研究成果の紹介

道路防災構造物の新たな設計法を目指して
 
〜 安全・安心な道路ネットワーク 〜


道路防災構造物


実物の2/5の大きさの
落石覆道模型に対する実験

落石を模擬した鋼製重錘(W=10t)の
落下衝撃実験

 日本は国土の約7割が山地・丘陵地であり地形が険しいうえ、地質・土質が複雑で地震の発生頻度が高く、台風や降雨、降雪など厳しい環境下にあります。このような中、自然災害から国民の生命・財産を守ることは最も基礎的な課題となっています。近年、集中豪雨や地震などに伴う土石流、地すべり、がけ崩れなどの斜面災害が、過去10年間(平成11〜20年)の年平均で約1,000件以上発生しており、多大な被害を与えています(国土交通白書2009より)。また、自然災害による犠牲者のうち、斜面災害によるものが大きな割合を占めています。
 日本の道路は、地形の険しい場所や海岸線などを通過し建設されている場合も少なくなく、大規模な岩盤崩壊や落石を始めとする斜面災害が続いてきました。このため、道路防災水準を向上させるための研究開発が急務となっており、寒地土木研究所では特に道路防災構造物(落石覆道や落石防護擁壁など)を対象とし、新たに合理的な設計法の提案に向けた検討を行っています。
 これまでの実験や解析等から従来の設計法で建設された道路防災構造物は、想定している落石荷重に対して大きな安全性を有していることが確認されています。その一方で、斜面の経年変化等により、想定している落石荷重を超える災害要因がある箇所が、点検等により確認されることもあります。このようなことから、想定を超える落石荷重に対して、どのくらいまでの落石衝撃エネルギーなら安全であるのかについて、把握することが必要となってきました。
 このため寒地構造チームでは、室蘭工業大学との共同研究により、当所実験場において大型の模型を製作し、落石を模擬した重錘落下衝撃実験等を行い、落石荷重が作用した時の道路防災構造物の損傷状態の把握や、落石作用時の状況を精度良く再現可能な解析手法の確立に向けた研究を進めています。



(問い合わせ先:寒地土木研究所 寒地構造チーム)