津波を”いなす”橋づくり
2011年3月11日に発生した地震※では、地震後の津波により多くの橋が流されました※※
※東日本大震災
平成23年(2011年)東北地方太平洋沖地震
※※橋が流されることを「流出」または「流失」と呼びます
一方で、津波を受けても流れなかった橋も存在します
この差は何処にあるのでしょうか?
この様な観点などから検討することで、橋を津波から守る(橋が流れないようにする)方法を見つけることができます
研究目標
- 津波に対する橋の挙動メカニズムの解明
- 津波による上部構造への作用力の軽減対策の開発
水路実験による挙動メカニズムの解明
全長30m、幅1mの巨大水槽(スケールは1/20)
津波の高さや、模型の形を変えて実験
⇒橋が受ける力を計測
実験の様子(横から撮影)
実験の様子(上から撮影)
実験結果から分かること
(例:長方形断面と4主桁断面)
- 津波が模型に当たった直後に力が急激に増加
- 長方形断面では、上向きの力が発生しない
→模型全体を押し下げるような挙動を示す
- 4主桁断面では、津波作用側は上向きの力、 反対側では下向きの力が作用
→津波作用側が持ち上がるように回転するような挙動を示す
水路実験により橋の形状が津波による力に影響を与えることがわかりました
では、津波による影響を受けにくくするには、どの様な形が良いでしょうか?
流れと力の関係のハイスピード映像
橋に作用する力を軽減する方法を考える
長方形断面と4主桁断面との違いを見る
床版張出部を無くして、津波を受け止めにくい形にすると力を軽減できる
しかし、既にある橋を改良(切り取ったり、削ったりすること)することは不可能
何かを橋に取り付けることで、これらを満足したい
そこで、下図のような装置を考えました
実験による検証結果
半円のフェアリングを取り付けることで、津波による力を軽減することがわかりました
橋の津波対策に期待できる!
流れと力の関係のハイスピード映像
おわりに...という名の案内
ここで示したのは、ほんの一部です。詳しい情報を知りたい方は下記のHPを参照ください(一部ムービーで紹介しています)
もっと研究を知りたい未来の研究者は以下の論文をご覧ください
- 張 広鋒,薄井 稔弘,星隈 順一:津波による橋梁上部構造への作用力の軽減対策に関する実験的研究,土木学会論文集A,Vol.66,No.1(地震工学論文集第31巻),pp.425-433,2010.
- 中尾 尚史,張 広鋒,炭村 透,星隈 順一:上部構造の断面特性が津波によって橋に生じる作用に及ぼす影響,土木学会論文集A1(構造・地震工学),Vol.69,No.4(地震工学論文集第32巻),pp.I_42-I_54,2013.
- 炭村 透,張 広鋒,中尾 尚史,星隈 順一:津波によって橋に生じる作用に対する鋼製支承の抵抗特性に関する実験的検討,土木学会論文集A1(構造・地震工学),Vol.69,No.4(地震工学論文集第32巻),pp.I_102-I_110,2013.
- 中尾 尚史,張 広鋒,炭村 透,星隈 順一:フェアリングを設置した橋梁上部構造の津波の作用による挙動メカニズム,土木学会論文集A1(構造・地震工学),Vol.70,No.4(地震工学論文集第33巻),pp.I_110-I_120,2014.
- 中尾 尚史,森屋 圭浩,榎本 武雄,星隈 順一:宮古橋周辺での津波の特性と橋に及ぼした影響の評価,土木学会論文集A1(構造・地震工学),Vol.71,No.4(地震工学論文集第34巻),pp.I_317-I_328,2015.
- 中尾 尚史,森屋 圭浩,井上 崇雅,星隈 順一:支承およびダンパーの損傷跡に基づく気仙大橋の津波による挙動の推定,土木学会論文集A1(構造・地震工学),Vol.72,No.4(地震工学論文集第35巻),pp.I_129-I_139,2016.
- 中尾 尚史,炭村 透,森屋 圭浩,星隈 順一:津波の影響を受ける既設橋における支承部の評価技術に関する研究,土木学会論文集A1(構造・地震工学),Vol.73,No.2,pp.413-432,2017.
コンテンツ作成:江口 康平、中尾 尚史
更新日:2021/8/25