土研ニュース

「平成21年度 土木学会国際貢献賞」受賞記念講演会


講演を行うリュー首席研究員

会場の様子
(熱心に聞き入る研究者・技術者)

活発に質疑応答が行われました

 米国商務省国立標準技術研究所建築・防火研究所 H.S.リュー首席研究員が、これまでの長年にわたる国際活動に対して(社)土木学会から「平成21年度 土木学会国際貢献賞」を受賞されました。「国際貢献賞は、海外における土木工学の進歩発展あるいは社会資本整備に貢献し、現地で高く評価された日本人、並びに日本の土木工学の発展あるいは日本の土木技術の国際交流に貢献したと認められた外国人に授与」されます(土木学会表彰規程より)。リュー首席研究員は、UJNR(天然資源の開発利用に関する日米会議)耐風・耐震構造専門部会の米国側部会委員として、1974年から現在までの36年間にわたって日米両国の耐風・耐震工学の発展及び技術交流に大きく貢献されました。UJNR耐風・耐震構造専門部会は、日米両国が互いに地震、強風、高潮、津波の被害国である実情に鑑み、従来別々に行われてきた構造物の耐風・耐震設計法等の開発研究の成果を持ち寄り、政府レベルで意見交換することを主たる目的として設置されたものです。
 今回の受賞を機に、国土交通省国土技術政策総合研究所(国総研)と土木研究所は、5月28日(金)にホテルメトロポリタンエドモントにて「Strategies for Structural Robustness and Disproportionate Collapse Mitigation(構造的な堅牢性と不均衡崩壊軽減のための戦略)」に関する講演会を開催しました。講演会では、国総研の西川所長による開会挨拶、土木研究所田村耐震総括研究監による講師紹介・UJNRの活動成果報告に続き、リュー首席研究員が1時間超にわたり講演されました。リュー首席研究員が、過去に発生した建物の崩壊事例を分析された上、建物の不均衡崩壊(火災や爆発等の人為的ミスによる部分的な破壊に起因される全体の崩壊)の恐ろしさ、構造的な堅牢性の重要性、不均衡崩壊を減軽させるための技術開発に向けた最新の研究成果等を分かりやすく紹介されました。また、アメリカにおける建物の設計上の考え方や設計基準についても紹介されました。
 今回の国際貢献賞受賞と講演会の開催を通じ、今後とも、UJNR耐風・耐震構造専門部会の活動が活発に進められることが期待されます。



問い合わせ先:CAESAR

韓国建設技術研究院の趙纈潔@長が寒地土木研究所を視察


研究交流に向け握手を交わす
趙院長(左)と川村所長(右)

大きな関心を寄せたランブルストリップス

実験施設の見学(輪荷重走行試験機)

 5月17日に韓国建設技術研究院の趙纈潔@長(Cho Yong-Joo)他4名が、寒地土木研究所を訪れ、寒地土木技術について視察し交流を深めました。
 韓国建設技術研究院は、韓国政府が設立した建設分野における新技術の研究や開発を行っている研究院です。21世紀の建設技術における研究活動を世界的なレベルでリードすることをビジョンとして掲げ、建設技術の知識、情報が集約された研究院として活動しており、研究部門は構造、道路、地盤、水資源、環境、建築、防災、建設マネジメント、建設情報技術など多岐にわたっています。
 (独)土木研究所は2002年に韓国建設技術研究院と建設工学分野における研究協定を締結し、お互いの研究や研究成果の交流を進めています。今回の視察は研究協定を踏まえ、道路やトンネルなど寒冷地におけるインフラ施設の研究を推進するため、寒地土木技術に関する研究を進めている当研究所と研究交流を深める目的での視察となりました。
 視察に先立ち、寒地土木研究所川村所長から「寒地土木研究所は70年にわたり、積雪寒冷地における道路、河川、港湾、漁港、農業などの研究開発を進めている。これからも活発な技術交流をお願いしたい」と歓迎の挨拶がありました。
 趙院長からは「寒地土木研究所は私たちができなかった寒冷地土木の研究を行っている。これからも一緒にセミナーを行うなど深く交流をしたい。視察を受け入れてもらい感謝している。これからもお会いしたい」と感謝の言葉が述べられました。
 お互いの組織と活動の概要説明の後、所内施設を案内し、寒地道路保全、耐寒材料、寒地交通、寒地地盤、寒地交通の各チームの研究を紹介しました。寒地道路保全チームで紹介したアスファルト舗装の設計・施工・維持管理では「寒冷地における舗装材の違いは?」「寒冷地において施工時に気をつけるべき点は?」、耐寒材料チームで紹介した凍害と塩害の複合劣化についてでは「研究成果は国の基準に反映されているのか?」などの質問が出されました。また寒地交通チームで紹介したランブルストリップスが正面衝突事故防止や死亡事故防止に成果が上がっていることに、大きな関心を寄せている様子でした。
 今後は、つくば中央研究所とともに、韓国の研究者と関係する研究チームが交流を行うこととしています。



問い合わせ先:寒地土木研究所 寒地技術推進室

   

韓国建設技術研究院 李参熙本部長の講演会が開催される


四大河川再生プロジェクト位置図
(韓国国土海洋部パンフレットより作成)

講演をする李参熙氏

質疑応答も活発におこなわれました

 平成22年5月20日、土木研究所のICHARM講堂において、韓国建設技術研究院(Korea Institute of Construction Technology, 日本における土木研究所に相当)の李参熙(イー・サンミ)水資源・環境研究本部長をお迎えして所内講演会を開催しました。氏は平成4年にJICA研修生として、また平成7年から10年にかけては筑波大学連携大学院生として土木研究所で河川自然再生の理論と実践技術を習得し、その後の韓国における河川再生事業の発展に大きな貢献を果たされました。その功績が認められ、平成20年には韓国国民褒章を受章されています。
 今回の講演会は氏が(社)日本河川協会の平成22年河川功労者表彰を受賞し、その表彰式のために来日されるのを機に開催されたもので、当日は土研・国総研から多くの参加者があり会場がほぼ満席になるほどの盛況となりました。
 講演では、韓国で現在国家プロジェクトとして行われている治水・利水・環境にかかる「四大河川再生プロジェクト」について紹介がありました。本プロジェクトは、韓国の四大河川である漢江、錦江、栄山江、洛東江等を対象に、地球温暖化等の気候変動による洪水や干ばつの増加、水質・生態系の劣化、水辺環境の悪化といった諸問題に対応するために進められているもので、堰の建設やダム同士をトンネルで結び水を融通しあう「ダム群連携」、農業用ため池や遊水池の利用、河床を浚渫して流下能力を増やすといった治水・利水上の対策のほか、環境面においても、河川における野生生物の生息場復元、市民が利用しやすい川づくりのための河川敷の整備など、様々な施策が進められているとのことでした。講演では、プロジェクトの中枢で活躍されている氏ならではの具体的なエピソードを交えながら、わかりやすく説明していただき、講演後には活発な意見交換も行われました。
 講演の中で触れられた、「プロジェクトでは国民が理解しやすいようなビジョンを策定することが最も重要で、また一番難しい」という言葉と、信念をもってプロジェクトに取り組まれた氏の姿勢が印象的でした。



問い合わせ先:河川生態チーム

      

2010年チリ地震による橋梁の被災現地調査を実施


2010年チリ地震の概略図
(クリックすると拡大)

写真1 落橋したPC桁の斜橋

写真2 橋脚が傾斜して落橋した橋

写真3 調査結果の報告と日本の耐震設計技術の紹介

 2010年2月27日午前3時34分頃(現地夏時間)、南米チリ共和国のマウレ沖を震央とするマグニチュード8.8の巨大地震が発生しました。震源は、首都サンティアゴから南西に約350km、コンセプションから北に約100kmの位置ですが、サンティアゴからコンセプションの南部地域に至るまでの広い範囲で構造物、建物の被害や津波による被害が生じました。チリは、環太平洋地震帯に位置する国であり、我が国と同様に地震の非常に多い国で、1960年には観測史上世界最大のマグニチュード9.5の大地震が発生しています。
 今回のチリ地震による大きな災害に対し、土木研究所は、(社)土木学会からの要請を受け、(社)土木学会、日本地震工学会、(社)地盤工学会及び(社)日本建築学会の4学会協同による合同調査団のメンバーとして、CAESARの星隈上席研究員を2010年3月27日から4月7日までの行程で現地に派遣しました。橋梁関係の調査は、東京工業大学の川島一彦教授をリーダーとし、国総研の運上茂樹地震災害研究官、九州工業大学の幸左賢二教授とともに実施しました。
 被害が広範囲であったため、調査は限られた時間ではありましたが、主にサンティアゴからコンセプション間の合計31箇所46橋の調査を実施しました。調査の結果、被害の特徴としては、日本のPFI制度のように民間資金等の活用により建設された道路橋において、コストの低減や建設期間の短縮を目的として構造が簡略化されたタイプのPC桁橋や斜橋に被害が集中していることがわかりました(写真1)。また、コンセプションやアラウコでは、地盤の液状化によると思われる橋脚の傾斜や沈下が生じている橋もありました(写真2)。
 現地調査をした結果は、調査を共同で行ったチリの公共事業省の技術者らにも報告するとともに、日本の耐震設計技術の紹介、資料提供を行い、今後の復旧や耐震対策に関する意見交換も行いました(写真3)。その中で、落橋した橋の被災メカニズム等について解説するとともに、橋梁の被災と交通規制の考え方、我が国における震後緊急点検、耐震診断技術、道路橋の地震被害の変遷と耐震設計の考え方、斜橋の地震時挙動の解析例等、今後チリにおける橋梁の耐震性向上のために役に立つと考えられる技術を紹介しました。
 今回の被災現地調査をきっかけとし、今後もチリの公共事業省と必要な情報交換を継続していきたいと思っています。



問い合わせ先:CAESAR

   

12,000人が桜を楽しむ
 〜寒地土木研究所千島桜並木一般公開が大盛況のうち終了〜


多くの方々が桜を楽しみました
(低い位置にも咲くので、車いすの方でも楽しめます)

恒例のライトアップ。幻想的に演出します

重点プロジェクト研究の紹介看板。
多くの方々が足を止めました

 寒地土木研究所では5月6日から5月14日までの9日間、構内に流れる精進川沿いの200本余りの千島桜を一般公開しました。この千島桜は昭和59年、当時の職員が「構内美化のためにも皆が末永く楽しめる植物を植えたい」という願いから、道東の厚岸郡浜中町霧多布の苗木を植えたのがはじまりでした。植樹当初は幼木だった桜も、現在は3〜4mの大きさにまで成長し、例年5月初旬には一斉に開花し、見る人の目を楽しませてくれます。
 桜並木の一般公開は今年で12回目となります。今年は4月に寒い日が多かったことから開花が遅れ、大型連休明けの公開となりましたが、テレビや新聞などに多く取り上げられ、貸切バスで訪れる団体見学者もおり、12,000人を超える方々が来場し大盛況のうちに終了しました。
 今年は、構内に寒地土木研究所の研究内容を紹介する看板を設置するとともに、研究所パンフレットを配布し、訪れた方々へ研究所の活動を紹介しました。看板の前では多くの方が足を止め、興味深そうに研究内容をご覧になっていました。
 これからも桜のように寒地に根を張り、多くの方々に愛される研究所を目指していきます。


 千島桜(チシマザクラ)は、その名のとおり千島列島からサハリン、北海道では道東や道北を中心として、本州の中部以北の亜高山帯までに自生しており、例年5月初旬には2〜2.5cm程度の淡紅色や白色の花を咲かせる北方系の桜です。冷涼な気候に強いためか、一般的にはソメイヨシノやエゾヤマザクラなど他の品種の桜よりも一足先に開花する傾向があります。
 気象庁の「さくら開花予想」では主にソメイヨシノの開花が使われますが、道北ではエゾヤマサクラ、道東ではチシマザクラが使われる場合があります。いわゆる「桜前線」の終着点として、根室のチシマザクラが有名です。

問い合わせ先:寒地土木研究所 企画室

平成22年度 土木研究所研究評価委員会分科会の実施


分科会の構成

 5月21日から6月4日にかけて土木研究所研究評価委員会(以下外部評価委員会)の分科会が実施されました。
 土木研究所では、毎年、研究所が実施する研究のうち重要な研究を評価するため、大学、民間等における専門性の高い学識経験者で構成される外部評価委員会を実施しています。
 外部評価委員会の下には8つの分科会が設置されており、その分科会での評価結果に基づいて外部評価委員会で審議を行い、その結果は土木研究所理事長へ提言されます。
 8つの分科会は対象分野に応じて第1〜第8分科会で構成されており、第1〜第4分科会はつくば中央研究所、水災害・リスクマネジメント国際研究センターおよび構造物メンテナンス研究センターが実施する研究、第5〜第8分科会は寒地土木研究所が実施する研究に対し評価を行っています。
 今年度の分科会は、重点プロジェクト研究の進捗確認が中心で、委員からは、「国内のみではなく海外も視野に入れて、研究成果の普及を図るべきである」「成果の提案にもう少しコストダウンを組み込めないか」「研究の具体的なアウトカム(成果)でもある特許の獲得と利用に期待する」などの様々な意見を頂きました。

 今回の分科会での結果は、6月14日実施の外部評価委員会において審議されます。



問い合わせ先:評価・調整室

学べる、楽しめる、体験できる!!
 寒地土木研究所一般公開のお知らせ 7月2日(金)、3日(土)

写真は昨年の一般公開の様子

企業の方々も多くご来場いただきました

色んな体験ができます。
(写真はランブルストリップスの体験試乗)

子供達も興味津々

 寒地土木研究所では、研究施設を公開し、研究所の役割や研究成果を来場者に分かりやすく紹介するため、毎年7月の「国土交通Day」の一環として「寒地土木研究所一般公開」を開催しています。
 今年は7月2日(金)、3日(土)に行う予定で、「ようこそ!北の土木の新発見」をテーマに、誰もが理解できる展示、実演をとおし、学べる、楽しめる、体験できる研究紹介を14の研究チームと2つのユニットが取り組みます。また、研究内容や成果を子どもに分かりやすく伝えるために新たに作成した、子ども向けパンフレットを配布する予定です。
 他の試験研究機関や企業関係者、国や自治体などの行政関係者、大学や専門学校生はもとより、日頃は土木技術の研究とは縁のない地域の方々や子供達も多数来場され、研究の一端に触れていただいています。

■技術者のための研究説明コーナー
 今年についても昨年同様、土木技術者の皆さんからの専門的なご質問に当所の研究員がお答えする「技術者のための研究説明コーナー」を設けます。時間帯は7月2日(金)13時から15時30分までです。この時間帯以外にも研究員が駐在しておりますので、当所の研究内容について、お気軽におたずねください。
 また、同時に技術相談窓口も会場に設けておりますので気軽にお立ち寄り下さい。

■団体見学も歓迎します
 寒地土木研究所一般公開では、団体見学も受け付けています。例年、幼稚園児から小学生、高校生、専門学校生、大学生と幅広い年代の皆様からご来場をいただいております。団体見学には当所から担当者がつき、ご案内しますので、事前に連絡をいただきますようお願いします。


問い合わせ先:寒地土木研究所 寒地技術推進室
〒062-8602
札幌市豊平区平岸1条3丁目1番34号
TEL 011-590-4046
FAX 011-590-4048
URL http://www.ceri.go.jp

今年もやります「つくばちびっ子博士」
 〜7月29日(木)に施設一般公開〜


昨年の施設見学の様子(試験走路)


体験教室のイメージ写真

 毎年開催している「つくばちびっ子博士」を7月29日(木)に、国土技術政策総合研究所と合同で今年も実施します。
 つくばちびっ子博士とは、つくば市・つくば市教育委員会が主催する全国の小中学生を対象とした一般公開で、つくば市内にある研究機関等において小中学生に科学技術や自然科学に触れさせ、科学に対する興味関心を高めて夢や希望に満ちた未来を考えてもらうことを目的とした科学教育推進事業です。また、見学した施設数や感想文の提出によって、つくば市教育委員会が「つくばちびっ子博士」の認定をします。
 昨年度は38の研究機関等が参加して、延べ57,490名(前年比28.3%増)が参加した人気のある事業として定着し、見学者は年々増加しています。土木研究所では、構内を循環するバスがほぼ満員の状態で404名(前年比16.1%増)が見学しました。
 今年の公開内容は、試験走路で高速走行後、ロビーで体験教室を行います。昨年の予約状況を踏まえ、人気のある午前中にバスを昨年より1便増やします。試験走路ではバスで走りながら、施設全体の説明をした後、バンクの傾斜や高速走行を体験していただきます。そして13時と14時発の便に予約いただいた方には体験教室という土木技術を子供でも分かりやすく説明する講座をセッティングしますので、ぜひご参加ください。また、研究内容や成果を子供にも分かりやすく伝えるために新たに作成した、子ども向けパンフレットを配布します。
 見学バスは予約制で事前に電話で予約する必要がありますが、予約先、時間などの詳細は決まり次第、つくば市が発行するパンフレットや土木研究所ホームページなどでお知らせします。

※公開施設や内容は変更する場合がありますのでご了承願います。



問い合わせ先:総務課