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効果的な高水敷掘削の高さの検討

 全国の主要河川の多くでは、河積を増大させる治水目的で河道掘削(高水敷掘削、低水路拡幅)が頻繁に実施されています。掘削によって形成される低い地盤面は、増水した河川水が相対的に冠水し易い場となります。そのため、河道掘削は氾濫原的な環境の創出・再生と親和的な側面を持っていますが、その結果を高めるためには技術的な知見の蓄積が必要です。


 そこで、揖斐川において、指標生物・イシガイ類の生息環境の観点から、氾濫原環境の創出効果の高い掘削高さを検討しました。調査は、掘削高さと掘削後の経過年数が異なる工区で実施しました。


 掘削直後は概ね平坦な地盤となりますが、その後、河川の増水を経験することで掘削地の微地形が多様化します。これにより、自然にワンドやたまりといった氾濫原水域や、湿地的環境が形成されました。


イシガイ類は低~平水位(平常の河川水位以下)の高さ掘削の工区に形成された水域に多く生息していました。その傾向は、掘削後5年の工区、掘削後10年の工区でも同様でした。揖斐川では、低~平水位を目安とした低い掘削高さを適用することで、効果的に氾濫原環境を創出できることが分かりました。


 なお、渇水位以下の掘削工区では、ワンドやたまりは形成されず、本川流路の一部のままでした。また、掘削後に形成されたワンドやたまりの数や面積は、掘削後6~8年をピークに減少する傾向にありました。継続したモニタリングにより、今後の変化を把握することが必要です。


本研究の一部は、以下の論文で参照できます。


原田守啓・永山滋也・大石哲也・萱場祐一 (2015) 揖斐川高水敷掘削後の微地形形成過程.土木学会論文集B1(水工学)71(4): I_1171-I_1176.

永山 滋也

(国研)土木研究所 自然共生研究センター

掘削工区の経時的変化
掘削高さとイシガイ類生息量との関係