土研ニュース

インド国立災害管理研究所と共同ワークショップの開催について


開会式

ワークショップ


施設見学
(大型遠心力載荷試験装置の実験映像で説明)

現地視察(善徳地すべり)

1 はじめに
 土木研究所及び国土技術政策総合研究所は、平成22年1月13日から16日の4日間にわたり、インド国立災害管理研究所と共同ワークショップを開催しましたので、その状況を報告します。

2 経 緯
 インドは、我が国最大のODA供与国であり、経済成長著しい国ではありますが、一方で、災害の非常に多い国であり、災害対策は喫緊の課題となっています。
 土木研究所は、毎年つくばで開催する「アジア地域国土整備関係研究所長等会議」において、アジア各国で頻発する自然災害に対する効果的な防災・減災対策等を議題として海外の研究者と広く議論してきました。そして、これまでの議論を踏まえ、インド国立災害研究所と「地すべり対策と災害管理」に関する共同ワークショップを開催しました。

3 開催状況
(1)ワークショップ
 ワークショップは、1月13日、14日の2日間にわたり、日本とインドの双方が、お互いの地すべり災害とその対策の現状をより深く理解することを目的に、国土技術政策総合研究所8階国際会議室で実施しました。
 インド側からは、自然災害管理に関する法体制・組織体制の概略と、地すべり災害の現状と課題及び取組についての発表がありました。
 日本側からは、国土技術政策総合研究所が我が国における土砂災害の現状とその対策について発表し、土木研究所が、最近発生した地すべり災害の事例紹介と地すべり対策工法の具体的概要について発表しました。
 これらの発表を通じて、お互いの今後の効果的な技術支援のあり方や研究連携の推進方策等に関連する活発な意見交換を行いました。
(2)施設見学
 振動実験施設、遠心力載荷実験施設、盛土実験施設において、実験装置の概要とそれを用いた実験を紹介しました。インド側からは、装置の仕組みや実験条件の設定、実験結果の解釈等に関する活発な質問がありました。
(3)現地見学
 現地視察のため四国に移動し、善徳地すべり対策等を視察しました。ここでは、地下水排除工を目的とする横ボーリング工や排水トンネルの他、調査ボーリングの作業状況など、我が国で実施されている調査・対策手法を見ていただきました。

4 おわりに
 現在、土木研究所とインド国立災害研究所との間で、地すべり対策に関する研究協力の覚書の締結に向けた手続きを行っています。今後インドと協力体制を深めて地すべり対策をよりいっそう推進していきます。



(問い合わせ先:地すべりチーム)

寒地土木研究所 第5回 技術者交流フォーラム in小樽を開催しました


パネルディスカッションの様子

フォーラム全体の様子

プログラム

 寒地土木研究所は現場密着型の技術開発、技術普及および地域における技術の向上等のため、道央、道南、道北、道東に支所を設置しています。各支所では研究開発の現地調査・試験の拡充とともに、地域におけるニーズの把握や研究成果・普及、技術指導を実施しています。
 「技術者交流フォーラム」はこれらの活動の一環として、地域において求められる技術開発に関する情報交換、産学官の技術者交流および連携等を図る目的で、開催しています。
 今回は「後志(シリベシ)観光とそれを支える道路インフラ」をテーマに、平成21年12月1日(火)グランドパーク小樽で開催し、産学官から約180名の参加を得ました。
 基調講演として小樽商科大学海老名誠ビジネス創造センター長から「北海道観光 観光産業事業者の勘違い」、一般講演として北海道開発局小樽開発建設部倉内公嘉次長から「後志の道路の景観について」、寒地土木研究所地域景観ユニット松田泰明主任研究員から「北海道における道路の魅力向上と観光への貢献」、寒地土木研究所寒地交通チーム葛西聡上席研究員から「北海道らしい道路構造」、HRS(株)鈴木哲夫代表取締役社長から「ジオツーリズムと後志の道」をそれぞれ講演頂き、パネルディスカッションへと進みました。
 パネルディスカッションは、小樽商科大学社会情報学科大津晶准教授をコーディネーターに「これからの後志観光とそれを支える道路インフラについて考える」というテーマで進められました。
 観光や防災の視点からも道路整備の必要性が訴えられた後、最後にコーディネーターが「今日のフォーラムのように、産学官から知恵を持ち寄ってやっていきましょう」とまとめ、パネルディスカッションを終了しました。
寒地土木研究所各支所では今後とも、各地域における産学官交流の場として技術者交流フォーラムを行っていく予定です。



(問い合わせ先:寒地土木研究所 道央支所)

   

国際シンポジウム“ICHARM Quick Reports on Floods 2009”を開催


開会挨拶を行う竹内センター長

フィリピン・マニラ洪水についての発表

パネルディスカッションの様子

 水災害・リスクマネジメント国際センター(ICHARM)は、2009年12月10日(木)に、国際シンポジウム”ICHARM Quick Reports on Floods 2009”を開催しました。これは、世界の最新の洪水災害の状況を把握してICHARMの活動に資するために毎年開催しているもので、今回は2008年から2009年にかけて甚大な洪水被害を受けた台湾・フィリピン・バングラデシュ・ミャンマー・日本の専門家から報告を頂きました(当日のプログラム、発表者の略歴はこちら)。
 まず、台湾で2009年8月に起こった洪水被害について、陳亮全(Liang-Chun Chen)教授(台湾災害科学技術センター長)から講演を頂きました。教授は今後の教訓として、正確な降雨予測や復旧・復興対策の強化、適切な土地利用の推進などを挙げました。
 続いて、2009年9月の洪水について、Susan Ramos Espinueva氏(フィリピン気象天文庁水文気象部長)から講演を頂きました。氏は、被害を大きくした要因として、主要河川の流下能力不足、マニラ周辺の人口急増、上流部の森林伐採などを挙げ、今後の課題として、適正な土地利用の推進、洪水予警報の推進、災害教育の強化などを挙げました。
 続いて、Md Abu Taher Khandakar氏(バングラデシュ水資源開発庁(BWDB)技監)からバングラデシュの洪水の状況に関する講演を頂きました。氏は、バングラデシュは国土の大半が低平地であり、高潮による被害を受けやすいため、海岸植生やシェルターの整備、職員の能力向上などを課題として挙げました。
 さらに、2008年5月のサイクロンNargisについて、Tun Lwin氏(元ミャンマー気象水文局長)から講演を頂きました。氏は、この大被害の原因は、ハザードマップやシェルターがなく過去の経験もない、人口稠密で脆弱な低平地をサイクロンが襲ったことにあると指摘し、「防災は社会科学的な仕事であり、全ての学問・機関・分野での解決策が必要である」と述べました。
 最後に、2009年夏に西日本を襲った洪水被害について大槻英治 国土交通省河川局水利技術調整官から講演を頂きました。
 途上国からの講演者が、洪水予警報の推進、適正な土地利用の推進、住民や行政職員の災害教育などを共通の課題として挙げたことが印象的でした。今後、堤防やダムなどの構造物対策と併せて、このようなソフト面での洪水対策を促進していく必要があると思われます。



(問い合わせ先:ICHARM)

   

「21世紀気候変動予測革新プログラム 平成21年度研究成果報告会」について


革新プログラム概要
(出典:http://www.jamstec.go.jp/kakushin21/jp/index.html


極端現象チーム構成
(出典:気象研究所)

ICHARM課題の概要

 文部科学省「21世紀気候変動予測革新プログラム」(平成19年度〜23年度)は、日本の研究機関・大学が結集することによって、温暖化予測モデルの高度化と予測、モデルの不確実性の定量化・低減、および自然災害に関する影響評価に取り組んでいます。世界最高水準のスーパーコンピュータ「地球シミュレータ」を活用しながら、信頼性の高い温暖化予測情報を提供すること、特に温暖化で悪影響が懸念されている極端な気象現象(台風、豪雨等の統計的な観点から突出した現象)に対する影響を定量的に予測します。これを通して、社会的被害のリスクの変化など、広範な自然災害分野への温暖化の影響評価研究も実施しています。
 水災害・リスクマネジメント国際センター(ICHARM)は、このプログラムの下で、地球科学技術総合推進機構(AESTO)・気象研究所(JMA)・気象庁(MRI)・国土技術政策総合研究所(NILIM)・京都大学防災研究所(DPRI-KU)とチームを組んで共同研究を推進しています。その中でICHARMは、JMAが開発している20km格子間隔(メッシュ)の超高解像度大気大循環モデル(AGCM)による温暖化予測計算結果を用います。さらにICHARMで開発している水文・氾濫解析モデル等を利用することで、近未来および21世紀末における全球規模での洪水リスクの変化予測を行うとともに、メコン川流域やネパール山岳流域における詳しい影響評価も行っています。
 深見和彦(水文チーム)上席研究員は2010年1月13日(水)に開催された「21 世紀気候変動予測革新プログラム 平成21年度研究成果報告会」にてICHARMの成果について発表しました。AGCMによる降水量変化のバイアス(偏差・偏り)を全世界で広く入手可能な雨量データを用いて改善する方法や、全世界の流域に適用できる河川流量予測モデルを用いた洪水流量の将来変化に関する初期成果などが示されました。報告会では、さらに他チームとの連携や成果の公表方法など、今後のさらなる研究の推進へ向けての活発な議論も行われました。



(問い合わせ先:ICHARM 水文チーム)

   

「第3回つくば産産学連携促進市inアキバ」に出展しました


説明の様子

三次元大型振動台の貸出例(住宅)

輪荷重走行試験機

 平成22年2月16日(火)に秋葉原ダイビル2階コンベンションホールで「第3回つくば産産学連携促進市inアキバ」“『試せる場』つくば”が開催されました。これは、つくば市が中心となって行っている催しであり、研究所や大学の研究機器を外部の機関や企業が使う事ができる仕組みを知っていただき、イノベーションへの誘発を期待しています。つくばの様々な分野の研究教育機関等が参加して、それぞれのブースにおいて、各研究機関が解放している研究機器の内容と利用方法の展示・相談が行われました。

 土木研究所は、独立行政法人となった平成13年度に貸付規定を制定して、「外部機関が当所の施設・設備を使用できる環境」を整えました。今年で貸出を始めて10年目になりますが、土木研究所にある貸付試験器は、三次元大型振動台、輪荷重走行試験機、30MN大型構造部材万能試験機等の大規模で国内に類似品の少ないものがあり、パンフレット・写真等用いて仕様・働き及び貸出方法等を説明し多くの方に興味を持っていただきました。また、この催しは、東京都等にある地方自治体、企業に土木研究所の特殊な試験器・研究内容等を知ってもらう良い機会になりました。
 
(参考)
土木研究所ホームページ施設貸付http://www.pwri.go.jp/jpn/shisetsu.html



(問い合わせ先:業務課)

    

第23回寒地土木研究所講演会を開催しました


会場の様子

片田教授の講演

プログラム

 平成21年11月27日(金)、かでる2.7(札幌市)で独立行政法人土木研究所第23回寒地土木研究所講演会を開催しました。当日は平日にもかかわらず400名を超える方々にご来場をいただきました。
 本講演会は、当研究所の研究成果や寒地土木技術に関連するトピック等を多くの方々に紹介するため昭和61年から行っており、今回で23回を数えます。
 特別講演では、災害社会工学を専門とし、国や地方自治体で多くの審議会、委員会に携わり、防災行政の推進に貢献している群馬大学大学院工学研究科片田敏孝教授をお招きして、「最近の災害に学ぶこれからの地域防災」と題しご講演いただきました。片田教授は「災害対策基本法に基づき行政主体で進められてきた我が国の防災は、制定当時の毎年数千人単位の災害犠牲者をここ最近の百人程度に激減させることに貢献した。しかし、百人レベルの災害犠牲者をゼロにする段階において、これまでの行政主導の防災に限界が生じ始めている」と現状を分析した上で「これからの防災に求められることは、行政主導の防災から、住民・行政が共に主体的に自然災害に立ち向かう地域社会の構築である。特に住民に求められることは、防災に対する内発的な自助意識を持つことであり、併せて、地域特性、災害時の状況に応じた災害をやり過ごす知恵を身につけることである」と今後の防災のあり方を訴えました。
 一般講演では、水環境保全チーム山下彰司上席研究員より「北海道における近年の降雪・積雪状況について〜気象データの整理と積雪重量計でわかったこと〜」、地域景観ユニット松田泰明主任研究員より「北海道における良好な景観形成と地域の豊かさの創出」、つくば中央研究所ダム構造物チーム山口嘉一上席研究員より「既設ダムの有効利用技術の最近の動向」と題し、それぞれ講演を行いました。
 また、かでる2.7内で行われた「寒地土木研究所パネル展」では各研究チームの研究成果をパネル、模型、パンフレットなどで展示し、来場者から好評を博しました。
 今年もたくさんの皆様のご来場を頂きましたこと、心より感謝申し上げます。



(問い合わせ先:寒地土木研究所 寒地技術推進室)

   

英語版ホームページをリニューアルしました


リニューアル後の英語版HP

日本語HPと英語HPが直接対応でき、分かりやすい
(クリックすると拡大)

土木研究所における広報への取組
 土木研究所では、広報委員会を組織し、このWebマガジンの配信をはじめ、定期刊行物やDVDの作成、イベントの開催など、様々な活動に力を入れています。
 この度、広報活動の一環として、研究成果や活動について積極的に海外に情報発信を行うため、英語版ホームページ(HP)をリニューアルしました。

HP上のこれまでの課題
 土木研究所は、海外の研究機関より協力関係を結ぶことを求められたり、海外の大学や企業から技術的な問い合わせを受けたりすることがあり、HPにおいても、海外向けの情報の充実が求められていました。しかし、以前の英語HPでは情報量が少なく、また、日本語HPの下位階層から英語HPに移ろうとすると、英語HPのトップに移動してしまい、必要な情報になかなかたどり着けないなどの問題もありました。

リニューアルの内容
 上記の課題を受け、2つの対応を行いました。
(1)英語情報の充実
 英語HPでの情報量が日本語HPと同等になるよう、法律や規則、日本語で行う講演会の情報を除いては、日本語HPの内容全てを英語に翻訳しました。翻訳に際しては、ネイティブチェックを行うとともに、広報委員会下部組織の幹事会や各研究者による専門用語のチェックを実施するなど、正確な情報がきちんと伝わるよう留意しました。

(2)日・英リンクの工夫
 日本語HP(英語HP)の右上にある「English」(「Japanese」)をクリックすると、今まで見ていた日本語HP(英語HP)をそのまま英訳(日本語訳)したページが開くようにリンクを工夫し、両者が直接対応できるように作成しました。

 また、これまで日本語版しかなかった論文についても、概要が閲覧できるように英文を作成し、英語HPのさらなる充実を図っております。
 今後も、情報の充実と使い易さの向上に努めて参りますので、土木研究所のHPをご覧頂くとともに、ご意見等お寄せ下されば幸いです。



(問い合わせ先:広報委員会、広報幹事会)

   

科学技術週間:平成22年4月16日に一般公開を行います


試験走路(高速走行体験)時速100km〜120km

非破壊・微破壊試験
(コンクリート内の鉄筋の位置が分かります)

舗装走行実験場(無人で動く荷重車)
舗装の耐久性を調べます

 科学技術週間にあわせて、今年も国土技術政策総合研究所と合同の一般公開を4月16日(金)に行います。公開内容は、次のとおりです。

(1)施設見学(見学バス受付9:45〜14:45)
 下記施設に8回に分けてバスでご案内します。所要時間は約1時間20分です。見学開始時間は、10:00、10:30、11:00、13:00、13:30、14:00、14:30、15:00(最終)です。
 見学バスの行程は、まず、試験走路で高速走行を体験していただき、その後、構造物実験施設(コンクリート構造物の非破壊・微破壊試験)、下水道水理実験施設、舗装走行実験施設(無人荷重車と新開発の舗装について)を見学する予定です。
 非破壊・微破壊試験は、レーダや超音波などを利用した機械を使って、人間ドックで体の内部を見るCTスキャンのように、コンクリートの内部にある鉄筋の位置を測定したり、古くなって弱くなった部分を調べたりできるものです。また、舗装走行実験場には人工衛星のGPSを使って無人で走行する荷重車と、ヒートアイランド対策や排水性の高い新開発された舗装があります。

(2)国総研研究本館1階ロビー(見学時間10:00〜16:20)
 ビデオ放映及びパネルによる研究紹介

(3)ICHARM棟(見学時間10:00〜16:20)
 1階ロビー:ICHARMの活動紹介(パネル展示)

※学校など団体での見学は、事前に登録をお願いします。
※つくばセンター(TXつくば駅)から当研究所までの所要時間は、車で約15分です。
つくばセンターから(建築研究所行又は下妻駅行)で乗車、土木研究所前下車。(片道340円)



(問い合わせ先:総務課)