土研ニュース

平成22年度土木研究所講演会を開催しました


魚本理事長の挨拶

滝口 太氏による特別講演

会場の様子

プログラム

 平成22年10月14日(木)、東京虎ノ門の日本消防会館(ニッショーホール)において、平成22年度土木研究所講演会を開催しました。
 本講演会は、土木研究所で実施している調査研究の成果や最近の土木技術に関する話題・動向について、広く一般の方々にご紹介するために開催しているものです。
 講演会当日は、民間企業を中心に公益法人、地方公共団体等より約460名の方々にご参加をいただきました。
 土木研究所職員による一般講演では、災害調査報告として、チリ地震による橋梁の災害調査、広島県庄原市での集中豪雨により発生した土砂災害、パキスタン・インダス川の洪水に関する報告を行いました。また、各分野における技術基準類やマニュアルとその技術的背景について講演を行いました。
 特別講演では、独立行政法人宇宙航空研究開発機構防災利用システム室長の滝口太氏をお招きし、「衛星開発と利用−宇宙から地球を見る−」と題しご講演いただきました。
 参加された方々からは、講演終了後にアンケートを通じ、「日本の研究レベルの高さ、密度、世界への貢献度が大変よく分かった」「毎年の土研の研究成果をまとめて知る機会であり役立っている」「貴重な成果を勉強させて頂く良い機会でした」といった声が寄せられました。聞いてみたい講演テーマとしては、「世界の中での日本の土木水準と各国の優れた土木技術の紹介等」「衛星データを活用した流出解析、氾濫解析、洪水予測の事例」「災害報告と同様に外国での対応対策内容」等が、土木研究所に対する要望では、「もっと色々な分野のテーマがあると思われるので、別の機会にでも聞きたい」「海外における日本のSpecの浸透を図るような行動を期待する」等の意見が寄せられました。
 次回以降も土木研究所の優れた研究成果等を報告する場として、よりよい講演会づくりに一層努めて参りたいと思います。



問い合わせ先:研究企画課

山形県知事より、七五三掛(しめかけ)地区で発生した地すべり対応に関する感謝状を贈呈されました


写真-1 地すべりにより被害を受けた集落

写真-2 現地において指導中の藤澤

写真-3 井戸内の集水ボーリングから地下水を集めている状況(井戸の上部から井戸内を見ている状況。写真右側には地下水を集めている横穴(集水ボーリング)が見える。)

 1.感謝状を贈呈される
 平成21年に山形県鶴岡市七五三掛地区において大規模な地すべりが発生し、人家や水田などに大きな被害を与えました(写真-1)。土木研究所地すべりチーム上席研究員(現轄qャ道路総合技術研究所砂防研究担当部長)の藤澤は同年5月29日付で七五三掛地域地すべり対策アドバイザーとして山形県知事より委嘱を受け、地すべり対策に関する現地での指導や助言を行ってきました。この活動に対する感謝状が山形県知事より贈呈されました。

2.七五三掛地区地すべりについて
 平成21年2月に住宅敷地内において、地すべりが原因と思われる亀裂が発生し拡大していることが確認され、4月後半以降には地すべりの動きが次第に活発となりました。この地すべりの規模は、長さ約700m、幅約400mと大きく、またその動きは最終的には水平方向に7.8m、高さ方向に1.6mにも及びました1)
 当地区を地形的に見ますと、過去の大規模な地すべりによって現在の緩斜面が形成されており、その地すべりの一部が再活動を始めたものと見ることができます。現地調査の結果、地表面で湧水が見られるなど地下水位が高いことがわかり、この地下水が地すべりの誘因となって発生したものと考えられました。そのため、土木研究所では、雨水など地表の水の地中への浸透を防ぐことや、地下水を抜くことが効果的な対策であると判断し、地表面排水路、地下水を集めるための井戸(集水井)や横穴(集水ボーリング)(写真-3)などを急いで施工することが必要であるなどのことを助言しました。

3.おわりに
 私たち土木研究所地すべりチームでは、これからも地すべり防止のための研究や、地すべり災害が発生した際の迅速かつ適切な対応と支援が行えるように努めていきます。

1)
http://www.thr.mlit.go.jp/shinjyou/03_sabou/jisuberi/jisuberi.html#a (新庄河川事務所ウェブサイト)

問い合わせ先:地すべりチーム

   

私たちは、土木技術の「ホームドクター」です!
 〜“橋梁点検勉強会 in 神恵内”を開催 〜


図−1「橋梁点検勉強会 in 神恵内」会場

写真−1 基礎講習の様子

写真−2 橋梁の点検ポイントの説明を受ける参加者

 寒地土木研究所は土木技術のホームドクターとして、北海道や道内市町村の自治体に対し技術相談、技術指導、講師派遣などの活動を行っています。
 その一環として、10月13日(水)、“橋梁点検勉強会 in 神恵内(かもえない)”を北海道開発局小樽開発建設部と合同で開催しました。この勉強会は、小樽開発建設部、神恵内村、後志管内市町村の橋梁点検及び補修担当者を対象に、橋梁点検に係る基礎講習と現地実習を行ったものです。
 当日は42名の参加があり、午前は、神恵内村漁村センターを会場に「橋梁点検基礎講習」を、また午後からは、村内の古宇(こう)川に架かる村道茶屋町線茶屋町橋において「橋梁点検現地実習」を行いました(図−1)。
 基礎講習では、寒地構造チーム三田村浩主任研究員から「橋梁点検のための基礎知識」と題して、橋の形式及び構成といった基礎知識や、橋の分類別に、いかに点検が重要であるか、もし放置したままにした場合、どのような危険となるのかを、損傷や落橋等の最近の事例を交えて講義しました(写真−1)。
 また、現地実習では、参加者へあらかじめ配付した「点検表」に記入してもらいながら、茶屋町橋の「模擬点検」を行い(写真−2)、佐藤京研究員から、橋梁に生じていた損傷箇所に対する補修方針、事象に合わせた補修対策等について解説しました。
 今後、老朽化する道路橋は、急増することが予想されています。この問題に対応するためには、従来の事後処理的な対応から、予防保全的な修繕へと転換し、橋梁の長寿命化、コスト縮減を図りつつ、道路ネットワークの安全性、信頼性を確保していくことが急務となっています。
 寒地土木研究所(土木技術のホームドクター)では、今後も北海道開発局と連携して、道内市町村等の土木技術の課題解決に向けた支援を行って参ります。お気軽にご相談ください。



問い合わせ先:寒地土木研究所 寒地構造チーム

      

パキスタン・インダス川の2010年洪水
 〜ICHARMからもUNESCO調査団に同行〜


7月30日、激しいモンスーンに起因した洪水で冠水したNowshera市(AP写真/Mohammad Sajjad)

パキスタン洪水の被害(2010-11-1) 出典: NDMA, 州災害管理事務所, ギルギット・バルティスタン州災害管理庁

インダス川のTaunsa 堰の出水時(2010年8月6日)と平常時(2009年10月2日)の衛星写真(JAXA提供)

 7月下旬から8月、パキスタンは史上最悪のモンスーンに起因した洪水を経験しました。被害はその後、インダス川下流に広がり、11月1日時点の国家災害管理庁(NDMA)の発表では、死者1,984人の死者、174万4千戸余が全壊、半壊、18百万人以上の人が被災しました。パキスタン気象庁(PMA)の報告では、カイバル・パクトゥンクワ州で、7月最後の週、4日間雨が続き、7月29日には、ペシャワールで日雨量274mmを記録しました。カシミールのパキスタン領、ギルギット・バルティスタン州でも、異常な豪雨に見舞われ、広範な被害を受けました。その後、インダス川下流域に洪水が広がっていきました。
 国連などの国際機関、援助機関が緊急支援を開始し、ICHARMも、8月23日から26日までのUNESCO調査団と共にパキスタン入りし、イスラマバードで、パキスタン政府と議論しました。洪水予警報、飲み水のための地下水調査、上流山岳地帯の土砂災害対策、洪水の状況と原因の解明といった今後の協力が確認されました。
 国連人道問題調整事務所(OCHA)の報告によると、11月4日現在も最下流のシンド州では、数千人の人々が洪水の氾濫水にとらわれて、救助物資を求めていました。洪水から3カ月たっても、救済計画の40%しか資金調達されていませんでした。そのため、支援の立て直しと、平等な物資の配達が不可欠です。
 7月下旬から、Tarbelaダム直上流のインダス川と右支川カブール川とで河川流量が増大しました。カブール川の上流はアフガニスタンですが、そこからの流入は確認されておらず、パキスタン国内のSwat川などの支川からあつまってきた流量が一気に集中して、ペシャワール市周辺のカブール川の流量が増えたと考えられます。
 パキスタンでの指導的な科学者や研究機関と、イスラマバードで協議を行いました。その結果、洪水・地下水・土砂問題について、短期・中長期的にパキスタン主導で行うべきことが明確になり、短期的には、以下の4つの活動が優先課題として挙げられました。
1)なぜ今回の洪水が観測史上最悪になったのかを科学的に説明するため、またそういった災害を将来回避するまたは軽減する方法を明らかにするため、最近の洪水について調査する。
2)とくにフラッシュフラッドの予報を行うため、老朽化した早期警報システムを修復する。
3)洪水の影響を受けた地域内で、安全な地下水をくみ上げられる場所を特定する。
4)コミュニティの回復を支援するために、避難キャンプにおける地すべりのリスクを明らかにする。



問い合わせ先:ICHARM

   

平成22年度大規模津波防災総合訓練に参加しました


壊れた家屋から被災者を救助・救護

崩落箇所の確認を行う伊東佳彦上席研究員(中央)

パネルの説明をする寒地河川チーム
大串総括主任研究員(左から2人目)

 平成22年10月16日(土)に北海道釧路市で「平成22年度大規模津波防災総合訓練」が行われました。
 この訓練は平成16年12月26日に発生した「スマトラ島沖地震(インド洋沖地震)」の津波災害をきっかけに始まり、平成17年から毎年実施されています。今年度は、地震が多発する釧路地方を舞台に多くの防災機関(関係65団体10,000人)が参加して開催されました。寒地土木研究所からは防災地質チーム、寒地河川チーム、道東支所が参加しました。
 訓練は日本海溝・千島海溝周辺海溝型地震による大規模な津波災害の発生を想定し、訓練参加機関の相互協力による災害時における応急対策の迅速化・円滑化を図るとともに、住民とも連携した実践的な訓練を実施することにより、地域住民の津波防災に関する知識の普及・啓発を図り、地震・津波による被害の軽減を目指すために実施されました。
 具体的な訓練は、十勝沖でマグニチュード8.2の大地震が発生し、太平洋沿岸に10メートル以上の大津波が押し寄せたという想定で、様々な対応が展開されました。
 二次災害防止訓練では国道で大規模土砂崩れが発生し、車両が1台巻き込まれているという想定で訓練が展開されました。被災車両は北海道開発局により発見され、災害対策本部に救助が要請されました。要請を受け、釧路市消防本部は直ちに救助隊を派遣し対応を行うこととし、国土交通省TEC-FORCE(緊急災害対策派遣隊)は救助作業中に作業者が更なる土砂崩れにより被災しないよう、小型無人ヘリコプターで監視を行いました。寒地土木研究所から斜面災害の専門家である防災地質チーム伊東佳彦上席研究員が、小型無人ヘリコプターからの映像により崩落箇所や周辺の斜面を確認し、落石や再崩落する可能性の高い箇所についてTEC-FORCEへ見解を伝える訓練に参加しました。当研究所はこれまでも土砂崩落災害の被害状況の把握や崩落原因の調査を行っており、そうした活動で培ったノウハウが訓練でも生かされました。
 会場内には展示ブースが設けられ、寒地土木研究所で行っている地震や津波に関する研究のパネルを展示しました。



問い合わせ先:寒地土木研究所 企画室

      

札幌工業高等学校からインターンシップ(就業体験)を受け入れました


アスファルト調査と道路騒音測定

コンクリート開水路側壁の凍害劣化調査

石組み帯工を体験

 昨年に引き続き札幌工業高等学校土木科2年生3名をインターンシップ(就業体験)として9月14日から16日までの3日間寒地土木研究所で受け入れました。このインターンシップは高校生に望ましい勤労観や職業観を養い、主体的に進路選択ができる能力や態度を育むことを目的に、札幌工業高等学校が地域や地元企業、行政機関などと連携協力して実施しているものです。

9月14日
 初日の午前中は、異なるアスファルト混合物の種類を用いた低騒音舗装の試験施工区間がある札幌市西区の一般国道5号で寒地道路保全チームの安倍主任研究員、三田村研究員の指導の下、アスファルトの状態を調査し、道路交通騒音を測定しました。午後からは耐寒材料チームの下谷研究員の指導により、鉄筋コンクリート内の鉄筋の腐食状況を自然電位法で測定・確認する実験作業を行いました。初めて扱う測定器に戸惑いながらも、3人で協力し合って作業をこなしていました。

9月15日
 2日目は北海道北部の和寒町にある剣和幹線用水路で、昭和49年に施工されたコンクリート開水路側壁の凍害劣化を調査している水利基盤チームの佐藤主任研究員と金田研究員の指導により、データロガーに収録された温度データの回収作業を体験し、様々な計器を用いて凍害状態を観測しました。

9月16日
 午前中は寒地技術推進室道央支所の石谷主任研究員と桃枝研究員の指導の下、1時間の座学の後、2時間ほど川に入って多自然川づくりの一環である石組み帯工を体験しました。ポイントは「魚の気持になって」力石、輪石、根石を上手に組み合わせること。飲み込みが早く、しっかりとした石組みが完成しました。
 午後からは水環境保全チーム矢部総括主任研究員と豊平川河畔林で樹種による生育状況の違いを調査しました。生育状況を測定する前の調査対象樹木の特定では3人で図鑑と睨めっこしながら、四苦八苦していました。
 3日間という短い期間でしたが、当研究所で行っている調査や試験等を実際に体験し、社会の一組織の中で働くということを経験することで、将来の進路を決める上で何らかのヒントを得たことでしょう。



問い合わせ先:寒地土木研究所 寒地技術推進室

      

「土木の日2010一般公開」を開催しました


研究施設の公開「橋の撤去部材」

体験教室「あっと驚くコンクリートのおもしろ話」

関東地方整備局の働く自動車
パトロールカーの公開

橋コンテスト「表彰式」

サイエンスカフェ
「地すべり災害について学ぶ」

 去る11月6日土曜日、土木研究所と国土技術政策総合研究所の共催で「土木の日2010一般公開」を開催しました。このイベントは、広く一般の方に、両研究所と土木事業についての理解を深めてもらうことを目的として毎年行っており、今年で17回目を数えます。当日は晴天に恵まれ、782名の来場者がありました。
 今年も毎年恒例の実験施設の公開や土木体験教室を開催しました。実験施設公開では、舗装走行実験場、ダム水理実験施設、土石流発生装置、試験走路を公開し、詳しい解説を交えながら実験や実演を行いました。
 また、土木体験教室では、「あっ!と驚くコンクリートのおもしろ話」など様々な体験型イベントを開催し、子供から大人まで楽しく土木について学んで頂きました。
 その他、関東地方整備局の茨城県内の4事務所にご協力をいただいた「働く自動車の展示」、つくば市内の小学校5年生の力作がそろった「ボール紙でつくる橋コンテスト」の作品展示および作品展示、コーヒーを飲みながら地すべり災害について学ぶ「サイエンスカフェ」など幅広い年齢層に楽しんでもらえるイベントも開催しました。
 来場者からは、アンケートを通して「説明が丁寧でよかった」、「今後も継続して欲しい」などの感想が多数寄せられました。普段は見ることのできない研究所の実験施設等で、身近な話題を取り上げ解説したことで、一般の方が土木をより身近に感じ、理解を深めてもらえたのではないかと思います。
 土木の日一般公開は、研究所の研究内容や土木事業の重要性をアピールする数少ない機会の一つです。次回もよりよいイベントにしたいと思っていますので、ご期待下さい。



問い合わせ先:研究企画課

      

平成22年度 土木研究所内部評価委員会の実施


内部評価委員会の様子

 11月16日〜18日に土木研究所内部評価委員会が実施されました。
 土木研究所は、主務大臣が定めた達成すべき業務運営に関する目標(以下「中期目標」という)に基づき、その「中期目標」を達成するための計画が定められています。本年度はその中期目標期間の最終年度で、来年度から新たな中期目標期間が始まります。
 このたび、新たな中期目標期間における土木研究所の研究体系が整理され「プロジェクト研究」「重点研究」「基盤研究」の3つの体系で研究を実施することとなり、今回、実施された土木研究所内部評価委員会では、3つの体系のうちより重要な、プロジェクト研究の事前評価について、新たな体制の下、総勢26名の評価委員により審議されました。。
 この内部評価委員会の結果は、来年1月中旬にかけて行われる外部評価委員会の各分科会の審議を経て、1月末実施の外部評価委員会において審議されます。
 なお、重点研究及び基盤研究を対象とした内部評価委員会については、12月7、8、14、15日の4日間おこなわれます。



問い合わせ先:評価・調整室

      

「産業交流展2010」の出展報告
 〜 中小企業による国内最大級のトレードショー 〜


展示内容
(展示パネル左から、消化ガスエンジンシステム、
打ち込み式水位観測装置、貸付制度)

来場者の様子

 東京ビックサイトで11月10日から3日間開催された産業交流展2010 に土木研究所が出展し、開発した10種類以上の新技術と、保有する実験施設等の貸付制度について展示を行いました。
 この展示会は、優れた技術や製品を展示し、販路拡大、企業間連携の実現、情報収集・交換などを目的に開催されたもので、開催期間中の展示会来場者数は延べ5万人以上となりました。

 今回展示を行った新技術と貸付制度の2つのサービスは、今までも土木関係にとらわれない幅広い分野で使っていただきたいと考えてPRを行ってきました。今回の展示会は「情報」「環境」「機械・金属」「医療・福祉」がテーマということもあり、ブースに立ち寄っていただいた方の多くが直接土木に携わらない企業、関係者の方々であり、また、何らかの形で土木研究所と関わりがあっても、新技術や施設貸付の活動をご存じなかった方も多く、土木研究所自体を、さらに活動内容についても知っていただく貴重な場となりました。

 また、土木分野にこれから参入予定の企業の方からは、「新技術を活用したビジネスも検討する」といったご意見をいただいたりと、新技術の活用や、土研施設を使った試験などを検討された方が多数見受けられました。
 この展示会に出展できたことは幅広い分野の方々へ、土木研究所の活動内容を紹介する上でとても有意義な機会になったと思っています。



問い合わせ先:業務課