土研ニュース

気候変動に適応するために
 〜 第5回世界水フォーラムで水災害管理が議論される 〜


写真−1 満員の分科会の様子

写真−2 竹内センター長による分科会成果報告

 世界水フォーラムは3年に一度開催される水問題を幅広く議論する世界最大の場で、今回は3月16日から22日の間、トルコ・イスタンブールで開催されました。世界192カ国から約3万人が集まり、日本からも皇太子殿下や森元首相をはじめとする水問題に高い関心を持たれる関係者など多数の参加がありました。皇太子殿下はまた「水とかかわる一人と水との密接なつながり」と題した印象的な御講演を行われましたが、内容の多くは日本の水災害管理の取り組みに関したものでした(皇太子殿下の講演内容はこちら)。土木研究所水災害・リスクマネジメント国際センター(ICHARM)は、フォーラムで行われる水災害に関する議論が充実したものになるように水災害トピックの調整役として、これまで国内外で準備を進めてきました。
 気候変動や都市部への人口集中等の結果、世界的に洪水や渇水などのリスクが増えてゆくことが予想されています。この困難な課題をどう解決していくか(Adaptation :適応方策という表現がよく使われます)を議論するために、水災害に関係する国連機関や多数の政府関係者、NGO等の協力を得て、「利害関係者の対話」、「技術の利活用」、「気候変動下のリスク管理」、「災害や紛争時における緊急水管理」という4つのテーマに分かれた分科会が設けられ、いずれも満員の聴衆のもと熱気にあふれた議論が交されました。
 最後に行われた総括セッションにおいては、今後の水災害に対処するために必要な統合的な取り組みなどを訴える提言がまとめられ、ICHARM竹内邦良センター長から報告が行われました。また、この提言についてはその他のプログラムでの成果報告とあわせて、最後に行われた閣僚級会合においては日本から参加された金子国土交通副大臣により本トピックの成果が報告されています。
 水災害に限らず水問題は地球規模で解決方法を考えなければなりません。
 土木研究所ICHARMは、このような国際的な議論の場で時にはスポットライトを浴び、時には縁の下の力持ち役として活動を進めています。



問い合わせ先:ICHARM

バイオマスの利活用技術に関するフォーラムを開催しました


バイオガスの利用方法

会場の様子

北海道別海町にある資源循環試験施設

 平成21年3月12日(木)、寒地土木研究所1階講堂で「バイオマスの利活用技術に関するフォーラム」を開催しました。
 地球温暖化対策の一環として世界レベルで新エネルギーの開発・導入が進められています。日本でも「バイオマスニッポン総合戦略」が平成18年3月に閣議決定され、ガソリン消費量の10パーセント以上のバイオエタノール等の生産が期待されています。そのためには、バイオエタノール等の利用促進および未利用バイオマスのエネルギー資源としての利活用技術の開発が課題となっています。
 フォーラムでは4名の講演者から、全国で展開されている未利用バイオマスのエネルギー資源としての利活用技術の開発の動向の紹介がありました。
 (財)バイオインダストリー協会山田富明部長からは穀物類などの食料系バイオマスではない、稲わら、麦わら、間伐材などの非可食植物であるセルロース系バイオマスを原料としたバイオエタノール生産の必要性とその中核となる製造技術が紹介されました。
 (株)NERC小島博主席研究員からは、地域バイオマス資源によるエネルギーの地産地消を実現するため、蒸気コージェネレーションの紹介があり、北海道はバイオマス資源の宝庫、そして寒冷地でもあり、暖房用にバイオマス燃料の利用が可能なため、蒸気コージェネレーションに最適の地域だとのアピールがありました。
 つくば中央研究所リサイクルチーム岡本誠一郎上席研究員が、下水汚泥やこれまで大部分が未利用だった公共事業から発生する草木系バイオマスの効率的利用を進めるための技術開発について紹介するとともに、都市部・農村部におけるバイオマスの利用のあり方について提案しました。
 寒地土木研究所資源保全チーム横濱充宏上席研究員からは、家畜ふん尿を主とした農村系バイオマスの共同型バイオマスプラントを核とした循環利用技術の研究成果について紹介がありました。
 持続的にエネルギーを確保しつつ、地球温暖化現象を食い止めるためには、バイオマスを用いたエネルギーの技術開発がその突破口となります。寒地土木研究所では今後もそうした視点に立って研究を進めていきます。
 詳しい研究成果はhttp://hozen.ceri.go.jp/project/でご覧頂けます。



問い合わせ先:寒地土木研究所 資源保全チーム

   

「沖縄県離島架橋100年耐久性検証プロジェクト」に関する協力協定を締結


写真-1 協定締結式の様子

写真-2 塩害状況例

写真-3 沖縄県離島架橋例(古宇利大橋)

 2009年3月18日,土木研究所と沖縄県、財団法人沖縄県建設技術センターの三者は「沖縄県離島架橋100年耐久性検証プロジェクト」に関する協力協定を締結しました(写真-1)。本プロジェクトは、沖縄県が管理する離島架橋の健全度調査を通して、100年余供用するための維持管理手法、技術基準の確立を目指します。
 橋を長持ちさせるためには,橋を造る段階の工夫も必要ですが,造った後でのコンクリートのひび割れの確認や,鉄筋がサビていないかなど日常の点検が重要になります.特に,鉄筋はサビ始めるとぼろぼろになってしまいます.鉄筋を保護しているコンクリートに,海水などがしみ込んで鉄筋をサビさせ,鉄筋が膨張しコンクリートを砕いてしまいます.この現象は,塩害(写真-2)と呼ばれる劣化現象で,コンクリート構造物の耐荷力および耐久性の低下につながる損傷です.周囲を海に囲まれ,さらに高温・多湿である沖縄県は,非常に厳しい条件下にあります.
 構造物メンテナンス研究センター(CAESAR)は、全国でもまれにみる厳しい塩害環境下にある沖縄県と長期間にわたる協力関係を構築し、県が整備・管理する離島架橋11橋を対象に、劣化に関するデータの計測・蓄積に取り組みます。既設橋梁(写真-3)の健全度調査・データ計測に加え、建設中の伊良部大橋では、橋の本体から抜き取り調査可能な部位を設定し、塩化物イオン濃度や透気係数などの基礎データを実橋梁で長期的に計測します。
 CAESARは,橋梁の維持管理に関する研究や現場への技術指導等を通じて,安全かつ効率的な社会資本整備に貢献できるよう精力的に活動を展開しています。本プロジェクトに関する今後の予定としては、琉球大学を含めた連絡会議を設置し、定期的に情報交換を行うこととしています。




問い合わせ先:CAESAR

   

平成19年度財務諸表を公表しました
 〜 経営状態等を報告するための計算書類 〜


平成19年度の収入

平成19年度財務諸表の目次

 独立行政法人は、独立行政法人通則法(平成11年法律103号)の規定により、毎事業年度(4月1日〜翌年3月31日)終了後3ヶ月以内に財務諸表を作成し、監事及び会計監査人の意見を付して主務大臣に提出し、その承認を受けることになっています。また、承認を受けたときはこれを公表することになっています。この度、土木研究所の財務諸表が国土交通大臣より承認を受けましたのでホームページに掲載いたしました。
 独立行政法人の会計基準は原則として企業会計原則よるものとされておりますが株式会社等の営利企業とは制度や財務構造が違うことから、「独立行政法人会計基準」及び「独立行政法人会計基準注解」が設定され、また、これに対する実務上の留意点を記述したQ&Aがあり、これらの基準に従い会計処理を行っています。
 財務諸表(法人の財政や経営状態を、国民その他の利害関係人に報告する目的で作成される各種の計算書類)は、貸借対照表、損益計算書、キャッシュフロー計算書、行政サービス実施コスト計算書及びこれらの詳細を記載した附属明細書からなり、土木研究所の場合、法人単位及び勘定別(一般勘定、道路整備勘定、治水勘定)で構成され、事業報告書及び監事の意見並びに会計監査人の報告書を添付しております。なお、行政サービス実施コスト計算書は独立行政法人独自の書類です。これは法人の業務運営に関し最終的に国民の負担となるすべてのコストを記載したものです。

 以上、財務諸表についてお知らせしましたが、添付資料として掲載しています事業報告書には、財務諸表の経年比較・分析、勘定科目の説明、経営状況等が掲載されています。平成19年度財務諸表等については、http://www.pwri.go.jp/jpn/kenkyuujo/zaimu.html をご覧下さい。




問い合わせ先:会計課

   

第2回技術者交流フォーラムin釧路を開催しました


会場の様子

講演の様子


プログラム

 寒地土木研究所では平成21年2月19日(木)に、釧路プリンスホテルで「第2回技術者交流フォーラムin釧路」を開催し、産学官から220名のご参加をいただきました。
 今回は「我が国の食糧供給基地釧根地域の発展に求められる技術」をテーマに、酪農業や水産業、物流に関する技術や研究成果、課題について8人から御講演をいただきました。
 釧路開発建設部上西隆広部長は、世界的な経済不況や食糧需給への懸念にふれた上で「今こそチャンスであり、東北海道が食糧供給基地として一層の強化を図るべきだ」と強調されました。
 寒地土木研究所から3名の講演があり、寒冷沿岸域チーム山本泰司上席研究員は冬の港の厳しい作業環境の改善や漁獲物の鮮度保持に効果がある岸壁における屋根付き施設について紹介しました。
 民間企業の方からも3名の講演があり、(株)ズコーシャ総合研究所横堀潤技師は、今後農業の経営規模拡大が予想されてるなかで、経験と勘に依存した農業では限界があり、IT技術に基づいた営農が必要と言うことが話されました。
 終了後、実施されたアンケートでは参加者から「今後、このフォーラムを発展させ、産学官連携の体制づくりが出来ればよいと感じた」「今後もこのような地域活性化を目的としたフォーラムが多く開催されることを望む」等の感想が寄せられました。今後取り上げてほしいテーマとしては、「北海道独自の土木工事工法」や「寒冷地特有の技術開発」などの積雪寒冷地に適した社会資本整備に関するものを求める意見が最も多く、次いで「エコ推進(リサイクル推進)のための公共事業、インフラ整備のあり方」など環境に配慮した公共事業に関するものなどを求める意見が寄せられました。
 参加者は熱心に各講演に耳を傾け、講演に引き続き行われた交流会でも活発な意見交換を行いしました。



問い合わせ:寒地土木研究所 道東支所

   

第50回科学技術週間
 〜 施設の一般公開を実施しました 〜


試験走路のカーブを体験


高速走行体験

輪荷重走行試験機


ICHARMの外国人研究者による説明

 「科学技術週間」は、科学技術について広く一般の方々に理解と関心を深めて、日本の科学技術の振興を図ることを目的として昭和35年2月に制定されました。全国の各機関では、主にこの期間に各種科学技術に関するイベントなどを実施しております。今年の科学技術週間は、4月13日〜19日に、『さいしょはどうして さいごはなるほど』をテーマに、全国的な規模で実施され、つくば市では、43の研究機関等で一般公開等が実施されました。
 土木研究所は、国土技術政策総合研究所と共同で4月14日(火)に研究施設の一般公開を実施しました。当日は、午後から雨が降りましたが、202名の方々が研究施設等を見学されました。今年は、試験走路、振動実験施設、構造力学実験施設及び海洋沿岸実験施設の合計4施設を一般公開しました。
 試験走路では、実物大のトンネル実験施設、舗装の実験に使う荷重車等の説明をした後、高速走行体験を行いました。
 次に、振動実験施設において、兵庫県南部地震の揺れを再現できる3次元大型振動台を用いて過去に行った橋脚補強のための実験の映像や液状化現象についての簡単な実験を行いました。
 また、構造力学実験施設では、輪荷重走行試験機を実際に稼動させ、床板の損傷発生メカニズムを検証する試験の模様を見学していただきました。
 最後の海洋沿岸実験施設では、津波の発生メカニズム及びその破壊力等を説明した後、津波発生装置により津波を発生させ、その伝わるスピードの特性を目で実際に確認するという実験を行い、見学者から好評でした。
 さらに、水災害・リスクマネジメント国際センター(ICHARM)では、外国人研究者等によるプレゼンテーションやポスター展示が行われ、主に、招待された竹園高校、並木高校及び並木中等教育学校の生徒との間で、全て英語による活発な質疑が展開されました。



問い合わせ先:総務課