研究の紹介

草木類に潜むエネルギーを利用せよ!


写真1.草刈りの様子

写真2.大量の草木廃材

図1.道路と河川管理由来の草木類の含水率

 1.バイオマスは地球にやさしい資源
 地球温暖化対策の一つとして、バイオマスの利用が注目されています。バイオマスとは、生ゴミ、下水汚泥、家畜糞尿、草木廃材などのように有機物を含んだ資源で、元をたどると植物などの再生可能なものに由来する物質であるため、これを燃やしても(再び植物等がCO2を吸収して資源を再生することから)、石油などと異なり大気中に温室効果ガスを蓄積せず、温暖化には寄与しません。バイオマスは利用しなければ厄介な廃棄物ですが、うまく利用すれば地球にやさしい資源です。

2.河川や道路由来の草木類に潜む大量のエネルギー
 毎年、河川や道路、公園などの管理のために、除草や樹木の選定が行われ、大量の草木廃材が発生しています(写真1、2)。これらは現在十分に利用されていませんが、私たちの調査で、これらが本来持っているエネルギー量が相当に大きいことが分かりました。アンケート調査と試料分析などから推計した結果、国が管理している道路や河川等で1年間に発生する草木類だけでも、それが保有する熱量は重油に換算すると約8万5千m3、すなわち50mプール(50m×25m×2m)約34杯分の重油と同じエネルギーに相当するのです。

3.実際に利用可能なエネルギーは?
 ところが、どんな燃料でも本来持っているエネルギー量を100%利用することは不可能です。燃やして利用するときにはボイラーの熱ロス、発電する際にも多くのエネルギー損失が発生します。また、燃料が水分を含む場合、それを水蒸気にするための熱エネルギー(潜熱といいます)が使われるため、物質が本来有する熱量(高位発熱量)から潜熱を引いた熱量分(低位発熱量)しか利用できません。このため、バイオマスに含まれる水分の割合が燃料としての有効性に大きく影響します。

4.適材適所の使いみちの検討
 図1は道路と河川管理由来の草木類の含水率です。河川維持の場合、刈草を数日間乾燥させて搬出することが多いため、低含水率のものが多いですが、天候の影響か含水率が60%程度のものも見受けられます。道路維持作業では、剪定枝などをその場に放置するスペースが無いため、剪定後すぐに搬出していると見られ、含水率も高くなっています。したがって利用の際には、保管時に雨にさらさない、出来れば利用前に天日や廃熱で十分に乾燥する、ということがエネルギー効率の面で大きな違いをもたらします。水分の多いバイオマスは、燃やさずにメタン発酵などの化学的プロセスによりエネルギー回収することが有効です。しかし、未乾燥の材料でも、それ以上に水分の多い下水汚泥の焼却時(重油を投入して焼却します)の補助燃料として利用すれば、エネルギー的には一定の効果があることを、実証プラントの燃焼試験などから確認しました。
 これらの実験結果から、草木バイオマスの含水率などの違いによって、メタン発酵や補助燃料などの“適材適所”の使い方があることを明らかにしました。



問い合わせ先:リサイクルチーム

汽水湖における底泥からの栄養塩溶出特性に関する調査


図1 油ヶ淵位置図

写真1 底泥溶出試験の様子

図2 塩分0%・好気条件の方が
窒素・りんの流出が少ないので、
海への負荷が小さい

 伊勢湾流域の下流部に位置する油ヶ淵(あぶらがふち)は、面積:0.64km2、周囲:6.3km、平均水深:3mの汽水湖(海水と淡水が混じり合った湖)です(図1)。流域の都市化により水質の汚濁が進み、全国的に見ても汚濁した湖沼の一つとなっています。
 本研究では、油ヶ淵における汚濁の状況を調べるため、次の2つの調査を行いました。

 (1)油ヶ淵への流入河川である長田川・半場川と、主な流出河川である高浜川(図1)において採取した表流水の窒素・りんの分析と、流量の観測を行いました。
 (2)底泥からの栄養塩溶出と底泥直上水(底泥のすぐ上の水)との関係を把握するため、油ヶ淵の底泥をアクリルパイプにて採取し、下記の3条件のそれぞれについて、好気条件(溶存酸素が十分に存在する状態)と嫌気条件(溶存酸素が存在しない状態)で溶出試験を行いました(写真1)。それぞれのアクリルパイプの底泥直上水を実験開始後数時間ごとに採取し、窒素・りんの分析を行いました。
 1.油ヶ淵底泥直上水(塩分1.6%)
 2.油ヶ淵表層水と海水の混合水(1:1) (塩分1.5%)
 3.油ヶ淵表層水(塩分0%)

 流入・流出河川の水質分析結果と底泥溶出試験の結果より、年間栄養塩負荷収支を計算した結果、湖沼底層水の条件が塩分0%・好気条件の方が、塩分1.5%・嫌気条件より窒素流入負荷の1割程度、りん流入負荷の3割程度、底泥からの溶出が減少し、湖沼からの流出負荷が減少することがわかりました(図2)。したがって、底層水を淡水・好気条件に保つことによって油ヶ淵の栄養塩負荷の削減、更には下流の伊勢湾への流入汚濁負荷の削減が可能になることが確認できました。



問い合わせ先:水質チーム