・積雪深が最大となった後も雪の自重による圧密や気温の変化による雪質の変化(しまり雪→ザラメ雪)によって雪の密度が増加(過程U)、
・融雪後期にはほぼ一定の密度を保ちながら積雪深が減少(過程V)

という一連の特徴が捉えられています。なお、2006年は4月20日前後に雨が降ったため、みかけ上の密度は大きくなっています。また、2008年は暖冬で雪が少なかったため、過程Uが短絡されています。
 今後は、リモートセンシング技術等を活用した調査手法を取り入れ、積雪相当水量の空間分布を把握する予定です。

※リモートセンシング:地形や地物、物体などの情報を、遠隔から取得する手段です。一般には、人工衛星や航空機などから地表を観測する技術を指すことが多いようです。



問い合わせ先:寒地土木研究所 水環境保全チーム