研究成果の紹介

プレキャストコンクリートへの再生粗骨材の有効利用に係わるガイドライン(案)

写真1 コンクリートの断面

写真1 コンクリートの断面

コンクリート用再生骨材の現状

  年間約3千万トンのコンクリ―ト構造物が解体されています。この解体したコンクリートを再びコンクリートの材料として利用するための研究を行っています。

  コンクリートは砂利(粗骨材)、砂(細骨材)、水、セメントからつくられており、その容積比率は約4:3:2:1です(写真1)。 解体したコンクリートを、砂利の代わりとしてコンクリートに再利用しようとする発想は以前からありました。これを再生骨材と言います。再生骨材の品質については、日本産業規格(JIS)が定められており、品質の高いものから順にH,M,Lの3段階があります(写真2参照)。Hは、解体したコンクリート中から、ほぼ砂利だけを取り出したもので、品質は良いのですが、解体コンクリートを加熱したり、擦り揉んだりして手間がかかるうえに、砂利は解体コンクリート中に4割程度しか含まれていないので、その他の部分は微粉となってしまい、その処分が課題となっています。Lは、解体コンクリートを適度な粒度に破砕する程度の処理で生産できますが、品質が劣るために構造物のコンクリート
には適用できません。Mは構造物に利用できる範囲が、気象の影響を受けにくい部位(例
えば地下等)と限定的で、十分に普及するには至っていません。

写真2 再生骨材の例

写真2 再生骨材の例

ガイドライン(案)の概要

  そこでMクラスの再生骨材をプレキャストコンクリートに有効に使用するためのガイドライン(案)を作成しました(図1)。プレキャストコンクリートとは、工場で製造するコンクリート製品のことで、品質管理がしやすく、また、乾燥による収縮が大きくなりやすい再生骨材コンクリートでも、製品の大きさを制限することで、ひび割れ発生のリスクを回避できます。また、凍結防止剤を散布するような積雪寒冷地においても、普通コンクリートと同等の耐凍害性を確保できる条件を、実験室内での試験や屋外での暴露試験から確認しました(図2,写真3)

  本ガイドライン(案)は、https://www.pwri.go.jp/team/imarrc/research/tech-info.html よりダウンロードできます。ガイドライン(案)が、再生骨材の利用促進の一助となれば幸いです。



図1 ガイドライン(案)   図2 凍結融解に対する耐久性の比較  写真3 積雪寒冷地での暴露試験

図1 ガイドライン(案)     図2 凍結融解に対する耐久性の比較      写真3 積雪寒冷地での暴露試験    







(問い合わせ先 : 材料資源研究グループ)

理解しやすく利用しやすい3D浸水ハザードマップ

図-2 3D浸水ハザードマップの利用方法:(a) 寒地河川のツール画面、(b) 作成例、(c) アプリとマニュアル

図-2
 3D浸水ハザードマップの利用方法:(a) 寒地河川の
ツール画面、(b) 作成例、(c) アプリとマニュアル

1. 背景と目的

  近年、想定外あるいは経験したことが無いと呼ばれる水害が増加傾向にあります。これに伴って避難指示を受ける住民の数も増加しています。しかし、住民の避難時に有益な情報となる洪水ハザードマップの認知度は低い状況にあります。そこで、寒地河川チームでは、住民が自らリスクを察知し主体的に避難できるようにするため、Google Earthを活用した「理解しやすく利用しやすいハザードマップ」を提案しています。



図-1 3D浸水ハザードマップの表示例

図-1 3D浸水ハザードマップの表示例



2. 3D浸水ハザードマップの特徴

  従来のハザードマップの問題点としては、(1) 土地勘のない旅行者がハザードマップを見た場合には、自分がマップ上のどこにいるのかわからないために、その場所の浸水深もわからない、(2) 浸水深を色の塗分けのみで示されても実感がわかないという二点が挙げられます。

  そこで、寒地河川チームでは、Google Earthやストリートビュー上に浸水深を描画する技術を開発しました。このマップを見ると、スマホのGPS機能で自分のいる場所がわかりますし、想定される浸水状況を任意の高さや角度で見ることができます。この様子を示したのが図-1です。また、地形や建物、街並みなどの三次元モデルがGoogleによって既に整備されており、それをそのまま利用できる点が大きな特徴です。



3. 技術の普及に向けて

  3D浸水ハザードマップの普及に向けて、寒地河川チームのホームページ上でアプリとその利用方法を説明したマニュアルを公開しました。これを利用すれば3D浸水ハザードマップを無料で作成できます。「寒地河川 ツール」と打ち込んで検索すると、図-2 (a)のような画面が出てきます。そして、赤枠の部分をクリックすると、図-2 (b)のように作成済みの3D浸水ハザードマップのダウンロード方法などの説明が記載された画面が出てきます。また、青枠の部分をクリックすると、図-2 (c)のようにアプリや作成方法を示したマニュアルをダウンロードできるようになっています。

  この技術は、(1) 浸水状況を直観的に把握できる、(2) 安価に作成できる、(3) 多言語対応できる、(4) 防災教育として活用できる、(5) 避難所情報が変更されても修正作業が容易である、という点が利点として挙げられます。






(問い合わせ先 : 寒地土木研究所 寒地河川チーム)