研究の紹介

山岳トンネル工事における機械掘削時の粉じん低減技術


図1(a) 実験施設外観と送風機

図1(b) 実験施設内部

図2 模擬岩盤コンクリート掘削状況

図3 局所集じんシステムの概要

図4 伸縮風管システムの概要

トンネル掘削時の粉じんについて
 山岳地に道路を通すにはトンネルを要することがありますが、トンネル建設における掘削等で粉じんが発生します。この粉じんは、作業効率を低下させるばかりでなく、作業員が長年にわたって吸込むとじん肺(肺疾患)にかかる恐れがあり、トンネル建設時の粉じん対策技術の開発が求められています。
 土木研究所は民間等と共同で、トンネル掘削時の粉じん低減技術の効果を検証するための実験を行いました。

実験施設と掘削実験の方法
 実験は土木研究所内の建設環境改善実験施設で行いました。この施設は図1に示すような実際のトンネルを模擬したもので、高さ8m、幅13m、長さ100mであり、2車線のトンネルを想定して作られています。また、トンネル内に外からの新鮮な空気を送り込むための送風機と、発生した粉じんを吸引するための大型集じん機を備えています。
 トンネル建設では、図2に示すような機械を用いて岩盤を掘削しますが、実験施設内に岩盤を運んでくることは困難なため、岩盤に見立てたコンクリートを掘削して粉じんを発生させました。そして、発生した粉じんの濃度や粒子の大きさ等の測定を行いました。
 粉じん低減技術を使用した場合と使用しない場合の粉じん濃度等を比較して、粉じん低減技術の効果を検証しました。

粉じん低減技術と実験結果
 以下のような粉じん低減技術等について、その効果を検証しました。
(1)局所集じんシステム
 図3のように、掘削位置へ大型集じん機から吸込みダクトを伸ばして粉じんを吸引・除去する方法
(2)伸縮風管システム
 図4のように、大型集じん機から伸縮式の直径1m程度の管(伸縮風管)を掘削位置付近まで伸ばして粉じんを捕集する方法
(3)界面活性剤溶液散布システム
 界面活性剤溶液(泡)を岩盤の切削位置に噴射し、粉じん粒子を吸着・落下させることにより粉じんの飛散を抑制する方法

 実験の結果、各技術とも粉じん低減効果があり、トンネル建設作業において定められている粉じん濃度の目標値を満足することの確実性が高まることが分かりました。
 今後は、実際のトンネル建設現場において低減技術の効果を検証していく必要があります。



(問い合わせ先:施工技術チーム)

網走・十勝地域における大雨の成因の変化


図−1 大雨の発生要因の経年変化


図−2 台風と前線の通過パターンと回数

 網走・十勝といった北海道東部の大規模な畑作地帯では、営農にとって排水条件の整備が欠かせません。そのため、これらの地域では、50年以上にわたって直轄明渠排水事業等による排水路の整備が進められてきました。しかし、近年は数年おきに排水不良の被害事例がみられるようになっています。土地利用の変化や雨の降り方の変化などが、排水不良の原因となっている可能性があります。このような背景から、水利基盤チームでは「大規模畑作地帯での排水システムの供用性に関する研究」に取り組んでいます。ここでは、網走・十勝の両支庁管内での雨の降り方に関する研究の例として、営農期間における大雨の原因となる気象条件の近年の変化傾向を紹介します。
 研究に用いたデータは、両支庁管内における気象官署およびアメダス地点における1976年から2007年までの5月〜10月の雨量データです。両支庁管内にある68箇所の観測地点のうちで、日最大時間雨量が30o以上または日雨量が80o以上となったところが1地点でもあれば、大雨があったと判定しました。このようにして合計102件の大雨事例を選びました。
 大雨事例を発生年代や原因となる気象条件で分けて、それらの件数を比較すると図−1のようになります。なお、温帯低気圧(台風)とは、台風や熱帯低気圧から変わった低気圧のことです。この図から、前線による大雨が1976-1986年に比べて1987年以降で増加していることや、台風による大雨が増加傾向にあることがわかります。
 図−2は、大雨をもたらした台風や前線の通過パターンです。台風についてみると、1976〜1986年では北海道の南東を通る場合が主であったのですが、近年は北西側を通るものが増えてきています。一般に、北上する台風では中心よりも東側で強い風が吹きますから、近年の台風の経路の変化は、北海道東部を強い風の範囲が通過するケースが増えていることを意味します。前線については、緯度として北海道中部から南部にかけて停滞するパターンが多くなっています。
 これらの傾向は、読者の皆さんが最近感じておられることと一致するでしょうか。
 今後は、いわゆるゲリラ豪雨の発生頻度の整理を試みる予定です。



(問い合わせ先:寒地土木研究所 水利基盤チーム)