研究成果の紹介

透水性舗装の車道への適用に関する研究
 〜 集中豪雨による洪水被害を軽減する舗装 〜


図−1 近年の短期集中豪雨

図−2 車道透水性舗装の概要

(出典)ワトキンス・レポート
図−3 雨天時の道路状況1950年代
(雨水が道路に浸透しぬかるんでいる)

 近年、都市部において地球温暖化やヒートアイランド現象等を背景として集中的な豪雨の件数が増加しています(図−1)。特に、都市部の地表面はビルや道路など水を通さない構造物に大部分が覆われており、集中的な豪雨の際には、雨水が直接河川や下水道に流出し、氾濫を起こすことが多くあり、このような水害が都市部で多発しています。
 これらを背景として2003年6月に「特定都市河川浸水被害対策法」が成立しました。この法律により指定された地域では、車道においても一定規模以上の開発を行う場合、雨水流出抑制対策を行うことが必要となりました。その対策の一つとして「透水性舗装」が持つ雨水流出抑制性能が注目されています。
 「透水性舗装」は、舗装全体を透水性の高い材料で構成した舗装であり、雨水を表・基層のみでなく路盤以下にも浸透させる構造を有しています(図−2)。そのため、雨天時における車両の走行安全性の向上や路面騒音低減機能など排水性舗装と同様な性能を有していると共に、雨水流出抑制性能、地下水の涵養、街路樹の育成など様々な機能を有しています。
 これまで、「透水性舗装」は主に歩道部や軽車両の駐車場等に採用されて来ましたが、透水性舗装の車道へ適用された実績は少なく、舗装の耐久性や流出抑制性能の算定法等が確立されていませんでした。舗装チームでは車道における「透水性舗装」の実用化に向けた検討を行っています。
 道路に安易に水をしみこませるとどうなるでしょう。図−3は未舗装道路に雨がしみこんだ路面の状況ですが、交通荷重が繰り返し作用することにより路面は強度を失い、ぬかるんだ状態になっています。このため、世界の舗装技術者は舗装内には水を入れないことを基本としてきました。しかし、「車道透水性舗装」は路面に水をしみこませるのですから、世界の常識の逆を行くものです。「車道透水性舗装」は日本独自の発想であり、世界の常識を日本の技術力で解決しようという世界唯一の技術です。
 舗装チームでは、室内試験、実大試験舗装の結果に基づいて暫定的な技術基準として2005年に「道路路面雨水処理マニュアル(案)」のとりまとめを行いました。現在は、実道での定量的な耐久性の評価を行うため、日本国内10箇所の重交通道路で試験舗装を実施しています。試験舗装では、供用から約5年経過時点で、舗装の耐久性に問題は発生していないことが確認されておりますが、長期的な耐久性検証のため引き続き継続調査を実施しています。



問い合わせ先:舗装チーム

      

透明折板素材を活用した越波防止柵の開発  
 〜採光性に優れ、景観に配慮した越波対策工〜


越波の状況

載荷試験の状況

現地での採用状況

 海岸沿いの道路では、天候の影響により越波が発生することがあり、それに伴う交通規制によって、地域生活や産業活動に支障をきたすことがあります。このような越波作用に対して、円滑な道路交通を確保するための対策の一つとして、道路沿いに設置する越波防止柵があります。このような越波防止柵には、波の作用による大きな圧力や、波と共に運ばれる飛石の衝突に耐えうる性能を有するとともに、設置場所によっては採光性に優れ景観にも配慮した構造であることが望まれます。一般的には、鋼製の支柱と穴の開いた波形状の鉄板(有孔鋼板)を組み合わせたものが用いられていますが、有孔鋼板からなる越波防止柵は周囲の視界を遮ることから、景観に配慮するような場合には必ずしも好ましいとは言えません。これらのことから、耐衝撃性や採光性に優れ景観にも配慮でき、コスト的にも従来のものより安価な越波防止柵の開発を検討しました。
 新たな越波防止柵の開発に当たっては、衝撃や温度変化に強く、透明で変形しにくい材料であるポリカーボネートに着目しました。この材料は、その特徴を生かし、ヘルメットや防護楯などの保安・安全製品、家庭電化製品、建物・建築資材など我々の身近にある様々なものに利用されています。ポリカーボネートを活用した越波防止柵は、耐衝撃性・耐候性に優れた両面耐候処理された透明なポリカーボネート板を用い、作用荷重の大きさによって、より経済的となる板厚・形状寸法を決定し、折板形状にすることによって、大きな越波荷重にも耐えうる構造としています。また、ポリカーボネートの平板を採用した場合と比較すると、板厚を極端に薄くすることが可能となり、材料コストを縮減することが可能となりました。しかしながら、ポリカーボネート自体は樹脂であり比較的柔らかい素材であることから荷重作用により変形が生じるため、ポリカーボネート折板端部の固定方法によっては固定部からのひび割れや破損を起こす場合があります。この点を解消するため、固定部分はポリカーボネート折板を金物により面的に挟み込み、折板の傾斜部中央を貫通ボルトで固定する構造としています。
 本工法が越波対策の一助として役立つことが出来れば幸いです。



問い合わせ先:寒地土木研究所 寒地構造チーム