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効果的な水域(ワンド・たまり)形状の検討

 全国の主要河川の多くでは、いつも水が流れている澪筋が固定化し、陸域と本川水域が二極化した結果、陸域での樹木の繁茂が進行しています。このような樹林化した氾濫原の中にワンドやたまりが存在しており、河川によっては、イシガイ類を含む氾濫原依存の希少な生物の生息場所となっています。


 しかし、樹林化した中に存在するこれらの氾濫原水域では、徐々に環境の劣化が進行しています。樹林の伐開を伴う河道掘削とあわせて水域環境を改善するために、河畔樹木との関係を加味した水域(ワンド・たまり)形状について、イシガイ類生息環境の観点から検討を行いました。


 木曽川の3つの水域(たまり)におけるイシガイ類分布と水域内の微環境特性から、イシガイ類は水深40~50cm程度で、落葉落枝が溜まっていない場所に多く分布していることが分かりました。また、水底における泥厚は多過ぎても少な過ぎてもイシガイ類の生息に不適で、適度な泥厚がも分かりました。


 落葉落枝の供給源である河畔樹木は、水域上空に、最大で約10mの幅で張り出していました。短期的には、水域周辺の樹木を伐開するだけでも、落葉落枝の水域への供給が抑制され、水域環境が改善されることが期待されます。しかし、たとえ伐開したとしても、再度樹木が繁茂する可能性を考えると、水域幅は予め10m以上確保することが必要です。また、水深60cmを超える場所ではイシガイ類があまり分布しなかったことから、60cm以浅のエリアを広く確保することが必要です。さらに、過剰に堆積した底泥を除去することは改善手法の一つではありますが、それによって水深が大きくなり過ぎると、イシガイ類の生息環境としては機能しない可能性があります。


本研究の詳細は、以下の論文で参照できます。


Nagayama S, Harada M, Kayaba Y (in press)
Distribution and microhabitats of freshwater mussels in waterbodies in the terrestrialized floodplains of a lowland river. Limnology.

永山 滋也

(国)土木研究所 自然共生研究センター

コドラート調査に基づく、イシガイ類個体数と
水深および落葉落枝の量との関係
河畔樹木の影響を考慮した適正水域形状の模式図