研究成果の紹介

空港の舗装を守る!
 
〜積雪寒冷地における空港舗装のブリスタリング現象の調査と対策〜


北海道の空港におけるブリスタリングの様子

滑走路に発生した多数のブリスタリング箇所

赤外線サーモグラフィーによる舗装体温度計測;
ブリスタリング発生箇所は舗装体温度が周囲と異なる。


ブリスタリング現象の発生する要因

 積雪寒冷地における空港では、近年の気候変動の影響によると思われるブリスタリング現象が問題となっています。ブリスタリング現象とは、太陽の日射によって舗装体の温度が高くなる影響により、上部舗装体の内部に含まれた水分が蒸発し、その蒸気圧により舗装体を持ち上げる現象です。このような現象が進行すると舗装体が剥離し、多数発生すると、路面に凹凸ができ、平坦性が悪化します。また、舗装体にクラックが発生するため、航空機の走行に支障が生じ、滑走路が使用できなくなることが起きます。

 寒地土木研究所では、滑走路に発生するブリスタリング現象に対する対策を検討するため、ブリスタリング現象が発生した箇所からコアを採取し、発生原因を調査しました。調査の結果、以下のことが明らかになりました。
@ 舗装表面に発生した割れ目から水分が浸透してきている。
A 耐久性を向上させるために多く配合したアスファルトの影響により、水分を通さない不透水層ができている。
B アスファルト混合物層の層間に剥離が発生し、舗装体が弱くなっている。
C 舗装体の空隙(アスファルト混合物中の隙間)が航空機の重さにより潰れている。

 ブリスタリング現象を抑制する対策として、寒地土木研究所として以下の対策を提案し、北海道開発局により実施されています。
1)アスファルト混合物の配合設計方法の見直しや使用するアスファルトの種類の変更
2)アスファルト混合物の層間剥離を防止するために、層間剥離しにくい材料の提案
3)施工継ぎ手目が少なくなる施工方法やブリスタリング現象が発生しにくい舗装構成の提案
現在、これらの対策は効果を発揮していますが、長期的な供用性を確認するために、追跡調査を実施し、検証を行っています。



問い合わせ先:寒地土木研究所 寒地道路保全チーム

土系舗装の実道への適用に関する研究
  〜 人にやさしく、環境にもやさしい舗装 〜


図−1 土系舗装の構造図

写真−1 土系舗装のイメージ


写真−2 土系舗装の実道での適用事例

 近年、国民が日々の生活をするなかで「緑」や「土」をもっと身近に感じたい、自然を生活の一部に取り込みたいといったニーズが高まってきています。しかし、これまでの舗装は人工的なイメージが強く、「自然」を感じられるものとはなっていないのが現状でした。そこで、自然の風合いがある土系舗装が、人にやさしく、環境にもやさしい舗装技術として今後の整備が期待されています。
 土系舗装は、自然の土(主にまさ土)に、セメントや石灰、樹脂、アスファルトなどの固化材を混合し、敷きならし、締め固めた舗装です(図−1、写真-1)。
 土系舗装は、主に以下の特徴を有しています。

<人にやさしい>
・適度にやわらかいので、歩行しやすく、転んでも怪我がしにくいことが期待される
・保水することから、夏季の路面温度が上がりにくく、涼感が期待される
<環境にやさしい>
・土の風合い・質感があることから、周辺環境となじみやすい
・地元産の材料を有効活用することができる

 このような土系舗装ですが、アスファルト舗装と比べて耐久性が高くないことから、適用箇所も公園の園路や遊歩道等が中心でした。しかし、土系舗装には多くの利点がありますので、国道の歩道でも使用できるよう研究を行っています。また、各地でも試験施工(写真−2)を進めており、歩行者によるアンケート調査や、長期間の耐久性調査を行っています。



問い合わせ先:舗装チーム