研究成果の紹介

岩盤中の弱層の強度を求める
 〜 弱層のせん断強度シミュレーション 〜


岩盤

図−1 岩盤中の弱層(上)とせん断モデル(下)

図−2 弱層のせん断強度シミュレーション結果

 岩盤中には、断層や節理のような弱層が含まれていることがあります(図−1)。弱層は周囲の岩盤に比較して強度が低く、建設工事では障害となります。通常、岩盤の強度を正確に求めるには原位置せん断試験等の大がかりの力学試験が必要です。原位置せん断試験を行うには横坑内で底面積60×60cm、高さ30cmの岩盤ブロックを切り出すなどして整形しなければならないことから、時間やコストがかかります。さらに岩盤中に弱層を挟む場合には、軟質なため試験面の整形が困難であることが多く、原位置で試験を実施できる場合は限られています。
 そこで地質チームでは、弱層の凹凸形状や壁面(岩盤)強度のように取得が比較的容易な物性値を用いて間接的にせん断強度をシミュレーションする方法を開発しました。これは、あらかじめ計測した不連続面の上下の凹凸壁面を順次0.5mmずつ変位させ(図−1)、凹凸形状の重なりをシミュレーションし、せん断抵抗箇所の面積を予測しせん断強度を算出しています(図―2)。
 将来はこの手法をダムの基礎岩盤や、のり面斜面等の地質調査に適用することにより、既往の原位置せん断試験を補完し強度評価の信頼性を向上させるとともに、調査のコストを縮減することが可能となります。



問い合わせ先:地質チーム

      

港内防風雪施設の整備効果
 〜 積雪寒冷地の作業効率の改善 〜


冬期漁港の寒冷環境下での網外し作業風景

防風施設整備後の網外し作業風景

作業効率の改善を表すグラフ
ペグボード:棒を穴に差し込んでいく試験
タッピング:第2 指でカウンターを叩打

港内防風雪施設について
 北海道のような積雪寒冷地における港湾・漁港では、氷点下の低温、強風、吹雪などそこで働く人にとっては大変厳しい作業環境におかれます。このような劣悪な環境のため、作業の効率低下、舗装の凍結や注意力の低下などによる安全性の問題、さらには高齢者の健康に与える影響も心配されます。そこで、冬の厳しい作業環境を改善するために、港の岸壁近くに風や雪を防ぐための防風雪施設の設置が進められています。

港内防風雪施設の整備による作業効率の改善効果
 これまで、港内防風雪施設は、衛生管理向上や就労環境改善等の整備効果が説明されていましたが、具体的な数値で表現する方法がありませんでした。そのため、作業環境改善及び作業効率向上に関して、定量化するための研究を行いました。
 まず、風速と温度から導かれるWCI(寒冷下で作業を行う人の体感温度などの心理反応を適切に表すことのできる温熱指標)と作業効率を関連づける実験を行い、右のグラフのようなWCIと作業効率の関係が得られました。この図ができたことで、現地の温度と港内防風雪施設整備前と整備後の風速の違いから作業効率の差を推定できるようになりました。
 この作業効率改善率に作業時間を掛け合わせて作業の短縮時間が計算でき、港内防風雪施設の整備効果を定量化できるようになりました。

港内防風雪施設のガイドラインの作成について
 港内防風雪施設を建設したいと考えた人が、調査、計画、設計といった一連の作業を円滑に行えるように、基本的な考え方を整理したガイドラインを作成しました。また、現在考えられる港内防風雪施設の整備効果を整理するとともに、(独)土木研究所寒地土木研究所の研究成果である「作業環境改善及び作業効率向上に関する定量的に評価する方法」を併せて掲載しています。



問い合わせ先:寒地土木研究所 寒冷沿岸域チーム