研究成果の紹介

循環型社会の実現に向けて
 −北国におけるアスファルト舗装の再利用技術−


アスファルト舗装材料のリサイクル
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低温による舗装のひび割れ

舗装材料の低温環境下での曲げ強度試験

国際的に環境保全への関心が向けられており、あらゆる分野で循環型社会の構築に向けた研究が行われています。道路舗装分野もその例外ではなく、我が国では1980年代からアスファルト舗装材料のリサイクルが本格的に行われています。積雪寒冷地である北海道においても、1998年度から使用済みアスファルト舗装の再利用がはじまっており、今後は「一度再生利用した材料を再度リサイクルする」ことが予想され、再生利用を繰り返すことによる材料としての品質の低下が懸念されます。

舗装のリサイクルに関する従来の研究では、再生アスファルト材料の高温状態での耐久性の検討やアスファルトの科学的な成分の分析が中心となっており、積雪寒冷地で問題となる舗装のひび割れを起こす低温状態での研究は進んでおらず、積雪寒冷地においてアスファルト舗装材料を長期的に繰り返し利用するためには低温状態における物理的性質の研究が必要でした。また、現在規定されているアスファルト再生材料の品質規格は、本州などで使用されているアスファルトに対する試験の結果から決定されたものですが、北海道などの積雪寒冷地では舗装が使用される環境や使用している材料の性質が大きく異なり,低温時の横断ひび割れ現象などを防止するためには同一の品質規格値では十分ではないことが考えられました。
 
そこで寒地道路保全チームでは、積雪寒冷地において再生利用を繰り返した場合にアスファルト再生材料の低温時の状態にどのような影響があるのかを明らかにし、さらに現在のアスファルト再生材料品質規格の積雪寒冷地における妥当性を評価しました。
その結果、現在の品質規格でリサイクルを何度も繰り返すと舗装の強度が低下し、低温状態で脆くひび割れやすい材料となること、また、現在の品質規格は積雪寒冷地での再生利用を想定すると極めて厳しい条件であることがわかったため、積雪寒冷地において長期的にアスファルト舗装材料を再生利用していくために必要な品質の規格値を提案しました。



問い合わせ先:寒地土木研究所 寒地道路保全チーム

      

迅速かつ安全に地すべりのすべり線形状を推定する!


図-1 本手法のイメージ
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検証の対象とした地すべり
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図-2 すべり線の計算結果
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 地すべりの徴候として、例えば頭部に段差を伴う亀裂が発生する、あるいは道路や擁壁に亀裂がはいるなどのことが挙げられます。このような徴候が発生した場合には、できるだけ速やかに地すべりの規模を把握し、押え盛土などの応急緊急対策を行うことが、被害の拡大を防ぐ上で重要です。
 地すべりの規模を把握するためには地中のすべり線、すなわちどの深さですべっているかを把握することが必要です。そのために、一般的には地面に直径10cm程度の穴を掘り、地中の土や岩の性状を調べる他、どの深さが動いているかを把握するための計測を行います。しかし、これらのことを行うには時間を要します。また地すべりが動いているところでの作業は危険を伴います。
 そこで、地すべりの地表面の動きの方向と長さを基にしてすべり線の形状を推定する手法とそのプログラムを作成しました。図-1は本手法のイメージです。
 この手法は、地すべり地内で相互の位置関係をほぼ一定に保ってすべり面上を移動する複数の地すべりブロックの変形量は移動量に比べて小さいとする仮定のもとで、地表面の測点の移動軌跡はその鉛直下方のすべり線形状とほぼ平行になるという考え方をベースとしています。
 この手法を適用した事例のひとつを紹介します。対象とした地すべりの全景を写真-1に示します。写真-1に示した主測線に沿って6地点に移動杭を設置し、測量によりその位置がどのように動いたかを計測しました。計測結果をプログラムに入力し、計算した結果を図-2に示します。計算により推定されたすべり線の形状は、その後のボーリング調査等を基に確定されたすべり線形状に近い形状を得ることができました。
 現時点では、ブロック区分線の設定など技術者による判断が必要ですが、今後多くの技術者に使用いただき、その結果の検証等を通じて、より使い勝手の良いものに改良していきたいと考えています。



問い合わせ先:地すべりチーム