研究の紹介

道路舗装を長く使うために
 〜 シール材注入工法について 〜


タイヤの走行位置にひび割れが発生しています

ひび割れ箇所にシール材を注入し補修します

補修後に路面の観測を継続的に行います

 破損の無い新しい舗装は、路面が平坦に保たれているため走行するドライバーは、運転がスムーズで乗り心地が良く、とても快適に感じます。また、ハンドルの操作性も良く、安全に車を走らせることができます。しかし、長く使用している間に、徐々に舗装には破損や劣化が進行していきます。特に、自動車による繰り返し荷重により、舗装の破損を進行させ、ひび割れと呼ばれる舗装表面が割れる現象や、わだち掘れと呼ばれるタイヤの走行位置が凹み、路面に凹凸が発生する現象が起きます。このような状態になる前に早めに舗装の補修を行い、破損の進行を抑え、安全快適に走行できる路面状態を長く維持することができます。
 舗装の破損の進行を抑え、寿命を延ばすために行われている方法の1つとして、シール材注入工法があります。これは、路面上に発生したひび割れに対して、アスファルトや樹脂を成分とするシール材と呼ばれる材料を注入する工法です。シール材を注入することにより、ひび割れの延伸を抑える効果や、ひび割れ幅の広がりを抑える効果があります。これらの効果により、舗装の破損の進行を遅延させて、舗装の寿命を延ばすことができます。しかし、実際にどれくらい寿命を延ばすことができるのか、シール材の耐久性はどれくらいあるのか等、未解明な部分が数多くあります。
 当チームでは、これらを解明するために、実際にシール材注入を行った現地の道路において、ひび割れの発生状況や注入したシール材の劣化状況、路面の凹凸測定等を継続的に調査しています。これらの調査結果をもとに、舗装の破損の進行度合いやシール材の耐久性、寿命を延ばす効果について分析し、破損に対する適切な補修時期や方法について提案することにより、舗装の寿命を延ばすために貢献していきます。



問い合わせ先:寒地土木研究所 寒地道路保全チーム

土砂地山の模型実験
 〜 ロックボルトの効果を解明する 〜


図−1 トンネルの支保工

写真−1 ロックボルトの施工

写真−2 土砂地山トンネル

写真-3 実験装置

図-2 実験結果

 道路トンネルの設計・施工に関する技術的な基準は、山岳トンネル工法を対象とした「道路トンネル技術基準(構造編)・同解説」があります。その中では、掘削した空間を支える部材である吹付けコンクリートやロックボルト(写真-1)など「支保工(図-1)」の標準的な組合せとして、吹付けコンクリートの厚さ、ロックボルトの長さや間隔などについて示してあり、道路トンネルの設計や施工に従事する現場技術者の拠り所として活用されています。近年、山岳トンネル工法は、山岳部のみならず、都市部など掘削する部分の安定性が困難な地山(じやま:トンネルを掘削する対象となる山または地盤)などにおいて採用されるなど、その適用範囲は広がりつつあります。しかし、支保工の標準的な組合せを示した基準は、山岳部の堅硬な岩盤を主として対象にしているものであり、それ以外では標準的な組合せを参考として、個別に設計する必要があります。
 個別の設計が必要とされるひとつの例として、土砂地山に掘削するトンネル(写真-2)があります。このような地山では、特にロックボルトの効果が不明な部分が多いことから、模型実験を実施し、その力学的なメカニズムを研究しました。実験では、写真-3に示す実験装置を用いて、ロックボルトの打設範囲や長さ、打設間隔などを変化させて行い、トンネル模型に与える影響について検討しました。その結果、土砂地山でロックボルトによりトンネルに作用する荷重を低減するには、図-2に示した、天端部においては自立した、すなわち、掘削しても動かない領域に達するにはボルトの長さが必要となること、側壁部においては打設間隔をある程度密にする必要があることなどがわかりました。
 今後は得られた実験結果をもとに、土砂地山での支保工のメカニズムを検証し、より合理的なトンネルの構造となるような設計の考え方などを提案したいと考えています。



問い合わせ先:トンネルチーム