研究成果の紹介

冬期路面状態を予測する
 〜 冬期路面管理支援システム 〜


危険なつるつる路面

冬期路面管理支援システムの概要図

冬期路面管理支援システムのサンプル画面

 積雪寒冷地では、積雪による道路幅員の縮小や、路面の凍結が発生します。特に、スパイクタイヤの使用規制以降、冬期路面管理の充実が求められています。
 寒地交通チームでは、冬期道路管理コストの削減などに資する、より適切で効率的・効果的な冬期道路管理手法の確立に向けて研究を行っています。
 冬期における路面状態の変化を予測できれば、事前の判断で適時・適切な作業を行うことが可能となり、冬期路面管理がより的確で効率的になることが期待できます。そのため、寒地土木研究所では、路面の凍結を予測する手法を開発しました。
 平成17年度から、この路面凍結予測情報と降雪予測情報などの気象予測情報をインターネットを通じて発信する「冬期路面管理支援システム」を試行運用し、路面凍結予測情報などを地図上に表示し、道路管理者に情報提供しています。気象予測情報については6時間後まで、路面凍結予測情報については16時間後まで情報提供し、作業の判断に活用してもらっています。例えば、凍結が発生する時間や区間を事前に予測することにより、効率的に凍結防止剤を散布することができます。
 現在、定点予測地点が100箇所、線的路面予測区間が8路線約155kmで情報提供を行っており、今後は、路面温度及び路面状態推定モデルの改良を継続するとともに、路線及び地点の拡大による冬期路面管理支援システムの拡充を図る予定です。



問い合わせ先:寒地土木研究所 寒地交通チーム

周辺への影響を抑制できる地盤改良工法の開発


図1 従来の地盤改良の問題点

(左)無対策  (右)コラムリンク工法による対策
図2 模型実験による検討

図3 コラムリンク工法の特徴

地盤改良工法について
 深い軟弱層の地盤に、大きな盛土や堤防を施工すると、軟弱層が圧縮して大きな地盤沈下を起こし、周辺の家屋や建物に被害が出てしまいます(図1(青))。そのような場合、事前に地盤の中にセメントの柱を作成する、深層混合処理工法と呼ばれる地盤改良を行います。特に、家屋や建物が近接する区間では、周辺への影響を抑制するため、たくさんの柱を作る必要があり、経済的ではありませんでした(図1(赤))。

新しい地盤改良工法の開発
 これらの問題に対し、施工技術チームでは、民間13社と共同して、経済性を確保しつつ、周辺への影響を抑制できる工法として『コラムリンク工法』の研究開発を実施しています。この中で、模型実験や構造解析などを行い、どのような構造であれば周辺への影響を抑制できるか検討を行ってきました(図2)。

コラムリンク工法の特徴
 コラムリンク工法はセメントの柱とセメントの壁を組合せた構造となっており、各部(内部杭、側部壁、外部杭、繋ぎ材)にそれぞれの役割分担を持たせています。 周辺への抑制効果がどの程度期待できるか。熊本・宇土道路の試験施工区間にて、現場施工による実証実験を行っています(図3)。

今後の課題
 今後は、収集した試験データの分析や設計・施工マニュアルの作成、工法のPR等に力を入れて行く予定です。



問い合わせ先:施工技術チーム

雪崩災害に備えた現場向けの手引書を発刊


写真1 雪崩で押し流されたバス

図1 パトロール時の着眼点の例
(雪庇や吹きだまりの場合)

写真2 雪庇処理の例。「横方向に並んで作業」「直下には入らない」「落とした雪で雪崩を誘発させないように小割にすること」等の注意事項も記載

20年ぶりの大雪だった「平成18年豪雪」
 最近は暖冬傾向が続いているとはいえ、雪崩災害は毎年発生しています。
 今年2月6日に長野県山ノ内町(志賀高原)で発生した雪崩災害では、雪崩で押し流されたバスがホテルの玄関に衝突し、2名の宿泊客が負傷しました(写真1)。
 20年ぶりの豪雪となった「平成18年豪雪」の際は、久しぶりの豪雪となったことから関係者を慌てさせることになりました。
 この時得られた教訓は、「仮に暖冬が続いたとしてもいざという場合に備えて関係者が適切な対応を迅速にとることができるよう、雪崩災害に結びつく危険箇所のパトロール(点検)や応急対策の方法をこの機会をとらえて体系的に整理しておく必要がある」、ということでした。

各地で行われているパトロール、応急対策の事例をとりまとめ
 今回まとめた『豪雪時における雪崩斜面の点検と応急対策事例』は、パトロールや応急対策の実務に携わる行政担当者や作業担当者を主な対象者として、北海道や北陸地方などで実際に行われている事例を取り上げて現場向けの手引書として作成したものです(ファイルのダウンロードはこちらで準備中 )。土木研究所で雪崩に関する研究を行っている雪崩・地すべり研究センター(新潟県妙高市)と雪氷チーム(北海道札幌市)が担当しました。
【主な内容】
・雪崩の基礎知識(雪崩の種類、発生メカニズムなど)
・雪崩発生の兆候や斜面の積雪状況を観察する際の着眼点
(雪庇や吹きだまり、積雪斜面のクラックなど、図1)
・危険箇所の点検・管理方法(点検カルテのまとめ方など)
・応急対策の方法(人力、機械による雪庇の除去など、写真2)

雪崩災害を防ぐために
 毎年12月1日〜7日は「雪崩防災週間」です。たとえ豪雪年とはならなくとも、局所的に大雪が降ることがあるため、決して安心はできません。
 本格的な雪のシーズンに入る前に、雪崩の危険性が高い場所のパトロールや住民への周知を促す活動が各地で行われます。土木研究所では、この期間中である12月3日に雪崩災害防止セミナー(プログラムはこちらで今後公開)を岐阜市内で予定しています。今回発刊した手引書と合わせて、これらの取り組みが雪崩災害による被害の根絶に少しでも役立つことを願ってやみません。



問い合わせ先:雪崩・地すべり研究センター、
           寒地土木研究所 雪氷チーム