台風委員会第56回総会への参加

 2024年2月27日から3月1日にかけて、台風委員会(TC)の第56回総会が、マレーシア・クアラルンプールで開催されました。台風委員会は、東、東南アジアで台風の影響を受ける14の国と地域がメンバーの国際会議であり、台風委員会の中には4つの作業部会(気象(WGM)、水文(WGH)、災害リスク削減(WGDRR)、研修・研究調整(TRCG))とそれらを司る運営諮問部会(AWG)によって構成されています。本総会はすべての関係者が集結し、各部会の活動に基づく委員会全体の意思決定を行う最も重要な会議です。

 本会議は14のメンバー国・地域のうち12(中国、香港、マカオ、日本、ラオス、マレーシア、フィリピン、韓国、タイ、シンガポール、ベトナム、アメリカ)とESCAP、台風委員会事務局から総勢約96人が、コロナ後初めての対面での総会に参加しました。日本からは、国土交通省水管理・国土保全局、気象庁、気象研究所、熱帯低気圧地区特別気象センター、アジア防災センター、国際建設技術協会、東北大学、台風科学技術研究センター、およびICHARMから宮本守主任研究員と柿沼太貴研究員の総勢13名が参加しました。なお、宮本守主任研究員は2021年2月から水文部会議長(2期目)及び運営諮問部会メンバーを務めています。

 総会の初日には、開会の挨拶に続き、2019年から2023年まで対面形式で実施できなかったDr. Roman L. KINTANAR賞の授賞式が行われました。ICHARMは国立研究開発法人 宇宙航空研究開発機構(JAXA)及び一般社団法人国際建設技術協会 (IDI)の共同プロジェクトで2020年の受賞を果たし、代表として宮本主任研究員が賞を受け取り、受賞スピーチを行いました。なお、ICHARMニュースレターVol. 60には、ICHARM小池センター長からDr. Roman L. KINTANAR賞の受賞が報告されています。
 https://www.pwri.go.jp/icharm/publication/newsletter/pdf/icharm_newsletter_issue60.pdf
 また、この日は日本を含む各国からの技術発表があり、日本からの発表は特に参加者から高い関心を集めました。

 総会2日目には、4つの部会からの年次計画(AOPs)のレビューと来年度の活動計画に関する報告が行われました。水文部会からは、宮本議長が報告しました。また、台風対応の標準業務手順(SSOP-Ⅲ)の強化に関する議論も行われ、日本が主導する人命救助のための洪水リスク監視に焦点が当てられました。この議論は、国交省が推進する水災害分野の国際標準形成に向けた取り組みをさらに推進するものでした。

 総会3日目は、台風委員会事務局から予算収支に関する報告があり、その後、甚大な被害をもたらした台風の名称を決定するための議論が行われました。(あまり知られていませんが、台風の名称は台風委員会で決定され、甚大な被害をもたらした台風の名前は再度使用されず、新たな候補を設定・承認することとしています。)

 最終日には、来年度の統合部会や総会の日時、場所についての議論が行われ、総会は成功裏に閉幕しました。第56回台風委員会総会への参加は、日本、ICHARM、土木研究所の国際的なプレゼンスを示し、地域のレジリエンス向上に寄与する貴重な機会でした。対面での密接な交流を通じて、各国との深い理解と協力を築くと共に、国内の機関間での技術共有による連携強化が実現しました。今後もICHARMは、台風委員会などの国際的枠組みを通して、水災害リスク軽減やレジリエンス強化のための地域間協力を引き続きリードしていく所存です。

台風委員会(TC)第56回総会集合写真
台風委員会(TC)第56回総会集合写真
Dr. Roman L. KINTANAR賞の受賞スピーチ 来賓挨拶を頂いた高橋JICA筑波所長、大田GRIPS学長会議風景
Dr. Roman L. KINTANAR賞の受賞スピーチ
会議風景
宮本議長によるWGHの活動報告 日本からの参加者
宮本議長によるWGHの活動報告
日本からの参加者